ラジオといえば、防災グッズの定番ですよね。
インターネットが普及し、一人一台スマホを持つ時代に、なぜラジオが防災の必需品とされるのでしょうか。


災害が起きた後で、実際にラジオがどう役立つのかイメージが湧きにくい人もいるかもしれません。
そこで、ラジオの強み、過去の災害でラジオが役立った実例などをまとめてみました。
災害時のラジオの実力を知って、しっかりと情報の備えを整えましょう!
「どんなラジオを備えたらいいかわからない」という方のために、災害時に役立つラジオの選び方も紹介しています。
備蓄のためのラジオを探している人は参考にしてみてくださいね。

インターネットでラジオ番組を聞くこともできますが、記事内での「ラジオ」は、ラジオ電波を受信する機器のことだと思ってくださいね!
普段の生活でのラジオの楽しみ方について、こちらの記事で紹介しています。
あわせてチェックしてみてください。
-
令和のラジオはここまで進化!楽しく聞くだけの「ながら防災」を始めよう
1925年にラジオ放送が開始されてから、今年で100年。 テレビやインターネットなどさまざまなメディアが誕生しましたが、ラジオは今日も放送を続けています。 いつもしも編集部でも、日常的にラジオを聞くと ...
続きを見る
この記事の目次
災害時にラジオが最強な理由
災害時であろうと、スマホがあるのにわざわざラジオが必要?と思う人もいるかもしれません。
しかし、大きな災害が起きると普段どおりの通信や情報収集ができなくなることが多くなるのです。
いつもと違う状況下で、スマホにはないラジオの強みをご紹介します。
電話回線・通信状況が不安定になっても使える
今はほとんどの人がスマホを持っていて、インターネットやSNSから情報を得ています。
しかしスマホやインターネットは、大きな災害の直後に使えなくなるリスクがあるのです。
災害時にスマホが使えなくなる理由
- 状況・安否確認の通信が集中して電話やインターネットがつながりにくくなる
- 基地局や通信ケーブルが被災して通信ができなくなる
- 停電により機器が使えなくなる
一方で、ラジオは広範囲に電波を飛ばせるため、大きな災害があった場合でも情報をキャッチすることが可能なのです。

暴風域に入って停電が起きても、ラジオがあれば台風情報を聞くことができます!
真実性のある情報が得られる
SNSのほうがリアルタイムで情報を得られるのでは?という意見もあるかもしれません。
しかし過去の災害では、SNSで多くのフェイクニュースやデマが飛び交いました。


災害時のラジオは自治体や地域のコミュニティが運営するため、事実と異なる情報やフェイクニュースが流れるリスクはSNSより低いと言えます。
日常生活で必要な、正しい情報を受け取ることができます。
スマホのバッテリーを温存できる
ラジオは情報収集に役立つ!とは言え、スマホでしか得られない情報もあります。
地図や天気図などの視覚的な情報や、ピンポイントで知りたい情報にすぐアクセスしたいときは、やはりスマホが便利です。

ラジオで情報収集をしつつ、スマホは電源を温存してここぞというときに使う…という使い分けがおすすめです。
ラジオとスマホ、どちらも有効に使えるように、モバイルバッテリーも備えておきたいですね。
過去の災害でもラジオは頼りにされていた!
記憶に残っている人も多い過去の災害で、災害発生直後に一番使われていたメディアはラジオでした。
東日本大震災(2011年3月11日)
地震発生した直後から1週間後まで「最も役に立ったメディアはラジオ」という調査結果(※4)
北海道胆振東部地震(2018年9月6日)
地震発生後30分間でラジコ(インターネットラジオ放送サービス)のユーザー数が平時の27倍に(※5)


スマホが全然つながらなくて焦っているときにラジオから情報が流れてきたら、ものすごく安心すると思う!
「もしも」のときだけ!特別なラジオ
大きな災害が起きて甚大な被害が出ているとき、テレビでNHKの放送を確認する人が多いのではないでしょうか。
でももし停電してテレビが見られない場合、災害関連情報を放送しているラジオ局って…?



災害時にだけ開局する「臨時災害放送局」
大規模な災害時に、自治体がFM電波を利用して「臨時災害放送局(臨災局・災害FM)」を開設し、生活に必要な地域の情報を発信することができます。

地域によって周波数が異なるので、住んでいる地域の周波数をチェックしておきましょう!
ちなみに、いつもしも編集部のある東京都練馬区の臨災局は、77.1MHzです!(2025年5月現在)(※6)
住んでいる地域の臨時災害放送局の調べ方
すべての自治体で、災害時に臨時災害放送局を開局するわけではありません。
災害時の自治体の情報発信方法には、主に以下のものがあります。
- 臨時災害放送局を開局
- 防災無線を利用
- コミュニティFM(市区町村の一部の区域に対して、その地域に特化した情報を発信するラジオ局)を利用
住んでいる自治体で臨時災害放送局を運用するかどうかは、
「〇〇(市区町村名) 臨時災害放送局」や
「〇〇(市区町村名) 災害 ラジオ」でインターネット検索してみましょう。
臨時災害放送局や災害放送があるラジオ局の周波数がわかったら、忘れないようにメモしておくと安心です。



