「非常食」というと防災グッズ専門店で購入するものというイメージがありますが、日頃から食べている食材を非常食にすることも可能です。
いつものおかずやご飯を冷凍保存することで、簡単に被災時の食料を確保することができるのです。
ママたちにぜひ知ってほしい、被災時に使える冷凍保存食品と活用方法をまとめました。
この記事の目次
「非常食を冷凍保存する」という新しい備え
農林水産省は、いざという時に備えて国民ひとりひとりが最低3日分の非常食の備えをすることを勧めています。
しかしライフラインの復旧や救援物資の到着までは時間がかかることも予想できるので、できれば一週間程度の備えがあると安心です。
家族全員分の一週間分の非常食を用意するとなると膨大な量に感じますが、いつもの食事を冷凍保存しておき、それを活用することで、無理せず食材の備えをすることができます。
本当に役立つ非常食とは
東日本大震災で被災した方の体験談を読んでいると、
「購入した非常食よりも、冷蔵庫の中のストック食材が役立った」
というコメントがありました。(※1)
その理由は、震災により精神的ショックを受けた後には食欲がわかず、食べ慣れているものや美味しいと感じるものしか喉を通らなかったことでした。
もちろん市販の非常食を用意しておくことは大切なのですが、冷蔵庫にストックがあることで少しでも日常の味を思い出すことができ、心と体の緊張を軽減する助けになるのです。
最近は非常食を買い揃えることだけでなく、ローリングストックを実践して常に家に備蓄食材があるようにしておくことが勧められています。 非常食や防災グッズについて調べていると、ローリングストックという言葉をよく目にします。 従来の備えっぱなしとは異なる新しい防災の形なのですが、実際どうすればいいのかわからない方も多いのではないでしょう ...
ローリングストックって何?賢く活用して非常食の賞味期限切れを防ごう
食料庫に食料を多めに保管しておくことだけでなく、冷凍庫に食材を保存しておくこともローリングストックの一環です。
冷凍庫の食材を毎日の食事に使い、使った分を新たに冷凍保存するというようにすれば、特別な買い足しをしなくても被災時のための備えをすることができます。
被災時に冷蔵庫は使えるのか
冷蔵庫に食材がたくさんあれば安心ですが、そもそも被災時には冷蔵庫は何時間くらい使えるのでしょうか?
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冷蔵庫が通常運転中に停電が生じた場合、一般的に2時間程度経過したあたりから、だんだんと冷蔵庫内の温度が上昇し始めるそうです。
家電メーカー「日立」のホームページを見ると、停電した場合に冷蔵庫内の温度上昇を避けるためには
point
- ドアの開閉を控える
- 食材を足したりしない
- 冷凍食品の周囲に保冷剤等を集める
などの工夫をすることができるそうです。(※2)
実際に冷蔵庫の電源を抜いて試してみた方のコメントがネット上に載っていましたが、10時間以上の保冷に成功したという声もありました。(※3)
冷蔵庫内の温度上昇を避けるには、とにかく開閉を控えることが大切なようです。
それに加えて、冷凍庫内はびっしりと詰まっているほうが温度上昇を防ぐために効果的です。
冷凍した食材や保冷剤が詰まっていることで、冷凍されているもの同士がお互いの温度上昇を防ぐはたらきがあり、結果的に冷凍庫内全体の温度が保たれるのです。
冷凍食品を使いまわすなら、クーラーボックスがあると便利
停電後の冷凍庫内はどんどん温度が上がるので、無駄な開閉は控えたほうが賢明です。
しかし被災後に冷凍食品を少しずつ使う場合、どうしても冷凍庫の開閉をすることになってしまいます。
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開閉を減らすには、直近で使いそうなものをクーラーボックスに移し、それ以外の食材は冷凍庫内で保管するのがおすすめです。
そうすることで、開閉を繰り返して食材が一気に解凍してしまうのを防げるでしょう。
冷凍庫内の食材が少ない場合、大きい冷凍庫の場合は冷凍食品どうしの間に隙間ができやすく温度もすぐに上昇してしまいます。
