2020年以降に猛威を振るってきた新型コロナウイルスも、2023年には感染法上の「5類」に移行し、行動制限もなくなりました。
引き続き警戒は必要ですが、思い切った遠出がしやすくなったことは確か。
家族で旅行して、新しい土地で見聞を広めることも、子どものためにはとても良いですよね。
そんな家族旅行で予定に迷ったら、防災を学べる施設を候補に入れてみるのもおすすめ。
自然と、その土地ならではの歴史や文化も学べます。
今回は、家族で淡路島旅行に行ったスタッフ・ノマリが、
ぜひ行きたいです!!!
と、夫の提案に食い気味に乗っかり、小学生の子ども2人と「野島断層保存館」に立ち寄ったときの様子をレポートします!
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この記事の目次
野島断層保存館ってどんなところ?
野島断層保存館は、淡路島にある、阪神・淡路大震災の爪あとを保存・公開している施設です。
野島断層保存館を始めとした一帯は、震災を風化させないこと・未来に活かすことを目的に、北淡震災記念公園(ほくだんしんさいきねんこうえん)として整備されています。
「野島断層」とはなにか
野島断層保存館には、その名の通り「野島断層(のじまだんそう)」が、震災当時のままの形で保存されています。
地震の原因が、プレートや断層であることはよく知られていますよね。
「野島断層」は、阪神・淡路大震災の原因となった活断層のうちの1つです。
check!
日本には、周辺海域も含めて、わかっているだけでも約2,000もの断層があるとされています。
活動度や社会的な影響から「主要活断層帯」と位置づけられたものだけでも114あります(2024年6月現在)。
どこにどんな断層があるかは、地震研究調査本部(文部科学省)や活断層データベース(産総研)、国土地理院などのサイトで確認できますよ。
阪神・淡路大震災のきっかけとなった、兵庫県南部地震の震源は、明石海峡の地下16キロの場所で、野島断層保存館からは少し離れています。
しかし、
- 地震の運動(右横ずれ)と断層の傾きが一致したこと
- 一帯の活断層の中でも、特に野島断層で顕著な動きが見られたこと
などの理由から、淡路島側では野島断層が震源であると確定されたそうです。(※1)
このときに発生した大きな地面のズレが、そのままの形で保存・公開されているのが、野島断層保存館になります。
淡路島の北部、明石海峡大橋から車で20分
北淡震災記念公園および野島断層保存館は、淡路島の北部・兵庫県北淡町小倉地区(現:淡路市小倉地区)にあります。
北淡町は、神戸と並んで震度7を観測した場所です。
公共交通機関では行きにくい場所なので、行くなら車がおすすめです!
駐車場は無料で、第一駐車場と第二駐車場あわせて200台駐車可能だそうですよ。
交通アクセス
- 神戸淡路鳴門自動車道の北淡ICより約10分
- 神戸淡路鳴門自動車道の淡路ICより約20分
※地図上は、北淡ICと淡路ICの間に位置する東浦ICの方が近く見えますが、山越えの峠道になるため、淡路ICの方がおすすめなようです。 - 「道の駅あわじ▼」から約20分
- あわ神あわ姫バス(淡路市生活観光バス) 震災記念公園施設前バス停から徒歩約7分
野島断層保存館の見どころ
野島断層保存館のメインは、約140mにわたる地面の大きなズレです。
約10kmにおよぶ野島断層のうち、大きくズレた地面が観測できる箇所が約185m、さらにその一部を保存した形になります。
これだけ聞くと、
と思われるかもしれません。
でも、ただの地面ではなく、その上で暮らしていた人々の生活が見えるのが、野島断層保存館の大きな特長です。
正直言いますと、私も「子どもたちが飽きてしまったら、外の公園で遊んでいてもらおう」と思って入館したのですが(笑)、子どもたちは意外なほど真剣に見ていました。
断層の一部が掘り下げられていて、模型ではないリアルな断層の断面を至近距離で見られるのも、野島断層保存館ならではの展示です。
のちほど詳しくレポートしています。
国の天然記念物に指定されている
野島断層保存館は、震災から3年後の1998年4月にオープンしました。
その3か月後、野島断層は国の天然記念物に指定されています。
わが国を代表する自然現象である地震現象と断層活動を理解する格好の場として,天然記念物指定し保存を図ろうとするものである。
ー文化遺産オンライン より引用
天然記念物なので、地図記号だと、三角形に配置された黒い点で表されますね。
阪神・淡路大震災とはどんな地震だったのか
ここまでは野島断層について解説してきましたが、あわせて阪神・淡路大震災についても簡単におさらいしておきましょう。
はじまりは「兵庫県南部地震」
1995年1月17日(火) の午前5:46、兵庫県の南部を震源とした大地震が発生しました。
阪神・淡路大震災のきっかけとなったこの地震を「兵庫県南部地震」と呼びます。
check!
