夏休みの話題がチラホラ聞こえて来る頃、ウキウキする子どもとは対象的に、ママたちはソワソワし始めます。
そうです、夏のママを悩ませるツートップといえば、自由研究と読書感想文!(学童や部活のお弁当問題もありますが、話し出したら止まらないのでここでは自粛…)
子どもの自主性を重んじたいのはやまやまですが、何のお膳立てもなしに進められる子は、ほんのひと握りですよね。
そんなママたちに、「いつもしも」からご提案。
読書感想文の題材に、防災を学べる本はいかがでしょうか?
この記事では、
をご紹介します。
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※ママや小さなお子さん向けの本もこちらで紹介しています♪
読書感想文の書き方のポイントと、防災本をおすすめする理由
ママが読書感想文に頭を悩ませるのは、感想文を書くのが苦手な子が多いからですよね。
子ども曰く、
とのこと。
そこで、まずは読書感想文の書き方のポイントを整理して、読書感想文のハードルを下げてみましょう!
ポイントと合わせて、防災がテーマの本をおすすめする理由も解説していきますね。
Point1:考えたいテーマを決める
Q.読書感想文は、何のために書くの?
A.書くことによって考えを深められるからです。読書感想文を書くことを通して思考の世界へ導かれ、著者が言いたかったことに思いをめぐらせたり、わからなかったことを解決したりできるのです。ですから読書感想文は「考える読書」ともいわれます。(後略)
ー感想文Q&A 読書感想文について|青少年読書感想文全国コンクール より引用
ポイントの1つめは、考えたいテーマをしっかり決めること。
感想文を書く以前に大切なのは「考えること」です。
サラッと読めて、面白かったー!で終わる本も良いですが、感想文を書くためには、問題提起してくれるような本がおすすめ。
せっかくの機会なので、「子ども自身が関心はありそう、でも深く考えたことはなさそう」なテーマの本を手にとってみると良いですね。
防災本をおすすめする理由その1
- 災害の恐ろしさや防災の大切さを学べる
防災がテーマの本を読んで、学校で学ぶ知識とは違った角度から、被害状況や被災地での出来事を知ることはとても大切です。
どんなことが起こり得るのか、そして、被害を最小限にするためにはどんな備えが必要なのかなどを考えてみましょう。
Point2:自分にとって「良い本」を選ぶ
Q.どんな本をよんだらいいんだろう?
A.思いっきり楽しめたり、自分を見つめなおしたり、新しいことを教えられたり……。自分の心を突き動かしてくれる本が、その人にとっての「良い本」だといえます。自分に合った、心を動かされる本を探してみましょう。(後略)
ー感想文Q&A 本について|青少年読書感想文全国コンクール より引用
2つめのポイントは、自分に合った本を選ぶこと。
せっかく本を読むなら、お子さん自身が面白い・興味深いと思える本が良いですよね。
お子さんはどんな本が好きですか?
- 子どもが活躍する本が好き
- 動物が出てくる本が好き
- 働く人の本が好き
- なにかを作り出す本が好き
- ファンタジーが好き
- イラストがかわいい・かっこいい本が好き
…などなど、普段好んでいるマンガやアニメ・ゲームなども参考にしながら、お子さんと一緒に選んでみてください。
防災本をおすすめする理由その2
- レポート、絵本、マンガ、小説…さまざまな種類の作品がある
「防災本」と聞くと、備えのHowTo本以外では、被災者の声を集めたノンフィクション作品を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
ただ、ノンフィクションとひと口に言っても、執筆者が実際に被害にあった方か被災地を回った方か、もしくは救助活動をされていた方か、などによってかなり内容は変わってきます。日記のように思いを綴ったものか、事実を淡々とレポートしたものか、などの違いもありますね。
一方で、震災小説や絵本、マンガなど、フィクションという形でも、多くの本が執筆されています。
震災を風化させないよう、さまざまな種類の本が出版されている中、お子さんが興味を持ちやすい種類や語り手(主人公)の作品を選ぶと、学びも多そうですよね。
Point3:自分自身がどう感じたかを追う
Q.何をどう書けばいいか、全く分かりません。
A.本を読んで自分がどこに感動したのか、なぜ感動したのかを考えましょう。そしてもう一度本を読んでみましょう。自分の生き方や経験と本の世界とを照らし合わせると、いろいろなことが見えてきます。感じたこと、思ったこと、連想したことなどを忘れないうちに全部メモしておきましょう。(後略)
ー感想文Q&A 書き方について|青少年読書感想文全国コンクール より引用
書くのは読書「感想」文ですから、読んで子ども自身がどう思ったかが一番大切になってきます。これが3つめのポイントです。
家族やお友達との関係・環境の変化、それに対する思いなど、さまざまなものが描かれる中で、どこが一番強く印象に残ったのかを意識しましょう。
ママの方から、どこが面白かった?などと聞き出してあげるのも良いですね。
注意したいのは、印象に残った=わかりやすい感動とは限らない、ということ。
読書から得られるのは、胸が熱くなって涙が出るような感情ばかりではありません。「自分でもこうしてしまうな…」という共感、あるいは「自分ならこんなことしないのに!」という反発の場合もあるかと思います。
いまの自分に置き換えて考える中で、なぜそこに心が動いたのか、ぜひ掘り下げてみてくださいね。
防災本をおすすめする理由その3
- 自分ごととして想像しやすい
「もし自分だったら」という想像がしやすいのではないでしょうか。
また、災害を自分ごととして捉えると、自分にとって大事なものや今後大切にしていきたいことが見えてきます。
ではどんな備えが必要か、という大切な視点に繋がりますので、ぜひじっくり考えてみてください。
メモやふせんを活用しながら読んでみよう!
