非常時に食べたいものや、あって良かったと思うものは、普段食べなれているものやおやつなど「ほっとする味」だと言われています。
いつも食べているものの中から賞味期限が長い食品を多めに買っておけば、普段の買い置きで非常食の備えを行うことができます。
もしものときに「備えていてよかった」と思える非常食になるものをまとめました。
pick up!
非常食になるものとは、いつも食べている好みのもので常温保存期間が長めのものです。ローリングストックで無理なく備えられます。
「普段から取り入れられる」非常食になるものはこちらです。(タップで開きます)
この記事の目次
食べなれているものを非常食の代わりにする
ひと昔前は非常食というと、乾パンやクラッカーなど長期保存はできるけれど味気のないものばかりでした。
しかし、今は被災時にこそ満足感のある食事が大切という考え方が浸透しています。
そのためには、いつも食べているものを非常食としてローリングストックするのがおすすめです。
そのメリットについて詳しく見てみましょう。
備蓄している食料で栄養と安心感を
いつもしもでは、「非常食」には大きく分けて2つの意味があると考えています。
- 防災リュックに入れるような「もしも」の時に栄養補給するためのもの
- 被災生活が長引いた場合、数日間~1週間分の備蓄食料
今回は、後者のような非常時のための備蓄食料について考えたいと思います。
このような非常食が必要になるのは、次のようなシチュエーションです。
- 在宅での避難生活が長引いている
- 電気やガス、水道のいずれかが復旧せず大した調理ができない
- 物流が途絶えて買い出しができない
つまり、被災からすでに数日が経っており、身体的・精神的な疲労が溜まっている状況が考えられます。
この状況での食事に求められるのは、栄養補給とストレスの緩和です。
被災時こそ栄養バランスを考えて
農林水産省は「災害に備えた食品ストックガイド」という非常食についてまとめたPDFデータを発表しています。(※1)
それによると、備蓄を準備する際には次のような栄養素をバランスよく摂取できるように備えることが勧められています。
- たんぱく質
- ビタミン
- ミネラル
- 食物繊維
非常時の食事は炭水化物ばかりでたんぱく質やビタミンが不足する傾向にあります。
被災時には運動不足やストレスの影響で免疫力が下がりがちになり、それに加えて栄養不足になると、感染症にもかかりやすくなってしまうでしょう。
非常食こそ、体を守るために栄養バランスの整ったものを選ぶべきなのです。
もっと詳しく
食事でホッとするひとときを
被災生活を送っていると、仕事に行くこともできず気晴らしをすることもできず、単調な毎日のせいで気が滅入ってしまう可能性があります。
そのような生活では、食事は気を紛らわす機会となり、重要度が高くなります。
食事での満足度が高いと、被災生活も耐えやすくなるでしょう。
しかし、従来の非常食には次のようなデメリットがありました。
demerit
- 保存期間の長さだけが重視される傾向があったので、味や食感が良くないものが多い
- 緊急用というイメージが強く、「今は非常時だ」というプレッシャーを与えてしまう
そんなとき、非常食が食べなれているものや日常を感じさせるものだと、緊張で張りつめた心と体を和ませることができます。
最近の非常食のニーズとして、甘いものが人気の傾向があります。
甘いものは幸福感を与える効果があると言われており、被災して疲れきった状態の体をホッとさせてくれるでしょう。
防災リュックや備蓄食料に自分や家族の好きなおやつを入れておくと、被災時のストレス対策になります。
また、食事をよく噛んで食べることには、幸福感を増す効果があるとの報告もあります。(※2)
気分が滅入ってしまいがちな被災時こそ、食事をしっかり食べることは精神衛生上も効果的なのです。
ローリングストックでいつも備えができた状態に
農林水産省は「災害時に備えた食品ストックガイド」の中でローリングストックを推奨しています。
memo
ローリングストックとは、いま注目されている食品備蓄方法です。
普段の買い置きの量を多めにして、賞味期限の近いものから消費し、消費した分を買い足していきます。
ローリングストックを実践していると、常に食料が備蓄されている状態なので、被災時にはその中から食事することができるのです。
他にも次のようなメリットがあります。
merit
- 「いつも」の備蓄と「もしも」の非常食の備えが同時にできる
- スーパーで揃えることができるので、気軽に買えてコストも抑えられる
- うっかり賞味期限が過ぎてしまうことがなく、廃棄が少ない
- 食べなれているものなので、被災時に安心感を得ることができる
- 食べ方がわからない、口に合わないということがない
今まで何となく備えを後回しにしていたり、費用の関係でなかなか非常食を揃えることができない人もいるでしょう。
そんな方こそ、まずはいつも食べているものをローリングストックすることから始めませんか?