「震災」は、地震によって起こったさまざまな災害をまとめて表します。
よって、現象としての地震だけを指すのであれば「兵庫県南部地震(気象庁による正式名称は『平成7年(1995年)兵庫県南部地震』)」、その後の被害も含めて言うときは「阪神・淡路大震災」になります。
ちなみに、「東日本大震災」のきっかけとなった地震は「東北地方太平洋沖地震(同『平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震』)」です。
初の「震度7」
地震のマグニチュードは7.3、最大震度は7でした。
気象庁の震度階級に「7」が導入された1949年以降、実際に震度7が観測されたのは初めてのことだったそうです。
【関連】立川防災館で震度7の地震体験!
初の「都市直下型」
地震の規模もさることながら、近代的な大都市部で初めて発生した直下型地震であることが、その被害を大きくした要因の1つです。
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地震には、大きく分けて2つのタイプがあります。
- 直下型地震
:内陸部の断層で発生する地震のこと。内陸型地震あるいは活断層型地震とも呼ばれる。
(例:阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、熊本地震、能登半島地震、首都直下地震(想定) など) - 海溝型地震
:プレートの境目付近で発生する地震のこと。津波を伴うことが多い。
(例:関東大震災、東日本大震災、南海トラフ地震(想定) など)
直下型地震の特長
直下型地震は、私たちが生活する地盤の下で発生するため、地震の揺れの影響を受けやすくなります。
震源が浅いため、緊急地震速報が間に合わないこともあります。
同じく直下型だった新潟県中越地震で被災したモデルの西山茉希さんも、突然の縦揺れで何もできず、なぜか地面を押さえようとしていた、とおっしゃっていました。
海溝型地震が数十年から数百年という短い周期で起こるのに対し、直下型地震の大きな地震は数千年〜数万年単位という長い周期と言われています。
秀吉との意外な関係
野島断層は、淡路島の北部〜神戸市北部の六甲山に伸びる六甲・淡路島断層帯の一部にあたるのですが、実はこの断層帯、歴史に名高い慶長伏見地震の原因にもなっています。
慶長伏見地震とは
慶長伏見地震が起こったのは1596年、時の権力者・豊臣秀吉が亡くなる2年前。
隠居するために建築していた伏見城が崩れたことで知られています。
大河ドラマ「真田丸」でも描かれていましたね。城内だけで数百人、京の町でも1,000人以上が犠牲になったそうです。
1596年の慶長伏見地震のときに野島断層も動いていたら、阪神・淡路大震災は起こらなかったのでは、とも言われているそうですよ。
ボランティア元年
震度7かつ都市直下型地震の甚大な被害は、連日大きく報道されました。
その結果、阪神・淡路大震災では、全国各地から多くのボランティアが駆けつけたことで知られています。
- 過去に例を見ないほどの多くのボランティアが駆けつけた
- それまでボランティアの経験がなかった学生や社会人なども多く参加した
- ボランティアが行政を補完する重要な役割を果たした
以上のことから、阪神・淡路大震災の起こった1995年は『ボランティア元年』と呼ばれています。
見学レポ!野島断層保存館へ行ってみた
そんな、大きな地震の原因となった断層を、実際に見てみましょう。
阪神・淡路大震災を象徴するあの光景がお出迎え「エントランス」
入ってすぐ目に入るのは、こちら。
阪神・淡路の風景として印象的な、横倒しになった高速道路の再現模型です。
突然のショッキングな景色に、
と混乱した様子の子どもたち。
ということで、まずは入館受付で入館料▼を支払います。
続く壁面に飾られているパネルを一緒に見ながら、とても大きな地震だったことやどんな被害が出たかを話しながら進んでいきました。
写真の展示だけでは子どもはすぐに飽きてしまいますが、途中でこちらを発見!
