いつも私達の上にある雲は、季節を知らせたり、面白い形や美しい景色を見せてくれたりと、ささやかな楽しい時間をくれる存在です。
一方で、集中豪雨や大雪などの甚大な災害を起こしているのも雲。
雲や天気の知識は、「いつも」と「もしも」をつなぐ大切な防災知識のひとつでもあります。
今回は、雲についてもっと知りたい!ということで、気象予報士としてご活躍中の井坂綾さんにお話をうかがいました。
災害を起こす危険な雲から、日常のちょっとしたトラブルのことまで、ママが知りたい天気の疑問にお答えいただきます!
取材協力:テレビ北海道
教えてくれたのは…
この記事の目次
「もしも」の雲〜災害から身を守るために
▲2020年7月4日午前3時30分/画像提供:(株)
まず気になるのは、最近増えている気象災害のこと。
危険性はわかっていますし、自分たちなりに備えもしています。
でも、何がどうして危険なのか、なぜこんな現象が起きるのか、唐突に子どもに聞かれるとうまく答えられない…!
というわけで、雲と防災の基本を改めて教えていただきました。
近年の豪雨災害の原因、「線状降水帯」の正体は?
最近よく聞く線状降水帯(せんじょうこうすいたい)って、どんな現象なんですか?
積乱雲は、短時間で強い雨を降らせるのが特徴の雲で、通常なら1時間程度で過ぎていきます。
ですが、風向きが変わらずに同じ場所で積乱雲が次々に生まれると、世代交代をしながら長時間強い雨を降らせ続けることになるのです。
「ゲリラ豪雨」、今は予想できます!
これも積乱雲が降らせる雨ですね。
▲積乱雲による局地的な雨の様子。
戦争を想起させるからと一度使われなくなったのですが、最近になってマスコミを中心に再び持ち出されたんです。
間違いというわけではないのですが、私が予報をお伝えするときは「短時間に降る激しい雨」などと表現しています。
ゲリラ豪雨という言葉が使われはじめたのは1970年頃。
当時は観測網が今ほど発達していなかったため、「リアルタイムでの観測が難しい豪雨」という意味で使われていたようです。
参考:局地豪雨の解析・予測研究|気象庁気象研究所
天気予報を見るときに注意したい、3つのキーワード
- 大気の状態が不安定
- 前線の活動が活発
- 暖かく湿った空気
1時間に30mm以上の雨が降ると、道路が川のようになったり、土砂災害などのリスクも出てきます。
もしそのような予報が出たら、該当する時間帯の外出は避けた方が良いですね。
どれくらいの雨でどんな影響が出るかは、気象庁のホームページで確認できます。
普段会見しない気象庁が会見をするときには、災害への心構えをしてほしいですね。
自分でこんな雲を見つけたら要注意!
外にいるときに見つけたら注意するべき雲はありますか?
入道雲がさらに成長した姿で、頭のところが平らになっているのが特徴です。
こんなときは、すぐに建物の中に入るようにしてください。
- 空がだんだん暗くなる
- 急に冷たい風が吹いてくる
- 遠くでゴロゴロと雷の音が聞こえる
▲青空も見えていますが、積乱雲の下はとても暗くなっていることがわかります。
いまさら聞けない!?雷が地上に落ちるまで
それが地上へと放電するのが落雷です。
空気は電気を通しにくいため、雷がその隙間をなんとか縫って抜けていこうとしてギザギザの軌道が描かれるんです。
頑張ってるんですよ、雷も。
雹がやんだら外に出てみよう
上空の氷の粒が下に降りてきて、上昇気流で持ち上げられてまた凍って…と繰り返し、大きくなった氷が上昇気流に打ち勝って落ちてきたものが雹です。
半分に切ると、断面が年輪のようになっていて面白いですよ。
「いつも」の雲〜暮らしと天気の豆知識
ここからは、「いつも」のちょっとした困りごとや、素朴な疑問についても教えていただきます!
もう洗濯物を濡らしたくない!要注意の空は?
もし「こんな雲を見たら洗濯物を取り込む」という基準があれば教えてください。
まずはやはり積乱雲です。
風が出てきたり、空が暗くなってきたら早めに取り込むことをおすすめします。
どうしても干したいときは、軒下の内側の方に入れておけば、ひどく濡れることはあまりないと思いますよ。
気候的にも「秋掃除」はおすすめ!
年末年始の忙しさを軽減するだけではなく、気候的にも秋が良いと聞きました。
秋は全国的にも空気が乾燥しているので、水拭きがすぐ乾くというところからもおすすめです。
衣替えのタイミングで、クローゼットや靴箱、押入れなどの換気も兼ねてお掃除するといいですね。
天気によって体調に影響が…気象病との向き合い方
気象病って、何が原因なんでしょうか。
- 気圧
- 気温
- 湿度
ポイントは、調子が悪い日だけではなく、いい日も記録しておくことです。
天気に加えて、そのときの生活スタイルやストレスも記録しておくと体調管理に役立ちますよ。
もし仮に体に熱を溜め込んでしまうタイプで湿度に敏感になってしまう、ということであれば、湯船に入って汗をかく、風通しのいい服を着るなどの対策は考えられます。
気象病と思っていても、裏に別の病気が隠れている場合もあります。 医師の診断を受けた上で、天気が作用している自覚があるのであれば、気象病として向き合うことを考えてみましょう。
子どもの体感気温は冬でも高め?
地面からの距離で気温が違うんですよね。
▲天気予報で使われる気温は、地表1〜2mの高さで計測されています。
暑がるのは平熱が高いからかもしれませんね。
最低気温が3℃くらいでも路面は0℃に近くなりますので、それくらいから凍結の可能性が出てきます。
日本の四季はどこから?
低緯度は高温、高緯度は低温といった南北の温度差によって偏西風が吹きます。
エルニーニョやラニーニャによっても偏西風の位置が変わるので、日本の四季にも影響が出てきます。
天気予報で時々聞くエルニーニョ現象・ラニーニャ現象とは、南米ペルー沖の海水温の変動のこと。
今年はラニーニャ現象(=平年より海水温が低い状態)が起きているため、日本は例年より寒い冬になるかもしれません。
日本に関わるところでは、ヒマラヤ山脈で風が分断される、という現象がありますね。
日本に梅雨があるのは、ヒマラヤ山脈があるからなんですよ。
緯度だけではなくて、周りの地形や偏西風の流れ、いろいろな条件のもとで日本の四季ができているんです。
自分の頭の上だけじゃなくて、スケールを広げて考えてみるとロマンがあって面白いですね!
まとめ〜雲を知って防災に役立てよう
雲について知ると、空を見上げたり、天気予報をチェックするのが楽しくなりますね。
それだけではなく、災害から身を守るための知識にもつながっていきます。
ぜひお子さんと一緒に観察してみてください!
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