非常食にもなる!ローリングストックにおすすめのもの
ローリングストックする食品を選ぶポイントは以下の通りです。
point
- 普段から食べなれていて好きなもの
- 消費する頻度が高いもの
- 保存期間が比較的長いもの(常温で6ヶ月~1年程度)
これらの基準を満たすものならば、日常の食生活で使うため定期的な入れ替えが可能になり、放置期間が長くなるのを避けることができます。
では、具体的なおすすめアイテムを見てみましょう。
常温×長期保存できる食材
普段の食事で使うものの中で、常温保存や長期保存が可能なものです。
どれもスーパーで気軽に買えます。
もっと詳しく
パックのご飯
パックのご飯は被災時のエネルギー源となりますし、普段の生活でも重宝します。
少量のご飯が必要なときやご飯を炊き忘れたときなどに使えるので、うっかり賞味期限を切らしてしまうことも少ないでしょう。
食べるときは電子レンジで温める必要があります。
停電時は湯煎するか、ガスコンロが使えるならフライパンで加熱して味付けするなど、アレンジしましょう。
賞味期限は、製造日から10ヶ月程度のものが多いです。
メーカー:佐藤食品工業
賞味期限:製造日から10ヶ月
保存方法:常温保存 直射日光・高温・多湿を避ける
レトルトパウチのカレー、丼もの
レトルト食品は普段から使用する可能性が高く、ローリングストックにおすすめです。
温めるだけで食べられるので、電気がない場合にはお湯で、水がない場合には電子レンジでと様々な方法での調理が可能です。
なかには温めずにそのまま食べられるものもあります。
味にこだわって作られているものが多く、満足度が高いのがポイントです。
子どもにはカレーやシチュー、大人には中華丼や牛丼などが人気でしょう。
家族みんなの好きなものを揃えることで、被災時のストレスを軽減することができるかもしれません。
賞味期限は1~2年近くあるものが多いので、非常食としても適していると言えます。
商品名:「レトルトジャワカレー」
メーカー:ハウス食品
賞味期限:製造から1年6ヶ月
保存方法:常温保存 直射日光・高温・多湿を避ける
カップ麺
インスタントのカップ麺なら常に買い置きがある!という家庭も多いのではないでしょうか?
いつもの買い置きの量を少し増やすだけで、非常食としての備えになります。
温かい汁物にはホッとさせる効果がありますし、同時に炭水化物も摂取できます。
賞味期限が長いように思ってしまいがちですが、意外にも1年以内で賞味期限が切れてしまうものが多いです。
ローリングストックして、賞味期限が近いものから食べましょう。
商品名:「チキンラーメン」
メーカー:日清食品
賞味期限:製造日から8ヶ月
保存方法:常温保存 直射日光・高温・多湿を避ける
ゼリー飲料
最近、非常食にもなると注目を集めているのがゼリー飲料です。
小腹を満たしたいときや栄養バランスが気になるときなど、手軽にエネルギーやビタミン、ミネラルなどの栄養素を摂取できます。
パウチの袋に飲み口が付いているので、食器も要らず手も汚しません。ゆるいゼリー状なので体調不良時でも喉を通りやすいです。
賞味期限は半年~10ヶ月程度のものが多いですが、中には半年未満のものもあります。
商品名:「inゼリー」(エネルギー)
メーカー:森永製菓
賞味期限:製造日から10ヶ月
保存方法:常温・冷蔵
notice
ゼリー飲料は様々な種類が出ていますが、マルチビタミンが配合されているものなどは子どもの摂取が推奨されていないものもあるので、購入するときには製品情報を確認しましょう。
野菜ジュース
被災時の食事はおにぎりやパンなど炭水化物が中心になりがちです。
体調を崩さないために、栄養バランスも考えたいですね。
生野菜をそのまま摂ったり調理したりすることが難しい場合は、野菜ジュースを代わりにすることもできます。
賞味期限は半年~10ヶ月程度のものが多いです。
一度に大量に買うよりも、ローリングストックを活用して賞味期限が切れないようにするのがおすすめです。
商品名:「1日分の野菜」(紙パック200ml)
メーカー:伊藤園
賞味期限:製造日から9ヶ月
保存方法:常温保存 直射日光・高温・多湿を避ける
牛乳や豆乳(常温保存が可能なもの)
牛乳は常温保存できないと思いがちですが、未開封で常温保存が可能なものもあります。
200ml入りと1000ml入りがあるので、1人で飲むなら200ml、家族で飲んだりシリアルにかけたりするなら1000mlと使い分けることができます。
開封後は10℃以下で保存し、なるべく早く飲みきってください。
商品名:「大阿蘇牛乳」
メーカー:熊本県酪農業協同組合連合会
賞味期限:目安として60~70日
