子どもと一緒の避難所生活ってどうなの?リアルな実態が知りたい!

2019年11月8日

体育館の天井
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災害によって自宅が倒壊するなどして住めなくなり、避難所での不便な生活を強いられている被災者のニュースなどを目にする機会は少なくありません。
しかし近年、大規模な自然災害が頻発している日本では、いつだれが同じ状況になっても不思議はないのです。

実際のところ、避難所の生活とはどのようなものなのでしょうか?

食事は? 睡眠は? 寒さ・暑さは? 洗濯物はどこに干す? お風呂には入れるの?

自宅で生活するよりも極度に不便なことはイメージできても、具体的にどんな生活になるのか実態がわからず、不安ばかりが募ります。

そして、大人の避難所生活以上に心配なのが、小さな子どもや赤ちゃんを連れての避難生活です。

ミルクや離乳食の準備はどうすればいいの? おむつ替えや授乳はどこで? 夜泣きが激しい・子どものはしゃぎ声など、周囲に迷惑がかかるのでは?

避難所生活と一口に言っても、災害の種類や被害状況、避難所の施設、各自治体の対応、支援物資の量、一緒に避難する人々など、様々な条件によって避難所生活の実態や快適度は大きく異なります。

それでも実際に、いろいろな場所で避難生活を送ったママたちの実体験を集約することで、今より避難所生活のリアルが見えてきそうです。

基本的な避難所での生活、環境のほか、女性としてのママが困ったことや大変だったこと、小さな子を持つ母親としての困りごとやストレスなどについてまとめました。

*各自治体や避難所、状況によって実情には大きな違いがあるほか、避難所を利用した方それぞれによっても、状況や感じ方は異なります。
このページでご紹介する避難所の実態や困りごとなどは、各地の自治体のマニュアルから見た一般的な手続きの流れであったり、備蓄品や設備であったり、個人の体験談を集約したものですので、すべての避難所に当てはまるものではないことを、ご了承ください。

避難するときに持ち出す防災リュックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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時系列で追う~避難所生活のスタート

自宅から地域の避難所にたどり着くと、まずはどのような手続きや作業があるのでしょうか。

いくつかの自治体の避難所開設マニュアルや、先輩ママの体験を参考に、ざっくりその流れを見ていきましょう。

避難所生活はここから始まる 受け付け・登録

受付体育館公民館コミュニティスペースなどが、地域の避難所として指定されていることが多く、まずは避難所に入ると入り口で、受け付けや避難所利用の登録などを行います。

受け付けに行くと、名前や住所、避難する家族の人数などを聞かれ、その避難所への受け入れに該当する住所かどうかを確認するほか、避難所内のスペースの割り当てなどが行われます。

notice

暴風雨の真っ最中や大地震直後などの一時避難時には、該当住所でなくても(帰宅困難者など)受け入れてもらえる場合が多いですが、被災後に避難所で生活する二次避難になると、自治体がその避難所に割り当てている住所に住んでいる人以外は、受け入れてもらえないことがあります。

受け付けと同時、あるいはその後に、詳細な避難所利用の登録を行います。

避難した家族全員の名前、年齢、血液型のほか、既往症や食物アレルギー、避難生活で心配なこと(離乳食が必要な幼児がいる、足が悪いのでトイレなどに移動するのが大変、などなど)を書き込むスペースがある場合も。

この登録は、別々に避難した家族を探す問い合わせの際などに利用されるほか、避難者数・被災状況の把握や食事や支援物資の手配、行方不明者の確認などのために自治体が利用したりします。

先輩ママの体験談

困った顔の女性アイコンご主人が単身赴任中だからと、ママ友一家にくっついて避難所にやってきたママと小さな子ども。

台風が通過するまでは、同じ避難所で過ごしていたのですが、その後、思いのほか被害がひどく、しばらく避難所で生活することに。

そのとき、ついてきたママと子どもは、別の避難所に該当する住所なので、移動してほしいと言われてしまったようです。

別の避難所に移るのがよほど不安だったのか、ママは子どもを抱きしめてその場で泣き崩れてしまい、ちょっとした修羅場になりました。

結局、単身赴任先のご主人が翌日迎えに来て、しばらくご主人の赴任先のアパートで生活するということで出て行かれましたが、避難所に住所で縛りがあるなんて知らなかったです。