ここまでご紹介してきた3つのポイントを押さえるため、読みながらメモやふせん、しおりなどをどんどん活用しましょう。
気になったところにしるしをつけたりメモを残したりすることで、読み返す手間を減らせます。
手書きの原稿用紙では、書き直しも大変です。特に低学年のうちは、少しでも戻りが減るようにサポートしてあげると良いでしょう。
notice
しるしの付け方はいろいろですが、折り目をつけたり何かを貼ったりするのは自分の本の時だけにしましょう。
本を傷めてしまうので、お子さんには、学校や図書館・お友だちから借りた本では絶対にやらないように伝えてくださいね。
図書館恐怖の写真(心霊番組風)画像をご覧いただきたい。お分かりであろうか。付箋をはがした時に、ページの表面が活字ごと剥がれてしまっている。長い年月を経た本は、きれいに見えても劣化が進んでいる事がよくあるのだ。絶対に、図書館の本に付箋を貼ってはならない……(横浜) #神奈川県立図書館 pic.twitter.com/3juO6qvoBe
— 神奈川県立の図書館 (@kanagawa_lib) June 21, 2018
低学年(小学校1〜2年生)向け
それでは、具体的に読書感想文におすすめの本をご紹介していきます。
小学校低学年向けの本から、読書がちょっと苦手な子でも楽しんで読める、イラスト満載の本と学習マンガを選んでみました。
ボク、もぐらんぴあ 応援団長はさかなクン 東日本大震災で全壊した水族館の物語
お知らせ1もぐ!
さかなクンと協力して作った、もぐらんぴあの本が朝日学生新聞社さんから発売されるもぐ!
「ボク、もぐらんぴあ 応援団長はさかなクン!東日本大震災で全壊した水族館の物語」というタイトルもぐ!
発売予定日は1月25日(金)もぐ!
定価は1,300円(税抜)もぐ!
お知らせ2へ続くもぐ! pic.twitter.com/ZhKaGUyhiG— もぐらんぴあ水族館(久慈地下水族科学館) (@moguranpiaqua) January 18, 2019
- 著者
- 朝日小学生新聞
- 監修
- 久慈地下水族科学館もぐらんぴあ
- 協力
- さかなクン(アナン・インターナショナル)
- 価格
- ¥1,430(税込)
- 発売日
- 2019/1/31
- 発行
- 朝日学生新聞社
- ISBN
- 978-4-909064-58-5
まずは、「もぐらんぴあ」という水族館のお話。
岩手県の北部、青森にほど近い久慈湾に建つ水族館の、東日本大震災の被災から復興、そして震災前から続くさかなクンとの交流が描かれます。
その久慈は、2011年3月11日、10mを超える大きな津波に襲われ「もぐらんぴあ」も全壊。
館長を始めとしたスタッフは高台に避難できたものの、水族館の建物と魚たちは大きな被害を受けてしまいます。
そんな中を生き残ったアオウミガメのかめ吉との再会や、小さな「もぐらんぴあ・まちなか水族館」を経て、震災から約5年後に「もぐらんぴあ」がリニューアルオープンするまでの軌跡は、やさしい文章ながら読みごたえ抜群!