保存方法:常温保存 直射日光・高温・多湿を避ける
牛乳が苦手な人は、豆乳も未開封で約4~6ヶ月の常温保存が可能です。
スーパーで手軽に買えて常温保存ができ、たんぱく質も摂れる牛乳や豆乳。
いつも飲んでいる方をローリングストックしてみましょう。
カップ麺だけじゃない!おすすめの主食
主食の炭水化物はエネルギー源となり、被災時の体力維持のため大切です。
他におすすめなのは以下のものです。
非常食になる主食
- 米(無洗米)
- 餅
- パスタなどの乾麺
- ロングライフパン
ご飯が炊けない状況ではアルファ米やパックご飯が役に立ちますが、被災生活が長引けばそれだけでは持ちません。
ライフラインが一部復旧した場合も考え、備蓄食料として普段から使うお米も多めにストックしておきましょう。
無洗米であれば、災害時は使う水が少なくて済みます。
お餅は鍋用などに薄くスライスされたものだと、お湯があれば戻して食べることができます。 突然ですが、スライス餅ってご存知ですか? 早く柔らかくなるよう、切り餅を薄くスライスした商品です。 寒い季節になると、スーパーの鍋コーナーで目にする事も多いのではないでしょうか? しゃぶしゃぶ餅や薄切 ...
スライス餅、実は優れた非常食!実食レポで好評だったレシピは?
パスタは商品により茹でる時間が異なるので、早く茹で上がるタイプを選べばガスの節約になるでしょう。
警視庁の災害対策課のTwitterでは、パスタを水漬けするという裏ワザも紹介されていました。
乾燥パスタを4時間ほど水に漬けておくと、水を吸収してパスタがクタッとした状態になります。
この状態になれば、パスタを茹でる必要なく、他の具材と炒めたりするだけですぐに食べることができるそうです。
水やガスが限られている状態の場合、とてもありがたい裏ワザですね。
「水漬けパスタ」に挑戦です!市販のパスタを水に漬け、クタッとさせて調理する技。災害時など、ガス・電気・水の節約につながるイイ技です!今回はパスタを4時間水に漬けた後、茹でずに、薄切りしたハムとタマネギ、ケチャップで1分炒めてナポリタンに。歯応えよく、想像以上の美味しさでした(喜) pic.twitter.com/ALyQhLqpX0
— 警視庁警備部災害対策課 (@MPD_bousai) 2017年1月17日
【非常食パスタ検証】もしもの時は茹でる?水漬け?おすすめ調理法5選
簡単に作れてバリエーション豊富なパスタは、忙しいママにも大人気! 最近ではもしもの備えとしてパスタをローリングストックしている方も多いのではないでしょうか。 そんなパスタ好きさん必見! 今回はオーソド ...
続きを見る
ロングライフパン
おすすめなのが、最近増えているロングライフパンです。
非常用の缶入りパンに比べれば賞味期限は短いものの、普通のパンよりずっと長持ちします。常温で保存できるのも嬉しいですね。
memo
ロングライフパンとは、特別な酵母を使うことで賞味期限を長くしているパンのことです。35日程度から、長いものであれば2年も賞味期限があるものもあります。
「コモ」というロングライフパンの会社からは、ローリングストック用のパンセットが販売されています。
製造日から60日間食べられるロングライフパンの詰め合わせになっており、「デニッシュチョコ」「メープルワッフル」など人気の味が10種類、25個入っています。
商品名:「長持ちセレクション」
メーカー:株式会社コモ
賞味期限:製造日から60日間
保存方法:常温保存 直射日光・高温・多湿を避ける
甘いデニッシュだけでなく、シンプルなクロワッサンが入ったセットもあるので、普段の朝食にもなります。
日頃から食べているものであれば、使ったら買い足すという方法で無理なくローリングストックを行うことができますね。
体も心も温まる!人気の汁物
非常食や配給のご飯は、おにぎりやパンなどが多く、汁物があると満足度が増します。
野菜が入った味噌汁や青汁などは、栄養補給にも役立ちます。
特に寒い時期には、温かい汁物があるだけで体も心も温まるでしょう。
非常食になる汁物
- 即席の味噌汁、カップスープ
- レトルトパウチのスープ
- 粉末の青汁
即席の味噌汁やスープなどは日々の食事でも使うので、スムーズにローリングストックできますね。
味噌汁なら生みそタイプよりもフリーズドライの方が賞味期限は長いです。
春雨やマカロニ入りのカップスープならば軽食にもなりますし、具だくさんのレトルトパウチのスープはおかず代わりにもなるのでおすすめです。レトルトならお湯も使わずにそのまま食べられるものもあります。
これを機に買い置きの量を少し増やして、被災時の栄養バランスのために備えてみませんか?