しかしクーラーボックスならば、比較的小さいため冷凍食品どうしの間を詰めて保存することができ、解凍するのを防ぐ効果が高いと言えます。
クーラーボックスがあれば第二の冷凍庫にしたり、または保冷剤を入れて冷蔵庫代わりにしたりと様々な使い方ができるのでおすすめです。
冷凍保存のために覚えておきたいポイント
普段の生活で冷凍庫内の食材を使いながらローリングストックすることで、防災のための無理のない備蓄を続けることができます。
そのためには冷凍する時点で、被災時にも使いやすい食材をすぐに使える状態で保存しておくことが大切です。
被災時のための冷凍保存のポイントを見てみましょう。
電子レンジが使えなくても解凍はできる
まず覚えておきたいのは、被災時の食材の解凍方法です。
被災時に停電したり電源がなくて電子レンジが使えない場合には
- 自然解凍
- 湯煎、あるいは加熱調理での解凍
のどちらかで食材を解凍することができます。
ですので、冷凍庫に被災時用の食材を保存する場合には、
- 自然解凍でそのまま食べることができるもの
- 調理が必要で、料理に使えるもの
の2種類に分けましょう。
それぞれの活用法をまとめました。
自然解凍で食べられる便利な食材
自然解凍が可能なものは、調理の必要がなく、冷凍しても基本的に風味等が落ちないものです。
- パン
- フルーツ
- 野菜(生、あるいは茹でたもの)
- 調理済みのおかず
- 焼き菓子
- 自然解凍OKの冷凍食品
パンや焼き菓子はそのまま食べることができるだけでなく、炭水化物としてエネルギー源にもなるので重宝します。
特に子どもには、菓子パンなどは被災時のごほうびおやつとして喜ばれるでしょう。
フルーツや野菜は、冷凍してもビタミンなどの栄養価はほぼ変わらないようです。
被災時に不足しがちな栄養素を摂取するためにも、そしておやつとしても使えるでしょう。
おかずも、普段の食事で余ったものを冷凍しておくと役立つかもしれません。
自然解凍で食べることのできるおかずとしては、水分の少ないものがおすすめです。
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水分の多い野菜は冷凍保存すると食感が変わってしまうため、それを用いたおかずは冷凍保存には向いていません。
じゃがいもや大根などは基本的に冷凍に向きませんが、下処理をしてから調理することで、冷凍による食感の変化を防ぐことができます。
冷凍されたものを自然解凍して食べるときに気になるのは、衛生的に安全かどうかということではないでしょうか?
基本的に、水分が多い食材の方が雑菌が繁殖しやすいと言われていますので、水分が多いおかずを自然解凍するために長時間常温に置いておくのはあまりおすすめできません。
冷凍保存する際には、水分を飛ばして液体が残らないようにするのがおすすめです。
揚げ物、煮物、チャーシューや魚の照り焼きなどが冷凍可能です。煮物など、少しプラスするだけで気持ちがほっこりとするおかずがあると、被災時に嬉しいですね。
自然解凍が可能な市販の冷凍食品も、日々の食事やお弁当にも使えるだけでなく、多めに常備しておけば被災時の食事にも彩りを添えてくれるでしょう。
被災時の食事に使える!調理が必要な冷凍食材
以下のものは自然解凍で食べるのは難しいですが、被災時の食事のために冷凍しておくととても便利です。
- 冷凍ごはん
- 自然解凍NGな冷凍食品
- 加熱が必要な冷凍おかず
注意すべき点としては、被災後数時間で解凍が始まってしまうので、すぐに調理が必要なものの量は少なめにしておくことです。
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ポリ袋調理とは、食材を耐熱ポリ袋に入れて湯煎するという調理法です。お湯だけで調理ができるので、災害時の調理法として注目されています。
詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
非常食に使える「ポリ袋料理」!いま覚えておくべきおすすめレシピと注意点
また、意外と知られていないのが、冷凍ご飯は自然解凍に適していないということです。