場所選びで便利さに差が出る スペースの確保

避難所イメージ避難所には多くの被災者が集まってくることが想定されるため、家族の人数などによって使用するスペースをあらかじめ区切っている場合が多いようです。

床をガムテープなどでブロックに区分したり、和室の場合は「ひとり1畳」程度を目安に、家族単位で場所の割り振りが行われます。

ほとんどの場合が先着順で好きな区画を選ぶので、避難するなら早めに避難所に行ったほうが、比較的生活しやすいスペースを確保できます。

実は、避難所生活が長くなればなるほど、最初の場所取りが重要になります。

荷物が置きやすく、壁に寄りかかれる壁際で、近くにコンセントがある区画は体育館の真ん中にあるスペースなどに比べると快適度が高い、と避難所暮らしの経験者は口を揃えます。

特にコンセントは、近くにあると何かと便利。コンセントから遠い場所になってしまうと、なかなか使いづらいようです。

point

充電などで先にコンセントを使っている人に「代わって」とは言いにくいので、三又タップなどを持っていき「一緒に使わせてもらえませんか?」とお願いするとスムーズに使わせてもらえます。

毛布などの受け取り

避難所に入ると、まずは暖を取ったり床に敷ける毛布類を支給されるケースが多いようです。

ただし、自治体や避難所によって毛布類の備蓄の数や種類はかなり違うよう。

床に敷く厚みのあるマット(布製・空気を入れるタイプ)+毛布がもらえるパターンや、毛布のみ、ブルーシート+毛布など、いろんな場合があるようです。

備蓄枚数、避難所に着いた順番によっては、人数分の毛布が確保できなかったり、もらえなかった人もいるようです。

先輩ママの体験談

避難所スペース避難所でいただいた「災害支給品」と書かれたビニール入りの毛布は、ゴワゴワ・チクチクする昔っぽいウール製のもので、肌に当たると子どもがかゆがるので、床に敷くくらいしか使い道がありませんでした。

しかも4人家族で支給は2枚

長期戦を覚悟して避難所に身を寄せる場合は、バスタオルやアルミシートタイプの防災ブランケットなど、子どもはもちろん、大人の分も体にかけるものを持参するのがおすすめです。

このほか避難所に入るとき、簡単な非常食(乾パンなど)や飲料水が配布される場合もありますが、ほとんどの場合は、身を落ち着けるスペースの指定と毛布などの防寒&寝具の配布程度。

こうして、避難所暮らしがスタートします。

避難所生活~タイムテーブルと衣食住は?

学校の時計避難所生活がスタートすると、どのような1日を送ることになるのでしょうか。

また最小限の荷物で避難した後の、衣食住はどうするの?

