自然災害はショックな出来事であり、それに加えて避難生活で不安定な生活を続けていると、体も心もバランスを崩してしまいます。被災時にバランスを崩しがちなときこそ、食事を通して健康管理を行うべきと言えます。
今回は被災時に起こりがちな体調不良と、その原因や対策についてまとめました。
家族の健康を心配されるママ向けに、子どもが抱えがちな体調不良と対策についても触れていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
この記事の目次
体調不良は食事で防ぐ!被災時こそ栄養管理が大切な理由
被災時には災害そのものが原因で健康被害を抱える人に加え、避難生活等が原因で健康被害を訴える人も急増します。
詳しい理由を見てみましょう。
被災時に健康被害が起こる理由
栄養状態が悪くなる
被災時には生き残ることが主な目的とされ、腹持ちの良いものや満足感のある物が非常食として選ばれる傾向にあります。
しかし被災時とはいえ、1日に摂取するべき栄養素が大きく欠けた状態が続くと、それが原因の健康被害を抱える可能性があります。
感染症が伝染する
家族全員の免疫が下がりがちで、普段よりも感染症にかかりやすくなります。
家族の誰かが風邪やインフルエンザなどのウイルスに感染すると、すぐにそれが伝染していきます。
ノロウイルスなど感染力の強いウイルスに感染した場合、特に注意が必要です。
衛生環境が悪くなる
被災時には水が不足し、水を節約するゆえに十分にトイレを流すことができなかったり、手を綺麗に洗うことができないでいると、感染症の拡大に繋がります。
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身体的疲労
避難生活が続くと、溜まった身体的疲労のゆえに健康被害を抱える人が増える傾向があります。
身体的疲労が重なると、それが食欲不振や頭痛など様々な症状として現れます。
さらに被災時には運動不足になりがちで、運動不足は糖尿病や高血圧症などの病気の症状を悪化させる原因にもなります。
精神的疲労
不安定な生活からくるストレスなどが原因で心の状態が不安定になると、ストレスに過敏に反応して対人トラブルを抱えたり、食欲がなくなり栄養失調になったりと様々な弊害が生じます。
精神的疲労を抱えないためには身体が健康である必要があり、そのためにはしっかりと栄養補給をする必要があります。
被災時の食事でも栄養管理は可能なのか
被災時に起こりがちな健康被害の症状と対策を知っておくと、いざ被災したときにとても役立ちます。
特にお子さんがいる場合、子どもが抱えやすい症状とその対策については知っておきたいですよね。
その中でも特に注目したいのが、被災時の食事です。
被災時でも栄養が摂れれば体の抵抗力も上がり、結果感染症などから身体を守りやすくなります。
では、被災時に起こりがちな症状と食事について詳しくご紹介しましょう。
被災時に起こりがちな症状と食事対策
東日本大震災では、長引く避難生活で体調を崩す人が多かったそうです。
また、避難所生活の健康被害対策だけでなく、在宅避難者への健康指導も大きな課題となりました。(※1)
その時の教訓を踏まえて、各自が気をつけるべき症状について知っておくことが大切です。
風邪・インフルエンザ
風邪
発熱、咳、のどの痛み
インフルエンザ
高熱、咳、のどの痛み、全身のだるさ、関節痛
発熱やのどの痛みがあるのは同じですが、高熱や関節痛、筋肉痛などの全身症状が出る場合はインフルエンザの可能性が高いです。
感染が広がらないように一刻も早くマスク着用等の対策を取り、医療機関で受診しましょう。
子どもは熱を出しやすいため、お子さんがいる家庭であれば熱を出したときのための非常食の備えをしておくと安心ですね。
食事でできる対策
風邪をひかないためには、体の抵抗力を高めておく必要があります。
そのために特に必要なのは、こちらの栄養素です。
- ビタミン
抗酸化作用があり、活性酸素が免疫機能を低下させるのを防ぐ。
ビタミンC=免疫力の要となる白血球の働きを高める。風邪予防におすすめ。
ビタミンA=粘膜を保護する働きがある。発症時に摂取すると良い。 - タンパク質
筋肉・臓器・免疫成分などを生成する、身体全体の健康維持に欠かせない栄養素。
それでは、被災時でもビタミンとタンパク質を摂取しやすい食材を挙げてみましょう。
おすすめ食材・食品