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冷凍ご飯は自然解凍でも食べることはできますが、ボソボソして美味しくないので特に子どもが食べるのは難しいでしょう。
ご飯の主成分はデンプンであり、デンプンは炊飯時には柔らかい状態なのですが、冷却して保存されることで性質が変化してしまい、自然解凍ではその性質が戻らないのです。
冷凍ご飯もポリ袋に入れて保存しておくと、そのまま湯煎で加熱すればデンプンの性質が戻るので、ふっくら美味しいご飯を食べることができます。
食材冷凍に使える保存容器
冷凍用の保存容器はタッパーやフリーザーバッグなどが一般的ですが、災害の備えとしてはポリ袋も役に立ちます。
ポリ袋を使って食材を冷凍する場合、ポリ袋は食品用の高密度ポリエチレン製のものを使いましょう。
point
- 冷凍保存する時には、袋の口をねじるようにしておきます。
- 加熱する際に袋の口を結び、お湯の中に入れましょう。
そうすることで真空調理状態になり、美味しく調理できるのです。
食材を入れたポリ袋は、小型のタッパーに入れて保存すると管理が簡単です。
ポリ袋だと日付や名前を書くのが難しく、見ただけでは何が入っているのかわからないので、ローリングストックのために古い食材から使うのが難しいのです。
ポリ袋に入れてから小型のタッパーに入れて、タッパーに名前シールを貼るなどして保存すれば、一目で食材の管理ができ便利でしょう。(※4)
フルーツや野菜などはフリーザーバッグ等に入れて保存できるので、フリーザーバッグのメモ欄に中身や保存した日付を書いておくと管理がしやすいです。
冷凍した食材の賞味期限は?
食材を冷凍した後の賞味期限は、冷凍する前の鮮度や保存方法、冷凍庫内の状態によっても変化します。
家庭用の冷凍庫では、普段の冷凍庫の開閉でも温度が変化して食材の品質の劣化は進んでしまうようです。他の食材の匂いが移ってしまったり、長く冷凍することで変色やパサつきが起こることもあります。
ローリングストックを実践して、早めに消費していくのが正解と言えます。
冷凍庫に常備しておきたい食材
上記では大まかに冷凍できる食材を紹介しましたが、ここからはさらに、具体的に何を保存したら良いのかを考えたいと思います。
身近な食材ばかりなので、ぜひ今日から実践してみてはいかがでしょうか?
時短料理にもなり◎!下ごしらえした野菜を冷凍保存
茹でた野菜を冷凍保存しておくと、普段の食事にも使えて便利です。
以下の野菜は自然解凍が可能なので、サラダのように食べたり、調理に使ったりすることができます。
- ブロッコリー
- ほうれん草
- にんじん
- れんこん
一度茹でてあるので、解凍してすぐ使うことができます。
ほうれん草をお浸しにしたり、ブロッコリーを添え物にしたりできるので、お弁当の隙間を埋めるのにも活躍するでしょう。
自然解凍OKなので、凍ったままお弁当に入れて保冷剤代わりにするママもいるようですよ。
野菜が冷凍庫にあれば、被災時でも水とコンソメだけで栄養たっぷりの野菜スープができます。
被災時にも、普段の食事の時短テクにも使えるので、ぜひ今日から始めてみましょう。
家庭での冷凍保存のコツや、冷凍におすすめの食材はこちらの記事も参考にしてください。
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もう一品欲しいときも助かる!作りおきおかずを冷凍しよう
被災時はご飯やパンを食べることが多くなりますが、ひとつでも普段食べているおかずがあると心が和みます。
再加熱して食べるおかず
- かぼちゃの煮物
※かぼちゃの煮物は自然解凍するとべちゃっとしてしまうので、必ず再度火を通しましょう。
自然解凍で食べられるおかず
- 切り干し大根の煮物
- ひじきの煮物
- きんぴら
冷凍したおかずは、3週間程度を目安に早めに食べきりましょう。時間が経つと油やけ等が起こり、風味が落ちてしまいます。
作りおきおかずがあれば、普段の食事で「あと一品欲しい」「何か物足りない」というときにも役立ちます。
多めに作って冷凍保存という習慣を今からつけておきたいですね。
メインのおかずも冷凍して備える
冷凍しても風味が落ちづらい料理を選んで冷凍保存するならば、冷凍しておいて休日のゆっくりしたい時の食事や、忙しい時のお昼ご飯などに使えます。