こちらも一般的なケースをご紹介します。

3度の食事を中心に組み立てられるタイムテーブル

被災直後は、避難者が続々とやってきたり、新たな災害が起こる場合もあることから、夜通し避難所の照明はついたまま、ということが多いようです。

しかし、被災して1,2日経過したあたりから、避難所で過ごす人たちのタイムテーブルが壁などに貼りだされ、それに準じた生活がスタートします。

起床、朝食、昼食、夕食、消灯時間が決められ、消灯から起床までは照明が落とされますが、防犯や夜中にトイレなどに立つ人のために真っ暗になることはほぼありません。

食事の時間は決まっているものの、支援物資の到着が遅れたり、食事作りに時間がかかれば当然ズレが生じます。

朝食時と夕食時に、明日の予定や避難者に役立つ情報など、連絡事項の通達や避難所民みんなで体操をするなどのミニ集会的なものが行われることも多いです。

残りの時間は、被災した自宅などの復旧作業に出向いたり、身の回りの品の整理や洗濯、子どもの世話などをする人、避難所から勤め先に出勤する人もいます。

またほとんどの場合は、避難が長期化することになると、避難所内の自治組織的なもの(この後、詳しく解説します)が作られます。

避難所に住む大人はそれぞれ、清掃や食事作り、渉外担当、健康管理などといった役職に分かれ、スムーズに避難所生活が送れるように仕事を分担し、活動します。

大人以上に赤ちゃんや小さな子どもには過酷な食事の実情

離乳食を食べない赤ちゃん食事の内容も、被災の状況や支援物資がどの程度あるかによって、全く違います。

被災直後は、地域が孤立状態になってしまい、備蓄したわずかな食料を大勢の人と分け合って食べなくてはならなかったり、認定以外の避難所では、避難時にリュックに入れてきたアメやチョコレートを少しずつ食べて、2日間乗り切ったなどというまさにサバイバルを経験した人も。