ビタミン補給に! 常温保存できる野菜
常温で保存できる根菜など、比較的賞味期限の長い野菜を普段から多めに買っておきましょう。
被災時に茹でて食べたり、レトルト食品やカップ麺に加えることで、ビタミン等の栄養価が増します。
非常食になる野菜
- たまねぎ
- にんじん
- じゃがいも
- さつまいも
基本的には冷暗所での保存が勧められています。
被災した場合は、直射日光の当たらない場所で、新聞紙に包んで保存しましょう。
他にも、レトルトパウチやフリーズドライの野菜があれば汁物を飲むときに一緒に入れたり、麺類に混ぜたりして重宝します。
被災時に野菜を摂ることはなかなか難しいので、常温保存できる野菜はおすすめです。
備えて安心!揃えておくと便利な乾物
乾物は日本の食卓におなじみのものであり、食べると安心するものです。
そのまま、もしくは水に戻すだけで食べられるものが多く、災害時の食事にぴったりです。
ミネラルや食物繊維、カルシウムなどを含むものを選ぶことで、被災時に不足しがちな栄養素を補うこともできるでしょう。
旨みがあるものも多く、レトルト食品にはない安心感を得られます。
普段の食事にも使えて、半年以上賞味期限があるものが多いので、ぜひ多めに購入してローリングストックしてくださいね。
非常食になる乾物
- 海藻類(乾燥わかめ、海苔、塩昆布など)
- 乾燥大豆
- 高野豆腐
- 麩
- 切り干し大根
- かつお節
- 煮干
上記のような乾物の他にも、様々なちょい足しアイテムを備えておくと食感や風味を加えることができ、単調になりがちな被災時の食生活に役立ちます。
被災時のストレスに!心を和ませるおやつ
おやつを食べると、気分転換になったり心がほっこりしますよね。
被災時にも甘いものやおやつがあると、気分を和ませてくれるでしょう。
いつものおやつのストックを多めに買っておくと、もしもの時の備えにもなります。
非常食になるおやつ
- クッキー、ビスケット
- チョコレート
- バータイプの栄養補助食品
- ミルクスティック
- あめ
チョコレートは非常時のカロリー補給にも役立ちますが、夏場は溶けることがありますので注意しましょう。
バータイプの栄養補助食品は栄養バランスも考えられているので、朝ごはん代わりにもなりますし、牛乳と砂糖で作られたミルクスティックなどは乳製品が恋しくなったときにも重宝します。
スタッフのノマリさんがアカチャンホンポで見つけたミルクスティック。#アルファ米 でも有名な尾西食品のもので、賞味期限はなんと約5年! 国産牛乳から作られていてカルシウム補給もできる嬉しいおやつです。軽いので防災リュックに入れてもいいですね。やさしい甘さで美味しかったです😋 #いつもしも pic.twitter.com/rSTzRRxbqJ
— いつもしも◇子どもとママの防災 (@itumosimo) September 28, 2020
あめも賞味期限が長めで軽量なので、防災リュックに入れておくのもいいでしょう。
おやつは家族みんなの好きなものを揃えておきましょう。
買い置きすると食べ過ぎちゃうなんて人は、ひと月ごとの量を決めて購入すると良いかもしれませんね。
最後に、ローリングストックを続ける際のポイントです。
point
- ローリングストックの際にはチェックリストを作っておくと管理しやすい
- 賞味期限を把握するため、賞味期限が書かれた欄がすぐ見えるように置き方を工夫する
毎日の管理のストレスを減らすことで、無理なく続けることができます。
ローリングストックしている食料の保管や管理方法については、ママたちの本音に防災備蓄収納2級プランナーが答えてくれるこちらの記事も参考にしてください。 防災は、いくらやってもキリがないもの。 ただそれ以前に、基本をこなすのもけっこう難しかったりしますよね。 ローリングストックなら簡単、といわれていますが…。 いざ本格的に始めようと思うと、さまざまな問 ...
ローリングストック、実際やると難しい!ズボラ向け非常食管理術とは
まとめ
非常食とは、特別な食品だけではありません。
いつも食べているものも非常食の代わりになります。
そして「いつも食べているもの」をローリングストックしていれば、常に災害への備えができた状態を保てます。
日々の買い物の意識を少し変えるだけで、明日からでも実践することができますよ。