そもそも通信状況が悪くてネット自体が使えないこともあるから、ラジオを準備しておくのが確実だね。
臨時災害放送局が初めて開設されたのは、阪神・淡路大震災のときです。
それ以降、大規模な災害が起きた際には多くの自治体で臨時災害放送局が開局し、地域の方に必要な情報を届けてきました。

その地域の事情に詳しかったり、方言混じりだったりして、地元の人は親しみが持てそう。

災害時に地域の詳細な情報を得られるのが、臨時災害放送局の強みだよね。
防災無線はラジオとどう違う?
災害時の情報発信手段として、防災無線(防災行政無線)をイメージする人もいるかもしれません。
防災無線とは?
自治体が、スピーカーやサイレンで地域住民に情報を発信する。
日常的な注意報から大規模災害の避難指示まで、緊急情報・防災情報を地域全体に届けることを目的とする。



防災無線があっても、ラジオでしか得られない情報もあります。
災害時の情報収集のために、ラジオも準備しておくのがおすすめです。
被災者がほしい情報を臨機応変に
テレビの災害のニュースでは、災害の規模や被害のあった地域など災害の概要に関する情報が中心ですが、臨時災害放送局ではその地域の住民にとって役立つ情報が放送されます。
臨時災害放送局で発信する情報の一部
- 安否情報
- 放射線測定値情報
- 公共交通機関運行状況
- 医療機関診療状況
- 金融機関営業状況
- 避難生活に必要な情報(一次[原文ママ]帰宅、イベント告知、仮設住宅及びその周辺施設情報、法律相談等)
- お買い物情報(スーパー、ガソリンスタンド等)
(一般財団法人 電波技術協会「わかりやすい臨時災害放送局ガイド」より引用)
災害の発生直後と復興が進んできたときでは、必要とされる情報は異なります。
そのときどきで内容を変えながら、ときにはリスナーからのリクエストに応じたりしつつ、生活再建に役立つ情報が放送されます。


ときには心の支えになることも
災害時にラジオから得られるのは、生活に必要な情報だけではありません。
ラジオは、避難所の体育館や車中泊の車の中で、聴いている人の不安な心に寄り添う存在にもなりました。
2016年に起きた熊本地震で、実際にラジオ局に寄せられたメッセージをご紹介します。
「テレビでは同じ情報ばかり流れたりするので思いつきRKKラジオを聴いています。熊本にする〔原文ママ〕人々の声やリアルな情報をきくことができ、非常に助かっていますし、少しずつ気持ちも落ちついていきます。」
「水は出ますが泥水です。飲めません、さすがに泣きそうになりましたけど皆さんの声が聞けて、感激して笑いも出てきました。気力、体力を回復させてがまだしまーす。」
(大牟田 智佐子『大災害とラジオ 共感放送の可能性』(※10) より引用)

ちなみに、「がまだす」は熊本弁で「頑張る」という意味です!
ラジオから流れてきた音楽が、被災した人々を元気づけたこともありました。
#マイあさ ♪『アンパンマンのマーチ』ドリーミング 「そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ胸の傷がいたんでも」と歌うこの曲が、13年前の震災後に繰り返しラジオから流れていました。 https://t.co/KAaeY2iadC
— NHKラジオニュース (@nhk_radio_news) March 10, 2024


そんなラジオの力が、災害のときにもすごく発揮されたんだね。
おすすめのラジオのタイプ&機能
災害時の情報収集手段として、ラジオがいかに優秀であるかを解説してきました。


6割以上のお宅にはラジオがない状況だね。

災害時への備えとして、どのようなラジオを選べばいいのでしょうか。
防災におすすめのラジオの種類と、ついていると便利な機能を解説します。
もしものときに使いやすいラジオの種類は?
ラジオを選ぶ際、まずは「本体のタイプ」と「チューニング方式」を考えてみましょう。
それぞれにメリットとデメリットがありますので、比較してみてください。
本体のタイプ
ラジオの本体のタイプには、大きく分けて据え置きタイプ・コンパクトタイプ・多機能タイプの3つがあります。