南海トラフの地形を3Dメガネで見てみよう!というコーナーです。
「実際に起こったこと」だけでなく、「未来への注意喚起」も意識されていることがよくわかりますね。
と、下の子はあまり良く見えなかったようですが、赤青のメガネだけでしばらく楽しんでいました(笑)
地震の力を肌で感じる「断層保存ゾーン」
展示コーナーの奥に進むと、断層保存ゾーンがあります。
むき出しの地面を、その少し上に設置された通路から見下ろす形になります。
割れたアスファルトや水路、そして大きくズレた地面を長く見渡せる展示は、圧巻のひと言。
大地の隆起とゆがみがよくわかります。
ガイドの方の穏やかで丁寧な解説を聞きながら、子どもが大きく反応したのは「この大きなズレがわずか10秒程度で生じた」という点でした。
地震というと、「地面がぐらぐらゆれる」「その上の建物や道が壊れる」というイメージで、地面そのものが破断するイメージはなかったようです。
これだけの地面が、わずかな時間でこれほど大きく動く、その地震の力の大きさが実感できるのは、実物を保存した展示ならではですね。
「断層の間を通る」という経験
断層に沿って設けられた通路の終点には、下に降りるための階段がありました。
断層の一部を掘り込んで断面を見せる「トレンチ展示」という方法だそうです。
横だけでなく、床部分もガラスになっていて、断面を上から至近距離で見ることもできます。
地中で液状化した箇所もはっきりとわかります。
液状化というと、地表に水が浮き出てくるイメージが強いですが、地中でも起こっているんですね。
展示方法の珍しさもあいまって、意外と楽しんでいた子どもたちでした。
「震災体験館」のミニシアターでわかりやすく学ぶ
断層保存ゾーンの隣には、震災体験館があります。
ミニシアターでは、阪神・淡路と東日本の2つの震災についてや、南海トラフ地震への備えに関する映像が上映されていました。
令和の子どもにとっては、大きな地震=東日本大震災
令和の小学生にとっては、東日本大震災ですら生まれる前のことです。
阪神・淡路大震災は、「親世代が、自分がまだ子どもだった頃を回想して言っている」ので、アラフォーママで言う伊勢湾台風のような感覚だと思ってよいかと思います。
子どもたちにとって、メディアで繰り返し特集が組まれる東日本大震災の印象が強すぎて、
「大地震とは、すべて東日本大震災のようなものだ」
「東日本大震災より過去の地震はそれほどでもない」
と思い込んでしまっていることに、初めて気づかされました。
悪気なく、
などと言う子どもたちに、けっしてそれだけではないんだよ、と話をする大切な機会になりました。
非常食のミニ展示も
また、体験館の入口脇には、非常食も展示されています。
せっかく備えるなら美味しいものが良いですよね。
お味が気になる方は、ぜひ『いつもしも』の試食レポを参考にしてみてください!
非常食の試食レポはこちら
体験コンテンツは新規計画中!
見学当時(2023年春)は、起震装置が故障中でシアターのみとなっていましたが、その後、揺れ体験自体も終了したようです。
その代わり、2024年6月現在、新しい体験コンテンツが計画中のこと。リニューアルが楽しみですね!
過去と未来をつなぐ「神戸の壁」
断層保存ゾーンとメモリアルハウスをつなぐ道の途中にあるのが「神戸の壁」です。
1945年の神戸大空襲を耐えた延焼防火壁で、阪神・淡路大震災でも、周囲の建物が倒壊・炎上する中で焼けることなく残ったそうです。
神戸大空襲と言えば、アニメ映画『火垂るの墓』の舞台となったことで知られていますね。
震災を伝える大切な遺構として、神戸市長田区から移設されたそうです。
また別の機会に、話をしてみたいと思っています。
断層の真横に建つ家「メモリアルハウス」
「神戸の壁」の奥にあるメモリアルハウスは、この野島断層保存館ができる前から、この場にあったお宅です。
つまり、断層の真横にあった家、ということです。
断層保存ゾーンと同様に、当時のまま残された庭は、ちょっと理解が追いつかないようなズレ方。
塀や庭の下を断層が走っている様子もはっきりとわかります。
家の中に入ると、当時のキッチンの様子が再現(※)されていて、なかなか衝撃的でした。
※地震後もこの家で生活されていたそうなので、キッチンだけは当時のままではなく再現になっています。
足の踏み場もありませんね。
と、子どもたちもリアルに感じた様子でした。
上に20cm・横に120cmズレたにもかかわらず倒壊を免れたこの家は、鉄筋でかなり強固な作りだったそうです。
家の耐震の大切さがわかりますね。
断層をより詳しく学ぶ「活断層ラボ(グラグラボ)」
メモリアルハウスの隣には、活断層ラボがあります。
少し動きのある展示が見られるコーナーです。
活断層の仕組みや、液状化実験ボトル「エッキー」なども試すことができます。