後半が久慈の海のお魚図鑑になっているのも大きな魅力です。
写真と解説に加えて、さかなクン直筆の、リアルだけどどこか愛嬌のある魚たちのイラストが添えられていて、飽きずに読めますよ。
学研まんが 新ひみつシリーズ地震のひみつ
- 漫画
- 吉川豊
- 監修
- 翠川三郎(東京工業大学)/瀧本浩一(山口大学)
- 価格
- ¥968(税込)
- 発売日
- 2013/2/28
- 発行
- Gakken
- ISBN
- 978-4-05-203583-8
※2023年6月現在、出版社は在庫なしになっています。各書店で入手できなかった場合は、図書館などで探してみてください!
次は、小学生に大人気の「ひみつシリーズ」より、「地震のひみつ」をご紹介。
マンガですが、
- プレートや活断層とはなにか
- 海溝型地震と直下型地震の違い
- マグニチュードと震度の違い
- P波とS波とはなにか
などがしっかり説明されています。
また、過去100年に起こった大きな地震10例が紹介されているのもポイント。
近年の防災を大きく変えた1995年1月17日の阪神・淡路大震災でさえ、2010年代生まれの小学生には遠い昔のことなんです。
直接体験していなくても、どんな地震があり・どんな課題が浮き彫りになり・どんな対応がされてきたか、過去の地震から学ぶことはとても大切ですよね。
中学年(小学校3〜4年生)向け
次は、小学校中学年におすすめの本になります。
災害が起こった時、子どもたちに何が起こったのか、そして子どもたち自身がどう感じていたのかが伝わるお話を選びました。
マリと子犬の物語 ~山古志村 小さな命のサバイバル~
- 著者
- 時海結以
- 脚本
- 山田耕大/清本由紀/高橋亜子
- 価格
- ¥770(税込)
- 発売日
- 2012/4/26
- 発行
- 小学館ジュニア文庫
- ISBN
- 978-4-09-230625-7
2004年10月23日に発生した新潟県中越地震を生き抜いた母犬「マリ」と3匹の子犬たち、そしてその家族の物語です。
フィクションですが、マリという犬が子犬を守りながら生き抜いた実際のお話(※1)が元になっていて、同名映画を子ども向けにノベライズした作品になります。
舞台は、新潟県の古志郡山古志村(現在は同長岡市)。
被害が大きく、さらに周辺道路がすべて寸断されて孤立してしまった村として知られています。山古志村の全村民が、長岡市の避難所に避難しました。
地震が起きたとき、家族はそれぞれ自宅・学校・隣町と離れた場所に居て、合流できたのは翌朝のこと。
家族と連絡が取れない不安や寂しさ、大切なペットを連れて避難できない悔しさや悲しさが丁寧に描かれています。
救助してくれた側、自衛隊員の方の葛藤にも注目です。
ちなみに、本作では子犬が生まれてから数週間経っていますが、実話では、マリは地震当日に子犬たちを産んだそうです。ママの立場からすると、そちらの方に感情移入してしまいますね…
世界はとつぜん変わってしまう? もし、「あたりまえ」の毎日が、ある日とつぜんうしなわれたら?をかんがえる本。
- 文
- 百瀬しのぶ
- 絵
- なみごん
- 価格
- ¥814(税込)
- 発売日
- 2022/2/9
- 発行
- KADOKAWA/角川つばさ文庫
- ISBN
- 978-4-04-632084-1
本作は、
- 語り部・雁部那由多さんが語る「震災の日」
- チャイルドラインみやぎ代表理事・小林純子さんが語る「震災後の生活」
- 子ども・若者貧困研究センター長 兼 東京都立大教授・阿部彩さんが語る「これから」
の3部構成になっています。
5年生の双子の姉弟・ミサキとダイキが、東日本大震災にそれぞれの立場で関わった方のお話を聞きながら、震災について学んでいくというストーリーです。
テーマは重めですが、2人が大切にしているぬいぐるみのキキが案内してくれるという設定なので、構えずに読むことができます。
特におすすめしたいのは第1章、小5で被災し、その後語り部として活動を続けている雁部那由多さんのお話。
津波に飲み込まれそうになったこと、学校の再開で教室内に格差が生まれてしまったこと、助けられなかった方の「第一発見者」になったこと…宮城に住む1人の男の子のリアルな目線や率直な思い、震災について話そうと決意するまでなどが綴られています。
現在も語り部を続け、大学でも社会学を専攻して被災した方の声を集めている雁部さんが説く、震災を伝えること・そこから学んで防災に努めることの大切さにも注目してください。
また、こちらの作品では、
- 災害時、子ども自身がどう感じていたか
- 避難中、子どもに必要な支援は何だったのか
を、専門家の意見を交えて詳しく知ることができます。
今回ご紹介した中でも特にママにもおすすめしたい1冊ですので、ぜひチェックしてみてくださいね!