据え置きタイプ…ホームラジオ・卓上ラジオ
コンパクトタイプ…ポータブルラジオ・携帯ラジオ・小型ラジオ
多機能タイプ…防災ラジオ・災害ラジオ


避難所など大勢の人がいる場所で使うことも考えて、イヤホンも一緒に準備しておきましょう。

普段ラジオ聞く習慣がなくても、あると役立つなぁと実感しました。
チューニング方式
ラジオのチューニング方式とは、周波数の合わせ方のことです。
ダイヤルを手動で回して合わせるアナログチューニングと、ボタンを押すと自動的に選局してくれるシンセチューニングがあります。
チューニング方式は好みにもよりますが、やはり簡単に選局できるシンセチューニングが便利です。



ラジオの音声をクリアにする方法
- ラジオのアンテナを伸ばして角度を変えてみる
- 窓際にラジオを移動させる
- 周囲に家電製品・スマートフォン・パソコンがある場合はラジオを遠ざける
あったら嬉しい!便利な付加機能
ラジオの中には、電波を受信する以外にさまざまな便利機能がついているものもあります。
もしものときに役立ちそうな機能は、選ぶときのポイントになるのではないでしょうか。
充電方式はAC電源以外のものを
ラジオの機種によって、充電方法が異なります。
災害時は、停電が起きている場合もあります。
コンセントからの電気を必要とするAC充電タイプは、防災用としてはできれば避けたいところです。
ソーラー充電・手回し充電は、停電時でも関係なく充電できるので一見防災向きですが、完全に充電できるまでにかなり時間や手間がかかります。

充電方式を選ぶ参考にしてみてください!

電池・充電・ソーラーのどれでも充電できる機種だと安心ですね。
イヤホンジャックがある
災害時、避難所や病院など周りに人がいる場所では、ラジオを聞く際に音が漏れないようにする配慮が必要です。
そのために、ラジオ本体にイヤホンジャックがある/Bluetoothに対応している機種を選ぶようにしましょう。

有線のイヤホンは100円ショップにもあるので、ラジオと一緒に準備しておきたいですね。
ワイドFMに対応している
AMを聞く人には、特にワイドFM対応ラジオがおすすめです。
ワイドFMとは?
FM放送の周波数帯域(76.1~94.9MHz)を利用してAM放送を行います。
通常のAM放送よりも音声がクリアで、電波が届きにくいビル街の中でも受信可能なのが特徴です。(※12)

「90.0MHz~94.9MHz」の周波数帯域を受信できれば、ワイドFMに対応していますよ!
スマホを充電できる
ラジオの電源から、スマホを充電できる機能がついた機種もあります。
ラジオ本体が乾電池やソーラー充電に対応していれば、停電のときでもスマホを充電することができますね。


防水・防滴仕様
災害時は、屋外でラジオを聞くことも予想されます。
天候が悪いこともあるかもしれません。
多少濡れても大丈夫な防水・防滴仕様なら、災害時だけではなくアウトドアや浴室でラジオを聞くこともできますね。


備蓄におすすめのラジオまとめ
- コンパクトタイプ/多機能タイプ
- 自動で選局するシンセチューニングが便利
- 充電方式はAC電源以外
- イヤホンが使える
- ワイドFM対応
- スマホを充電できる
- 防水・防滴仕様
「いつも」の生活でもラジオに耳を傾けてみよう
スマホの普及や動画コンテンツの充実により、ラジオのリスナー人口は減りつつあります。
しかし、防災の観点から見るとラジオは重要な情報手段であり、最近の大きな災害でもそれが証明されています。
いざというときにラジオをうまく使えるよう、日常の中でラジオを聞いてみませんか。
まずはスマホでラジオのアプリをダウンロードして、好きな有名人の番組を聞いてみたり、地元のラジオ番組を聞いてみましょう。
動画コンテンツにはないラジオの魅力を発見できるかもしれません。
どうやってラジオを聞いたらいいのか、好きな番組を見つけたらいいかわからない…という人は、こちらの記事を参考にしてみてくださいね。
参考サイト
※1 【あの時何が 熊本市動植物園編④】「ライオン逃げた」デマで電話殺到|熊本日日新聞
※2 「不謹慎で迷惑」能登半島地震で相次いだ偽救助要請 実態は?|NHK
※3 #456「関東大震災100年」 震災の「警鐘」をいかに受け止めるか|NHK 文研ブログ
※4 平成24年版 情報通信白書|総務省
※5 災害時にはスマホでラジオ 防災ラジコ FACTBOOK|radiko
※6 災害時の情報収集|練馬区
※7 東日本大震災では30局 臨時災害放送局の元祖が模索した45日間|産経新聞
※8 非常災害時におけるラジオの活用(臨時災害放送局)|総務省
※9 大牟田 智佐子 . 大災害とラジオ 共感放送の可能性 . ナカニシヤ出版 , 2024/01/31 .
※10 平成28年熊本地震への対応|総務省
※11 通信利用動向調査(総務省)|e-Stat
※12 ワイドFM|総務省
※13 今更聞けない!AMとFMの違いとは?|RADICOM
※14 AM放送とFM放送の違い|総務省