ペットのためにいま何をする?揃えるべき防災グッズと避難の心得

2019年10月18日

抱かれて眠る犬
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災害時には避難する際には、ペットを連れてすぐに避難できるかが重要です。
同行して避難することができない場合、野良になってしまったり、命を落としてしまう可能性もあります。

【2019.10 追記】
令和元年10月、千葉を中心に甚大な被害をもたらした台風15号から間も無く、台風19号が首都圏を直撃しました。
気象庁が異例の緊急会見を行い、専門家たちがこぞって「史上最強」と注意を促した台風の襲来とあって、かつてなく、避難あるいは避難を検討した方が多かったのではないでしょうか。

初めてペット連れでの避難を検討した、という方も多かったせいか、直近の避難所はペット不可だった!等の驚きと戸惑いの声も多く聞かれました。

当記事では、ペット連れ避難に必要なもの、ことを紹介します。
大切なペットを含めた家族全員が安全に過ごすために何が必要か、考えてみましょう。

すぐに同行して避難するために、そして避難所でもペットの健康管理をするために、今しておくべき備えについてまとめました。

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ペットの命を左右するのは、飼い主の備え

東日本大震災の際に、奇跡的に助かった「バン」というワンちゃんを覚えておられるでしょうか?
震災から三週間後に、津波により流された屋根の上で発見され、「漂流犬」として飼い主と再会し、日本中から喜びの声が上がりました。

この場合は奇跡的に一命をとりとめましたが、実際に被災時にペットの命を救い、避難生活でもストレスを溜めずに健康に過ごさせてあげるためには、災害の前の備えが必要です。

考えられる問題点、必要な備えについて考えてみましょう。

取り残されたペットの命と、飼い主の不安

家で待つ猫

災害時には人命が最優先されるため、ペットが取り残され行方不明になったり、命を落としてしまうケースが多いです。

2000年には有珠山の噴火により避難警報が発令されましたが、避難の際にペットを連れて行くことができず、300頭以上が残され問題となりました。

新潟県中越地震の際には、ペットを含めて5,000頭以上の動物が被災したそうです。
中にはペットのために車で避難生活を送る人も多く、上記でも触れたように、車中泊ゆえのエコノミー症候群が多発し問題となりました。

東日本大震災の際には、ペットを連れに自宅に戻ったために津波に巻き込まれたケースもあり、被災の際のペット問題が浮き彫りとなりました。(※1

ペットと離ればなれになることは、飼い主にも不安とストレスを与えます。
速やかに同行避難できるように備えをしておく必要があります。

同行避難

「同行避難」と「同伴避難」の違い

【2021.2 追記】
2016年4月の熊本地震の際、ペット連れの避難で「同行避難」「同伴避難」という言葉の使い方による混乱が生じました。(※5)

環境省では、以下のように定義されています。

「同行避難」が、ペットとともに安全な場所まで避難する行為(避難行動)を示す言葉であるのに対して、「同伴避難」は、被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態)を指す。

ただし、同伴避難についても、指定避難所などで飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではなく、ペットの飼養環境は避難所等によって異なることに留意が必要

「人とペットの災害対策ガイドライン」より引用)

困った顔の女性アイコン
…わかりにくいですね…

要するに、

  • 同行避難=ペットを置き去りにしないこと
  • 同伴避難=ペットと共に避難所で避難生活を送ること

と言い換えても良いでしょう。

「同行避難」した方々の多くは、避難先でもペットと常に一緒にいられると考えていたそうです。しかし、「同行避難」は避難行為そのものを指すため、「同行避難」OKは、あくまで「ペットを連れてきていいよ」という意味になります。

そして、避難所での過ごし方、つまり「同伴避難」の意味するところが、「人と同じ居住スペースで過ごすこと」なのか「同じ避難所内の別の場所で過ごすこと」なのかは各避難所の受入れ方針によって異なるのです。