再加熱して食べるメインおかず
- ハンバーグ
- カレー
- ハッシュドビーフ
※カレーやハッシュドビーフは自然解凍するとルウが分離する可能性があるので、おすすめできません。
自然解凍で食べられるメインおかず
- 肉だんご
※肉だんごは揚げておけば自然解凍で食べることが可能です。 - 唐揚げ
冷凍する場合は、なるべく水分が少ない方が劣化しづらいので、カレーやハッシュドビーフはある程度煮詰めて水分を飛ばしてから冷凍しましょう。
ご飯・おかゆを冷凍して被災時に備える
冷凍ご飯は調理が必要ですが、災害時には貴重な栄養源になります。
水とコンソメで煮てリゾット風にしたり、野菜や乾物と一緒に煮て炊き込みご飯風にしたりとアレンジ幅が広いので、食事で気分を変えるためにも役立つでしょう。
またチャーハンにした状態のご飯を平たく伸ばして冷凍しておくと、そのままフライパンで加熱できますし、短時間の調理でOKなのでガス代が節約になります。
普段の食事でも、ご飯を炊き忘れた時などに便利なので、多めに冷凍庫に保存しておくのがおすすめです。
自然解凍OKの冷凍食品をストック
最近は自然解凍OKの冷凍食品が増えて、種類が豊富です。
枝豆やブロッコリーなどはそのまま食べるだけでなく色々な料理に使えますし、自分で冷凍する手間が省けるのでストックとしても重宝します。
子どもに人気の今川焼やスイートポテト、大人が好きな牛肉コロッケや春巻き、和惣菜などもあります。
家族が好きな冷凍食品をストックしておいて、被災時に気分を盛り上げるために登場させれば喜ばれるかもしれません。
さらに冷凍食品を使って
- コロッケ+パンでコロッケサンド
- 唐揚げ+ご飯+卵で親子丼
というように、被災時にできる料理の幅も広がります。(※5)
色々なレシピに応用しやすい冷凍食品は、ママさんの強い味方なのです。
離乳食も冷凍して赤ちゃんの非常食に
子育て中のママにとって、離乳食を冷凍保存するというのは当たり前のテクニックかもしれません。
しかし今回おすすめしたいのは、被災時のために離乳食を冷凍保存するという考え方です。
被災時には、離乳食を食べている時期の赤ちゃん専用の食料を調達することは難しいため、基本的に各家庭で必要数を用意するよう勧められています。 被災時には、赤ちゃんや小さい子どものための食事を用意することが難しくなります。 赤ちゃんのミルク等の配給には時間がかかる場合が多いため、個人がしっかり備える必要があるのが現状です。 子どものための非常 ...
子どもの非常食はどうする?赤ちゃんから幼児まで月齢別非常食の備え
赤ちゃん用のベビーフードなど非常食を用意することも大切ですが、いつも冷凍保存している離乳食ならば、栄養素も豊富で、被災直後の赤ちゃんの健康管理のために頼れる存在となります。
ペットボトルの水を凍らせて保冷剤に
上記でクーラーボックスを使用することをお勧めしましたが、その際に凍ったペットボトルがあると、保冷剤代わりになってとても便利です。
解凍した後には飲料水にもなるので、無駄がありません。
夏場に被災したときのことを想定して、ずっと冷たい水を飲むための裏ワザを覚えておくのもおすすめです。
SNSで紹介されていた裏ワザですが、凍らせる際にペットボトルの水を半分にし、斜めに置いて凍らせるのです。
そして、半分空いたところに飲料水をつぎ足しながら飲みます。
ツイッタで見て去年の夏コミに持参してすごく助かった冷ペットボトル作成法 pic.twitter.com/axJTFlOlWv
— みきやWin95 (@mkyprimary) 2014年8月7日
こうすることで、凍っているペットボトルでもすぐに飲むことができ、夏場に被災したとしても長時間冷たい飲み物を飲むことができます。
いざというときのために、知っておくと便利な裏ワザですね。
まとめ
食材を冷凍することで、普段の食事の時短テクになるだけでなく、被災時のための備えにもなります。
いつものおかずを多めに冷凍するだけで防災対策ができるなら、今日からでも始められますね。
ちょっとした工夫でお家の冷凍庫を「防災のための備蓄庫」に変身させて、いつ来るかわからない自然災害に備えましょう。