- 肉や魚の缶詰(ツナ缶、さば缶、焼き鳥缶)
- 大豆(豆腐、缶、きなこ、豆乳)
- 野菜・果汁ジュース
- 野菜スープ(レトルト、フリーズドライ)
- フルーツ(ドライフルーツ、フルーツ缶)
- 乾燥野菜、野菜チップス、ポテトチップス
動物性たんぱく質は缶詰で摂るのがおすすめです。
賞味期限が長く、普段使いしやすい点もポイントになります。種類も豊富なので、好みに合わせてストックしておきましょう。
また、大豆製品も大事なたんぱく源になりますので、必ず常備しておきたいですね。
ビタミンを手軽に摂りやすいのは、野菜や果汁100%のジュース、野菜スープです。果物ジュースは野菜嫌いなお子さんのためにも用意しておくと良いです
そして、意外なことに、ポテトチップスでもトマトと同じ量のビタミンCが摂れるんです。(※2)
おやつにもピッタリなので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょう。
被災して弱りがちな時にこそ免疫を高める食事を心がけ、体力回復に専念しましょう。
非常時に摂るべき栄養素は他にもあります。こちらも参考にして下さいね↓
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ノロウイルス・集団下痢
ノロウィルス
強い吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱、頭痛
集団下痢(食中毒)
嘔吐、下痢、腹痛、発熱
ノロウイルスは人の手、食品を通して感染します。
感染者の嘔吐物や便が付いた場所を触る、処理をした際に嘔吐物が飛沫したものを吸い込む、などの感染ルートがあります。
潜伏期間から一ヶ月程度は体内にウイルスが残ると言われています。
感染を防ぐためには、嘔吐物を処理する際に手袋やマスクを着用し、処理後にきちんと消毒することや、トイレを別にすることが大切です。
また、食事の配給の際には十分な過熱処理をすることが求められています。
避難時には食事の配給が行われますが、その食品が細菌に感染していると集団食中毒を引き起こす可能性があります。
症状は数日~2週間程度続きます。その間に栄養失調・脱水症状に陥ってしまう可能性があるため、早めに水分補給や食事での対策を行い、体力を回復させる必要があります。
食事でできる対策
おすすめ食材・食品
発症時
- 経口補水液(乳幼児用、大人用)、スポーツドリンク、乳児用ドリンク
回復期
- レトルトおかゆ、常温保存のゆでうどん
- ツナ缶(ノンオイル)
- 常温保存の豆腐
- 野菜ポタージュ、野菜ジュース
- ボーロ、ビスケット
発症時はまず脱水症状にならないよう、こまめに水分を取ることが必要になります。
無理して食事をとると下痢や嘔吐が悪化してしまいますので、症状が落ち着くまでは控えましょう。
経口補水液は熱中症対策にもぜひ常備しておいて下さい。ペットボトル以外にもゼリータイプ、粉末タイプなどもあります。
コップでうまく飲めないお子さんには、ゼリータイプをスプーンであげると良いでしょう。
粉末タイプは小さいので、備蓄スペースが多く取れない家にはおすすめです。各家庭の必要に応じてチョイスしましょう。
嘔吐や下痢が落ち着いたら、回復食として消化の良いものから始めます。
定番のおかゆはレトルトで、ツナ缶をプラスするなど工夫すると、栄養も摂りやすいですね。
消化に良いゆでうどんや豆腐にも常温保存できる商品があるので、非常食としても用意しておくと便利です。
また、乳幼児にはボーロやビスケットなどがあれば口にしやすいですし、おやつ代わりにもなって一石二鳥です。
アレルギーがある場合はアレルギー対応ボーロなどもありますので、そちらを常備しておきましょう。
気管支炎
気管支炎
咳、たん、のどの痛み、発熱
台風などの水害後に残った泥が乾燥し粉じんや砂ぼこりとなって舞い上がり、それを吸い込んだ人が気管支炎や感染症を引き起こしやすくなります。
また、がれきを片付けたり、家の掃除をしている際に粉じんを吸い込むこともあります。
更に子どもの気管支は細いので、大人よりも気管支炎にかかりやすく、悪化すると小児ぜん息に発展してしまう可能性もあります。
咳が長く続くようであれば、一度病院に行きましょう。
食事でできる対策
おすすめ食材・食品
- レトルトおかゆ、常温保存のゆでうどん
- レトルト親子丼
- 葛湯
- 甘酒
- 常温保存の豆腐