2020年2月に行われた「ペットのための防災対策に関する調査」では、「同行避難」 を正しく理解できている飼い主は半数程度という結果が出ています。

「同行避難」できる避難所=ペットと常に一緒にいられる避難所、ではないことに、注意しましょう。避難後に知って動揺することのないよう、理解しておいてください。

避難所での生活の難しさ

ペットと共に避難できたとしても、その後の避難所での生活にも問題があります。

避難所によっては、そもそもペット同行不可の場合があり、被災後で情報収集が難しい状況の場合、ペット同行可の避難所を探すのに苦労する場合があります。

普段外飼いしている場合、避難所の中で吠えたり、動き回ったりして落ち着かないかもしれません。

同居している方に迷惑をかけてしまうため、仕方なく車で生活する方もいます。
車で生活していると、長時間同じ姿勢になるため、エコノミー症候群になりやすく注意が必要です。

避難所で生活する場合、ほかのペットから病気をもらってしまう可能性もあります。
予防接種やワクチン接種はしっかりと済ませておきましょう。

ワクチン証明書

避難所でほかのペットとケンカになって怪我してしまった…なんてことにならないように、普段からしつけをし、ほかのペットにも慣れさせておくことが大切です。

「うちの子は室内飼いだから」と、しつけやワクチン接種を先延ばしにしている飼い主さんもいますが、そのままだと、避難先でペットの健康が脅かされてしまいます。

ペットのための救援物資は少ない

ペットのための救援物資は、人間のための救援物資よりも軽視される傾向があり、十分な量を受け取れるまでに時間がかかるかもしれません。

ペットフード、ペットシーツなど最低限必要なものは自分で用意しておく必要があるでしょう。

さらに普段特定のブランドのペットフードしか食べないようだと、配給されたフードを食べずに飼い主さんを困らせるかもしれません。

人もペットも感じる、避難所でのストレス

避難所の犬人間と同じで、ペットも避難所での生活にストレスと不安を感じます。

特に知らない人に慣れていない子だと、見知らぬ人がひっきりなしに出入りする避難所にとまどうでしょう。
動物アレルギーの方もいらっしゃいますし、臭いや毛の飛散などで他の方に迷惑をかけ、それが原因で飼い主さんも精神的に参ってしまうこともあるようです。

普段のしつけが避難生活の明暗を分ける

普段からしつけがきちんとできているペットは、避難所でも周りの人に迷惑をかけることがなく、飼い主のストレスも軽減します。

無駄吠えが多かったり、飼い主の指示を無視する傾向があると、避難所で迷惑行動を取り、苦情がきてしまうかもしれません。

以下のしつけをしっかりと行なっておきましょう。

  • ケージで過ごす訓練をしておく
  • 他の動物に慣れさせておく
  • 不必要に鳴いたり吠えたりしないようしつけておく
  • トイレ以外で排泄しないようにしつけておく
  • 不妊・去勢手術を済ませておく
  • 寄生虫駆除・フィラリア投薬・ワクチン接種を済ませておく
  • 待て、おすわり等のしつけをしておく(犬の場合)

不妊・去勢手術を済ませておくことと、寄生虫駆除やワクチン接種を済ませておくことは、動物保護施設に預かってもらう際の条件となります。

被災後に営業している動物病院を探して、投薬してから預ける…となると、かなりの時間がかかってしまいます。
災害が起こる前に、飼い主ができることをしっかり行なっておきましょう。

ペットのためにいまするべき備え・買っておくべき防災グッズ

増え続ける自然災害のニュースを見て、「防災グッズの見直しをしなきゃ」と思っている飼い主さんが多いでしょう。

「知らなかった」では済まされない災害対策について、今のうちに考えておきましょう!

いざという時のために!ペット用の避難グッズ

ケージに入った猫

  • ハーネス
  • ペット用キャリーバッグ
  • ペット用ケージ(軽量のもの)

災害発生時には、どれほど即座にペットを連れて避難できるかが問題となります。
普段からハーネスを装着することに慣れていると、すぐに装着して逃げることができます。

ハーネス

小型犬や猫、その他小動物の場合は、キャリーバッグケージに入れるのが最善でしょう。
普段からキャリーバッグやケージに慣れさせておくことで、緊急時にすぐに入れることができます。

怖いときにもキャリーバッグやケージに入れば安心、と感じるように訓練したり、その中に使い慣れたタオル等を入れておくと、災害時に自分から入るようになるかもしれません。

ケージは軽量のものだと持ち運びが便利ですし、折りたたみ式のものだと、移動が多い避難生活でも重宝します。
人見知りなペットの場合、目隠しができるものだと安心するかもしれません。