野島断層は、水平方向に210cm・上下に120cm程度動いているため、こちらの逆断層と、
横ずれ断層の両方の性質を持っていることになりますね。
逆断層が、左右から押される力によって動くのに対し、引っ張られる力によって動くのが正断層です。
物産館で休憩やお土産探しも ※閉店中(2024年末リニューアルオープン予定)
体験コンテンツがどんなものになるかにも寄りますが、野島断層保存館は、展示を見て回る分には1時間もあれば十分でした。
時間に余裕があったら、となりにある物産館で淡路島土産を探すこともできますよ。
淡路島の名産品のほか、防災グッズや非常食も並んでいます。
東日本大震災の復興支援にもなる「宇宙のグミ」もありました。
先日投稿した #野島断層 のある北淡震災記念公園で見つけたおやつをご紹介!こちらのグミを購入すると #東日本大震災 の復興支援になります。ソーダ味とコーラ味なのですが、外袋を開けた瞬間のヨーグルトの香りがすごかったです😳✨中が個包装なのも◎グミ好きな娘たちに大好評でした! #いつもしも pic.twitter.com/taQCHAHbWk
— いつもしも◇ママと子どもの防災 (@itumosimo) April 24, 2023
コーヒーやジュース、ソフトクリームなどもありますので、休憩やおやつに寄るのもおすすめです。
notice
ただ、2024年6月現在は残念ながら休館中。おでかけの際は、最新情報をご確認くださいね。
物産館からお知らせ
物産館は現在休館中です 年内のリニューアルオープンを目指して進行中です
詳細はHPで追って掲載しますー野島断層保存館 公式サイト より引用
ついでに寄りたい!子どもが喜ぶ淡路島おすすめスポット
淡路島には、観光スポットもたくさんあります。
その中でも、野島断層保存館とあわせて、実際に行って子どもが気に入っていた場所をご紹介しますね。
明石海峡を一望!美味しく楽しい「道の駅あわじ」
まずは道の駅あわじです。
明石市側から明石海峡大橋を渡ってすぐのところにあり、本州側から見たときの淡路島の玄関口と言っても良いでしょう。
海峡側には広いテラスが設けられており、明石海峡一望の絶景スポットです。
海鮮メニューが充実していますが、淡路牛を使ったハンバーガーなどもとっても美味しそうでした。
なんとハンバーグの自販機まであるんですよ。
お土産ものも充実しており、淡路島といえば、の玉ねぎスープを買って帰ったら、しばらく子どもが大ハマリしていました。
ペットと一緒、車椅子の方も乗れる大観覧車まであり、休憩ついでに楽しめるスポットです。
「のじまスコーラ」で可愛い動物たちと触れ合う
野島断層から車で5分程度のところにある、廃校を利用した「のじまスコーラ」という施設もおすすめです。
カフェやレストランに、パン屋さんや産直野菜が手に入るマルシェなどがありますが、特に子連れ旅行におすすめなのは「のじま動物園」。
とても小さな動物園なので、小さなお子さんもたくさん見かけました。
ヤギやアルパカにえさをあげたり、モルモットをお膝に乗せたり、ゆったりとふれあいを楽しめますよ。
入場料は、セットになっているえさの種類によって変わります。
一番お手頃価格の干し草付き入場料が1人¥300でした。
13〜14時は動物たちの休憩タイムで入れないので注意してくださいね。
話題の映えスポット「幸せのパンケーキ 本店 淡路島テラス」
野島断層保存館から、車で12分ほど行ったところにあるのが「幸せのパンケーキ」の淡路島本店です。
Instagramなどで、こんな映え写真を見かけたことがある方もいるかもしません。
全席オーシャンビューで、とても気持ち良かったです。
と、子どもたちもリゾート感を満喫していました。
開店前に行っても、すでに数十人並んでいる状態だったので、事前にオンライン予約しておくことをおすすめします。
住んでいる土地のリスクに合わせた学びを
せっかく子どもと旅行をするなら、その土地の特色や特産品などについても知ってほしいですよね。
災害リスクもまた、土地の特色のひとつです。
海の近くなのか山の奥なのか、都市部なのかリゾートなのか…
旅行中に被災する可能性もありますし、ぜひ、旅行前にハザードマップを見たり、関連する施設に寄ってみたりしてみてください。
住所 | 兵庫県淡路市小倉177 |
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利用時間 | 9:00~17:00 |
休館日 | 1月~11月は無休 ※12月下旬に臨時休業あり |
入館料 | 大人730円/中学生・高校生310円/小学生260円 ※30名以上の団体、障害/介添え料金あり ※現金 or 電子マネーPayPay(クレジットカード不可) |
公式 サイト | https://www.nojima-danso.co.jp/nojima/ |