企業や近隣の飲食店から、お弁当などが届けられる場合もありますが、大人数の避難所では数が足りず、食事の分配をめぐってトラブルになるケースも珍しくありません。

避難生活が続くと、食事はボランティアによる炊き出しや避難者らによる自炊も始まりますが、何十人何百人といった避難者のための食事作りには時間も手間もかかります。

いつもは家族分だけの料理を作っている主婦にとっては、大人数のための料理は大変。

赤ちゃんと避難所の食事

赤ちゃん用のミルクについては、粉ミルクや液体ミルクを備蓄している自治体が多いのですが、2,3日もすると底をついてしまいます。

新たに支援物資のミルクが届くまで、赤ちゃんせんべいをお湯でふやかして与えたりしたママもいました。

また、ミルクの場合は、哺乳瓶の消毒がなかなか難しく、悩むママも多かったようです。

ミルクのためのお湯はなんとか確保できても、自家発電機を使って食事作りでフル稼働している電子レンジを哺乳瓶の消毒用に貸してもらうのは気がひけると感じる人も。

離乳食アレルギー対応食についても、少しの備蓄はあっても、長期の避難生活ができるほどの量がある避難所はほとんどありませんでした。

対応が難しくなってくると、泣く泣く避難所を出て、ママと子どもだけが被災地外に引っ越したり、知人宅などに身を寄せるケースも多いようです。

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サイズ、洗濯、下着……。衣類関連の悩みも、なかなか深刻

リュックに詰め込んだ衣類着の身着のままで避難しているため、子どもの着替えは何枚かあっても、大人で着替えを持参している人はごく少数。

避難所の備蓄品にも、大人の衣類はほとんどないのが実情です。

数日たつと、支援物資として上着やジャージなどの衣類が届けられることもありますが、希望のサイズやアイテムを確保するのは、なかなか難しいようです。

とくになかなか手に入らないのが、下着靴下類

支援物資が届いても、手に取るのが恥ずかしいという女性も少なくありませんし、赤ちゃん用の肌着なども数が少なく、苦労した人が多数。

また、女性ものの下着は洗濯しても避難所内に干す場所がなく、とても困ったという声が多く聞かれました。

アウターや子どもの服は、自分のスペース周辺に干せても、さすがに下着は干しにくいですよね。

避難生活が続くと、少し遠くのお店で衣類を調達することができるようになりますが、汚れ物の洗濯問題は、避難生活が続く限り解消されにくいようです。

先輩ママの体験談

落ち込んでいる女性アイコン着替えもなくお風呂にも入れなかったので、最初の一週間は体がベタベタしてとても不快でした。

ボディ用のウエットシートなどで体を拭き、下着にはおりもの用シートを貼り付けて、それを交換する方で乗り切りました。

人目のある避難所では下着を干す場所がなく、盗難に遭うのもイヤだったので、週に1度程度、遠くのコインランドリーに行って下着などを集中的に洗濯

乾燥機にかけると縮んだりする心配もありましたが、それ以外に方法がありませんでした。

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ぐっすり熟睡するのは難しい睡眠環境

夜の体育館ザコ寝状態の避難所では他の人のいびきや寝息などが気になって、なかなか安眠できないようです。

また、子どもの夜泣きや夜間の授乳・おむつ替えなどで周囲の人の安眠を妨げてしまうのでは、と気になって、ストレスが溜まったママも多くいました。

避難生活が続くと、体育館のような広いスペースを家族ごとに段ボールで間仕切りするなどして、少しずつプライバシーが守れるようにはなってきます。

そうなると、逆に夜間にこっそり若い女性のスペースに侵入するといった事案が起こったり、盗難が起こりやすくなります。

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先輩ママの体験談

避難所での寝かしつけ夜、照明が明るいままで眠るのは子どもにとっても大変です。

うちの子は、最初なかなか寝付けず、睡眠不足になってしまい、日中もぼーっとしたり機嫌が悪いことが多くなりました。

柔らかいタオルでアイマスクを作ったり、段ボールなどを利用して、暗がりを作るようにしてやっと改善しました。

日常生活関連の不便や困ったこと

避難所での生活は、避難所で分担する仕事のほか、自宅の片付けや情報収集、買い出しなどなにかと忙しいですが、やはり狭いスペースが居住場所になっているため、運動不足になりがち。

朝、みんなでラジオ体操やストレッチを行うなど、体を動かす機会を積極的に作る避難所もあるようですが、それでも避難所生活では運動不足が気になる人が多いようです。

運動の時間

また、狭い空間で集団生活をするため、インフルエンザなどの感染症もあっという間に広まってしまいがち。

衛生面でも清潔とはいえないことからも、病気や抵抗力・体力の低下に悩む声も多く聞かれました。

女性ならではの悩みとしては、支給される生理用ナプキンの数が不足しても追加でほしいと言い出せない、化粧水などが欲しくても「贅沢」だといわれそうで、要望できないと感じた人が多いようです。

トイレは、大人数が利用する上、断水で水が流れない場合も多く、臭いや汚れもひどく、女性用のトイレの数が圧倒的に足りなかったり、中には男女共用のトイレしかなくて、困ったという実例もありました。

そして普段なら毎日入れるお風呂に入れないというのも、大きなストレス。

なかには1か月近く湯船につかることができなかったという避難所の方も……。

いざというとき、命を守ってくれる避難所ですが、やはり「避難所に行きさえすれば、なんとかなる」「避難所でならまあまあ快適に生活できる」ことを望むのは難しそうです。

先輩ママの体験談

困った顔の女性アイコン強い近視の私は、避難時にコンタクトで家を脱出。

土砂崩れの心配があったので、子どもを抱いただけで、何も持たずに飛び出しました。

避難所にはコンタクトの保存液もないし、そもそも使っていたコンタクトは1日ごとに使い捨てるタイプだったため、翌日からとても困りました。

片付けなどに忙しく、なかなかメガネを作りにも行けず3週間ほど不便な暮らしを続けていましたが、ボランティアでメガネ店の方が来てくださり、無料でメガネを作ってくださったのは、本当にありがたかったです。

避難所での育児環境・設備~現状は厳しいけれど、改善の傾向も

抱っこひもと赤ちゃん小さな子どもや赤ちゃんを持つママにとって、避難所の育児環境やどのような設備があるのかは大いに気がかりなところです。

残念なことに、避難所生活では育児のための環境、設備の充実度は、かなり厳しいというのが実情です。

ほとんどの場合、避難所開設時にはおむつ替えや授乳のための専用スペースがなく、ママたちは苦労するようです。

ミルク用のお湯を沸かして適温にキープする調乳ポットや消毒のための機器は、まず期待できません。

備蓄のオムツにしても数は足りないし、サイズにバリエーションがなく、おむつ替えの回数を減らしてしのいだことによる、おむつかぶれに泣くママも。

もちろん、20数年前に発生した阪神大震災のときに比べれば、避難所の備蓄品も育児に関するケアも進歩はしているのですが、まだまだママの望む最低限のレベルにも達していないというのが実情です。