ウイルス性の気管支炎には風邪と同じく抵抗力を高めるビタミンとタンパク質の摂取が必要ですので、基本的には上記で紹介した食材がおすすめなのですが、咳がひどくなると食事をすること自体が苦しくなる場合もあります。
咳が続いていても食べやすいよう、気管支炎にはとろみがあって飲み込みやすいものがおすすめです。
冷たいものは喉への刺激になるので、豆腐などはなるべく温めてから食べるようにしましょう。
熱中症
熱中症
頭痛、吐き気、めまい、大量の発汗
※重度の場合:けいれん、高熱
夏に災害が起きた場合、被災地では熱中症患者が多くなる危険があります。
被災時に停電が起きた場合、クーラーや扇風機等の家電を使うことができず、体温調節がうまくできない子どもやお年寄りが体調を崩す原因となってしまいます。
食事でできる対策
おすすめ食材・食品
- 経口補水液(乳幼児用、大人用)、スポーツドリンク、乳児用ドリンク
- 梅干、塩昆布、塩飴
熱中症予防のためにはこまめに水分を摂る必要がありますが、同時に塩分も補給すると効果的です。
水だけではなく、塩分が入った経口補水液は用意しておきましょう。
経口補水液が苦手な場合は、水分プラス塩分補給ができるよう、日持ちする梅干や塩昆布、塩飴などもおすすめです。
スポーツドリンクも良いですが、摂りすぎると糖分過多になるので注意が必要です。
また、塩分も過剰摂取すると他の病気の併発に繋がるので気をつけましょう。
便秘
便秘
排便が順調に行われない、下腹部の違和感、腹痛
避難生活をしていると、食物繊維や水分の不足が原因となって便秘になりやすいです。
長引く便秘は免疫機能の低下にも繋がり、感染症にかかりやすくなってしまいます。
被災時にはトイレを我慢することが原因で便秘になる場合もありますので、特に注意が必要です。
もし公衆トイレでの危険性など、安全面で不安がある時は、家族や友達に付き添ってもらうようにしましょう。
食事でできる対策
おすすめ食材・食品
- 切り干し大根
- 干し芋
- 乾燥野菜、野菜チップス
- 青汁
- 大豆缶
- 野菜入り味噌汁、スープ
乾物の中でも、切り干し大根には食物繊維が多く含まれます。
干し芋はおやつとしてもぴったりですね。
大豆も食物繊維を含み、良質なたんぱく質を摂取できるので非常食として便利です。
味噌汁やスープには排便を促すうまみ成分があり、便秘対策だけでなく心をホッとさせ落ち着かせることもできます。
乾物や大豆はあまり好まない子もいるかもしれませんが、コンソメ味や中華味のスープに入れるなど工夫すれば食べやすいでしょう。
フレイル、生活不活発病
フレイル、生活不活発病
以前よりも歩けなくなる、動けなくなる、外出しなくなる
生活不活発病とは、生活が通常よりも不活発な状態が続くことで、やがて心身の機能が低下し、動くことができなくなってしまう状態を指します。
高齢の方に起こりがちな症状で、3世代同居などで高齢者がいらっしゃるご家庭では特に注意が必要です。
被災時には行動範囲が狭くなり、活動量が大幅に少なくなるため、筋力や柔軟性が低下します。
結果体内の血液や酸素の循環が悪くなるため、健康状態が悪化し動けない状態になってしまうのです。
食事でできる対策
おすすめ食材・食品
- レトルトおかゆ、アルファ米の味付ごはん
- 味噌汁、スープ
- 肉や魚の缶詰(さば缶、さんま缶、焼き鳥缶)
- 好みのおやつ
生活不活発病にならないためには、まずは食事でしっかりカロリーを摂取して、動けるだけのエネルギー源を取り入れましょう。
被災のショックで食事を摂る気にならないかもしれないので、好みの味の非常食を用意しておくのがおすすめです。
また忘れずに用意したいのが、おやつです。
子どもや大人、高齢者に関わりなく、甘いものは気分を和ませることのできるアイテムです。
おやつを用意しておくことで、張り詰めて疲れきってしまった体と心の緊張をほぐすことができるかもしれません。
まとめ
被災時には「生き残ってよかった」ということを第一に考え、食事の栄養管理にまで気が回らないかもしれません。
しかし、被災後に起こりうる健康被害について今から知り、その対策法の知識を持っていると、混乱しがちな状況でも家族の健康を守ることができます。
被災時であっても、食事で栄養補給をすることは健康管理の基本です。
特にお子さんのいるご家庭ならば、お子さんを健康被害から守るためにも、今日からでも非常食を用意しておくことをおすすめします。