ケージ

地震が発生した場合、揺れに怯えるペットをケージに入れたり、家具の下敷きになったペットを助けるのに時間がかかり、避難が遅れてしまう可能性もあります。

普段から、家具が倒れないように固定をしておいたり、窓が割れて飛散しないように、飛散防止フィルム等を貼っておくのがおすすめです。

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ハーネスやリードで避難させる場合、安全性の低い経路を通ると、瓦礫や割れたガラスがあったりと、ペットが避難中に怪我してしまう可能性が高くなります。
お住まいの市区町村が出している安全避難マップを見て、安全性の高い避難経路をチェックしておきましょう。

歩いて避難する際に頼れるのが、ペット用の靴(靴下)です。犬や猫の足をガラス等の危険物から守ります。

靴下シリコンで丈夫なものもありますので、災害時に使うために、今からお散歩等で使い慣れておくと良いでしょう。

もしも離ればなれになってしまった時のために、迷子札を着けておく、マイクロチップを埋め込んでおく等の備えが必要です。

迷子札

東日本大震災の際には、福島県では約2,500頭もの犬が死亡したという報告があったようです。震災直後にペットの失踪届けが多数出されましたが、ほとんどのペットは行方不明のままになってしまったそうです。

環境省の調査によると、動物救護施設に収容された犬や猫のうち、迷子札を装着していたペットは100%飼い主が判明した一方で、首輪をしている(=飼われている)ものの迷子札がない場合は、飼い主が見つかる可能性が0.5%まで低下したそうです。(※2

迷子札には、ペットの名前と飼い主の名前、飼い主の連絡先等の記載が必要です。
個人情報を記載したくない、という方の場合は、QRコードやIDのみを記載するタイプの迷子札もあります。

しかし、首輪や迷子札は取れてしまう可能性があるので、一番確実なのは、動物病院にてマイクロチップを埋め込んでもらうことでしょう。

万が一離ればなれになってしまったペットを探すために、前もってペットと撮った写真を持ち出し袋に入れておきましょう。
配ることも考えて数枚コピーしておくと、動物保護団体の方にも協力してもらえるかもしれません。

犬・猫もOKの避難所を見つけておく

避難マップ災害が起きてからでは、携帯電話等を使っての情報収集が難しくなります。

避難所に行ってからペット不可だとわかった場合、どの避難所ならペット可なのか、その避難所まではどうやって行けばいいのか、などの情報収集をするのが困難になるでしょう。

今のうちに、自宅から一番近いペットの同行避難可の避難場所を見つけておきましょう。

「同行避難」についてもう一度見てみる

合わせて、ペットの居住スペースについて、

  • 飼い主と一緒にいられるか/分けられるのか
  • 室内なのか/屋外なのか

も確認しておきましょう。

memo

例えば、2019年9月5日に台風15号の被害にあった千葉市では、ペットの飼育場所は人の居住スペースと分けるものの、飼育場所としてケージを置いたり、リードを繋ぐことができる場所を確保するとしています。(各避難所により判断が異なります)

騒音等の刺激が少なくペットが快適に過ごせるとともに、鳴き声や臭いが避難者に届かない位置が望ましいとされています。(※3

市区町村により異なりますが、地域の獣医師会が動物救護本部を設置することもあるようです。

ペットフードやペットシーツの配給、避難生活の長期化による体調不良を訴えるペットの診察や、避難場所のないペットの一時受け入れ先の紹介などをしています。(※4

お住まいの地域ではどのような援助がなされるのか、改めて調べてみることをおすすめします。

電話している女性

他の動物と一緒に暮らすことにペットがストレスを感じる場合、家族や知人の家に預けるのもひとつの案です。

今から預けられそうなお家を考えておき、そのお家に行き慣れておくと良いでしょう。
災害時に預けることが決まっているならば、ペットフードやペットシーツを置かせてもらってもいいかもしれません。

ペット可の避難所が近くにない場合、を居住スペースとする方もいます。
車の後部座席を倒し、ベッド状にしてペットの安心できるスペースを作るのです。
後部座席を安定した空間にするためのグッズも販売されています。