高学年(小学校5〜6年生)向け
長いお話も読めるようになってくる小学校高学年向けは、さまざまなジャンルから選んでみました。
宇宙食になったサバ缶
- 著者
- 小坂康之/別司芳子
- 価格
- ¥1,650(税込)
- 発売日
- 2022/6/30
- 発行
- 小学館
- ISBN
- 978-4-09-227258-3
宇宙食の紹介やクイズから始まる本作は、宇宙日本食の1つ「サバ醤油味付け缶詰」の開発秘話です。
なぜ宇宙食の本が防災におすすめなの?と不思議に思われるかもしれませんが、
- 常温で保存できること
- 賞味期限が長いこと
- 特別な調理器具が不要なこと
など、実は宇宙食と非常食には共通点がたくさんあります。
非常食でおなじみのアルファ米やフリーズドライ食品も、宇宙食として採用されているんですよ。
【参考】宇宙日本食|JAXA
宇宙日本食として大手食品メーカーの商品が並ぶ中、本作のサバ缶は福井県の若狭高校の生徒たちが作ったものです。
- 味覚が鈍る宇宙滞在中でも、美味しく食べられる味や食感とは?
- 液体が球体化して浮いてしまう無重力空間で、安全に食べられる調味料は?
…などなど、「宇宙で食べるための食事」を仲間と一緒にさまざまな角度から追究していくさまは、大人が読んでもワクワクします。
2020年11月27日、宇宙飛行士の野口聡一さんが国際宇宙ステーション(ISS)で食べたところがYouTubeで配信されているので、こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。
食べることが備えにもなる!”アルファ米のパイオニア”尾西食品さんスペシャルインタビュー
以前、いつもしも編集部でアルファ米の食べ比べをした時のこと。 と盛り上がり、その時からずっと と思っていた私たちでしたが…。 ついに!今回、尾西食品株式会社さんにインタビューさせて頂けることに♪(歓喜 ...
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あの日起きたこと 東日本大震災 ストーリー311
- 文
- 山室有紀子
- 原作/絵
- ひうらさとる/ななじ眺/さちみりほ/樋口橘/うめ
- 価格
- ¥726(税込)
- 発売日
- 2014/2/15
- 発行
- KADOKAWA/角川つばさ文庫
- ISBN
- 978-4-04-631376-8
こちらは、人気マンガ家たちが東日本大震災の被災地で伺ったお話をマンガ化する「ストーリー311」プロジェクトのノベライズ作品です。
発起人は、綾瀬はるかさん主演でドラマ化もされた『ホタルノヒカリ』などで知られるひうらさとるさん。
マンガに書き残すことで、語り部のような役割を果たせるのでは、と企画されたそうです。(※2)
原作マンガには、ほかにも末次由紀さん・東村アキコさん・おかざき真里さんなど、そうそうたるメンバーが参加されています。
本作では、原作マンガからピックアップされた
- 故郷を離れて遠方に避難した子どもの目線
- 津波ですべてを流された親の目線
- 原発近くの村に赴任した教師の目線
- 津波で母を喪った子どもの目線
- 夢をあきらめない兄弟の目線
の5つのお話が、各マンガ家のイラストを添えて紹介されています。
特に印象的だったのは、第1話の福島に住む小学校6年生の女の子のお話。
彼女は、福島に原発があることを知らなかったそうです。
また、地震や原発の怖さは感じつつも、彼女が何より悲しんだのは、避難先で入学した中学の制服のスカーフが青でないことでした。
小学生なら、同じ県内とはいえ、自分が住む市区町村の外のことをよく知らなくても不思議はありません。
そして、避難しても生活は地続きで、当然のように、進学するはずだった中学の制服への憧れや着る服を気にする気持ちも持っています。
「福島で被災して避難してきた子」ではなく、ごく普通の小学生がそこに居るのを感じるエピソードだなと思います。
地震のはなしを聞きに行く 父はなぜ死んだのか
- 文
- 須藤文音
- 絵
- 下河原幸恵
- 価格
- ¥1,540(税込)
- 発売日
- 2013.2
- 発行
- 偕成社
- ISBN
- 978-4-03-645050-3
東日本大震災の死者は、12都道県で計15,900人。行方不明者は6県で計2,523人、災害関連死は10都県で計3,792人。(2023年3月9日時点)(※3)
合計22,215人にのぼる犠牲者のうちの1人が、気仙沼港で船の整備士をしていた筆者のお父さん・勉さんです。
お父さんは54歳、仙台で働いていた筆者の須藤さんは23歳での、突然の別れでした。
大好きなお父さんの死と向き合うため、須藤さんは
- どうして地震が起きるのか
- 地震の歴史とは
- どうやって備えるべきか
を、有識者に聞きに行きます。
地震学者の松崎先生・地震考古学者の寒川先生・人と未来防災センター長の河田先生のお話は、それぞれ専門的でありながら噛み砕かれていて、とてもわかりやすい!
さらに、各章の合間には、イラストレーターの下河原さんによるコミックエッセイがあり、文章とイラストの両方から理解を深めることができます。
肉親の死に向き合うという重めな内容ではありますが、落ち着いた文体で語られているので、読みやすい作品です。
話を聞きに行ってわかったこと、そして、それでもわからなかったことが語られる「おわりに」まで、ぜひしっかり読んでみてください。
氷柱の声
- 著者
- くどう れいん
- 価格
- ¥1,485(税込)
- 発売日
- 2021/7/9
- 発行
- 講談社
- ISBN
- 978-4-06-524128-8
本作は、歌人やエッセイストとして活動されている、岩手県盛岡市出身のくどうれいん(工藤玲音)さん初の小説として話題になった作品です。(※歌人としては漢字名義→2024年2月〜すべてひらがな名義に統一)
盛岡市の高校生・伊智花(いちか)の、東日本大震災後の10年間が描かれます。
いわゆる震災小説と違い、伊智花自身、そして出会う人達の多くが「被災はしたけれど何も失わなかった人」です。
「あの日」のあと、被災者に期待されるような物語は持ち合わせていなくて、でも何かを抱えてきた人々の思いが、丁寧にひろい集められています。
思い出の滝の白、通学途中に降るニセアカシアの花、ざぼんの黄色、真っ赤な高級スズランテープ、ちいさなちいさなろうそくの灯り…などなど、鮮やかな情景描写も特長的な作品です。
第165回芥川賞(2021年上半期)の候補作にもなった本作、2022年度の難関中学の入試でも取り上げられたということで高学年向けに入れましたが、中学生以上でも十二分に読みごたえがあると思います。
中学生・高校生向け
最後に、中学生・高校生向けの小説をご紹介します。
1冊ですが、ちょっとした表現から登場人物の心情を読み取ってほしい繊細な作品を選びました。
この川のむこうに君がいる
- 著者
- 濱野京子
- 価格
- ¥1,540(税込)
- 発売日
- 2018/11
- 発行
- 理論社
- ISBN
- 978-4-652-20289-0
ヤングケアラーをテーマにした「with you」で知られる児童文学作家・濱野京子さんの作品です。
東京の荒川近くで暮らす梨乃という女の子の高校生活が描かれます。
中1の夏に父の転勤で東京に引っ越してきた梨乃の事情は、はじめは読者にも明かされません。
- なぜ誰も自分を知らないことにほっとするのか
- なぜ川を見たくなかったのか
- なぜきょうだいの話に微妙な反応をするのか
入部した吹奏楽部で、津波と原発事故によって避難してきたことを明言する同級生と出会って、少しずつ明らかになっていきます。
隠したい主人公と、あえて口に出す同級生。
故郷に残った友人たちと、主人公たちとは違う土地に引っ越した同級生の恋人。
居住地や境遇など、川のように人間関係を隔てる何かと、時間とともに変わっていく関係性を静かに追っていく物語です。
震災という大切なテーマがある一方で、高校生にとってごく普通の日常、友情や部活や恋についても描かれているので、青春小説としても読めるかと思います。
以前、青少年読書感想文全国コンクールの高校生の部の課題図書にもなったことがあるこちらの作品は、高校生以上にもおすすめしたい1冊です。
読書で心の備えを
読書感想文におすすめの、防災がテーマの本を9冊ご紹介しました。
今回は、子ども向けということで児童書から選びましたが、大人が読んでも学びが多い素敵な本ばかりです。
防災の本と言うと、グッズや非常食などの備え方や紹介の本がメジャーですが、ストーリーから学び取る力も大切ですよね。
物を備えるだけではなく、心の備えにも繋がる作品たちを、ぜひママも手にとって読んでみてください。
家庭でできる子ども向け防災教育とは?「もしも」のとき自分を守るために
地震に台風、豪雨と、毎年のようにさまざまな災害に見舞われる日本。 東日本大震災以降は、学校教育の場でも避難訓練や引き取り訓練に加え、防災について学ぶ時間が増えています。 この災害の多い国で子育てする私 ...
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