この場合、車内の温度管理や空気の入れ替えに気を配る必要があります。
特に夏場は車内の温度は急激に上がるので、数時間おきに見に行ってあげる必要があるでしょう。

最低限のペット用フードとシーツは必須

ペットフード

  • ペットフード×5日分
  • 水×5日分
  • ペットシーツ×5日分

ペット用の物品配給が行なわれるまでは時間がかかるため、5日分程度用意しておくと安心です。

備蓄水水は、特定の水だけでなく水道水も飲めるように訓練しておきましょう。

ペットフードに関しては、ドライタイプのものがおすすめです。
ウェットタイプは重みが増すだけでなく、臭いが強いため、避難所で他の方に迷惑をかけるかもしれません。

ペット用のお皿は、汚れがつきにくく軽量なステンレス製のものや、折りたためるシリコン製がおすすめです。

ペットフード

ペット用食器

慣れない環境で不安を感じるペットのために、大好きなおやつを少し入れておいてあげると良いでしょう。

おやつには気持ちを和ませ、ホッとさせる効果があります。
ガム等を入れておくと、ガムを噛む行為で不安や緊張を和らげることができるかもしれません。

ペットシーツはペットのためだけでなく、人間の簡易トイレを手作りする際にも役立ちます。

ぺットシート

消臭効果が高いため、ごみの回収がままならないときにも重宝するでしょう。
ペット用には5日分程度用意しておきたいところですが、多めに入れておくと、何かと使えて便利です。

トイレの砂を入れる場合、靴の空き箱などを一緒に入れておくと、避難所で簡易トイレを作ることができます。

ペットも人間も使えるグッズを多めに準備しておくことで、もしもの時も安心することができます。

避難所での健康管理グッズ

毛布で安心する猫

冬に被災した場合、ペットのためにも暖がとれるグッズが必要になります。
特に小型犬、毛の薄い犬種などは、体温を保つ能力が弱いため、寒さから体調を崩してしまうかもしれません。

ペット用服

ペット用の服を1枚入れておくと、防寒用に、また避難時に体を保護するためにも役立ちます。
普段から着慣れさせておくと、災害時に服を着るのがストレスになるのを防ぐことができます。

皮膚病が起きやすい子は、衛生管理のためにブラシを入れておくと良いでしょう。

ブラシ

普段から薬を服用している子は、最低3日分程度のお薬を入れておきましょう。

ペットの匂いや汚れが気になる場合は、赤ちゃんのおしりふきシートで表面の毛の汚れを拭くことができます。
これは人間の体拭きにも使えるので、多めに非常持ち出し袋に入れておきましょう。

ウェットシート

ガーゼにベビーオイル等を染みこませて、優しく地肌をマッサージしてあげることもできます。

耳のお掃除や歯磨きなど、普段のケアを変わらず行なってあげることで、皮膚病などの感染から守ることができます。

ペット用のドライシャンプーや消臭スプレーもありますので、自分のペットに負担にならないアイテムを用意しておきましょう。

消臭スプレー

ペットが安心するグッズを

避難所でストレスが溜まるのは、人もペットも同じです。
ペットの気が少しでも紛れるように、お気に入りのおもちゃをひとつ入れておきましょう。

犬用おもちゃ

猫用おもちゃ

またペットや飼い主の匂いがついたタオル等をケージに入れてあげると、安心して眠る助けになるそうです。

まとめ

ペットが無事生き残れるかどうか、きちんと避難所までたどり着くことができるか、避難所で快適に過ごすことができるかは、ほとんど飼い主の備えにかかっています。

災害は思わぬ時に起こるので100%の準備はできないとしても、最低限必要な備えはしておきたいものですね。

特にしつけワクチン接種などは、今から始めるべき事柄です。
必要な防災グッズも揃えることで、思わぬときに自然災害に襲われたとしても、落ち着いて向き合うことができるでしょう。

さらに、ペットの健康状態や年齢、性格により必要なものは異なりますので、いまのペットに必要なものは何か見極めることも大切です。

ぜひ今から、可愛いペットのための備えを始めましょう。

イラスト:クリハラマリ

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kururi

眼科勤務後、ボランティア活動のために海外へ移住。異文化の中で、様々な「幸せのカタチ」を目の当たりにしました。現在はライターとして、日々感じたことや学んだことを発信しています!

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