なかには育児ママに嬉しい充実の避難所も出現

保育士さんと赤ちゃんしかし近年、こうした避難所における乳幼児のケアに力を入れた取り組みを行う自治体やNPO活動も増えてきています。

最先端を行く妊婦と乳児のための専用の避難所 東京都文京区の場合

東京都文京区では、被災した妊産婦や乳児の保護を目的に「妊産婦・乳児救護所」を設置。

区内の大学と提携し、主に女子大などを妊産婦や乳幼児専用の避難所として開放してもらうことにしました。

女子大だけに女子トイレの数が確保されているほか、実習設備としてベッドや入浴施設を兼ね備えている大学もあります。

また、福祉・介護系を持つ大学は学生が赤ちゃんや妊産婦のケアに協力してくれます。

大学病院等とも連携し、妊産婦のケアも行います。

協定を結んだ大学には、粉ミルク、アレルギー用粉ミルク、紙おむつ、お産セットなどの備蓄も行い、定期的に訓練や研修なども行っているそうです。

熊本地震では、小さな子どもがいる家庭専用の避難所設置も

熊本地震では、小さな子どもを安心して遊ばせられるスペースのある避難所や、妊産婦や1歳未満の子どもがいる親子が利用できる専用避難所などが設置されました。

NPOによる「赤ちゃん一時避難プロジェクト」などの取り組みも

東日本大震災、熊本地震の際には、NPO法人による赤ちゃんや乳幼児と母親ら家族を、安全な土地へ一時的に避難させるプロジェクトが行われました。

過酷な避難所での生活では命の存続にかかわる赤ちゃんとママのために、被害がなかった温泉地などで、一時的に避難生活を送れるようにする取り組みです。

温泉地などでの滞在費用や食費、被災地から温泉地までの交通費などもNPOが企業や自治体などから集めた資金によって支援。

その他の避難所でも、育児環境は少しずつ改善中!

その他の避難所でも、避難者の要望や運営スタッフのアイディアを生かし、小さな子どもを持つ家族のために、避難所の1室を専用の居住スペースにして、ママの負担軽減や他の被災者のストレス軽減に役立てたという経験談が、いくつか見受けられました。

避難所生活では、各自に仕事が割り当てられる

避難所を運営する人たちタイムテーブルの説明などでも触れましたが、長期の避難所生活では、避難者と自治体の担当者などが共同で、避難所を運営していく形式をとります。

中心となって避難所の運営を行い、生活全体の決まりを作ったり、各種ボランティア団体と交渉したりする運営委員が中心となって、避難所の生活を円滑にするために必要不可欠な清掃や食事作り、渉外担当、健康管理などといった役職に分かれ、スムーズに避難所生活が送れるように仕事を分担し、活動します。

ただ、すべての避難所で役割分担がうまくいくわけではありません。

先輩ママの体験談

微笑む女性アイコン当初決まった運営委員(全体の運営を決めていく役柄)は全員男性で、女性は主に清掃や食事作りの役柄に回されました。

女性用の更衣室がなかなか設置されなかったり、支援物資の子ども用品に偏りがあることから、ママのリーダー的存在の方が「ぜひ運営に加えてほしい」と要望を出し、がんばってたくさん意見を言ってくれました。

男性運営委員も、女性や子どもを軽視しているわけではないのでしょうが、実情やニーズが全く分からない人だけが運営の中心にいたことで、スムーズに運ばなかったようです。

災害という非常時でも、しっかり自分たちの要望を伝えていく姿勢は、ママたちにも必要だと思いました。

まとめ 快適な避難所生活のために、女性・ママならではの視点で遠慮なく要望を伝えよう

防災訓練に参加する女性今回、当記事を書くにあたって全国各地の自治体の避難所開設マニュアルを調べてみました。

そこには備蓄品や避難所開設の手順、運営法などが詳しく書かれていましたが、どこの自治体もほぼ同じ……。

そして、現在ほぼ定型となっている避難所マニュアルに女性の視点が足りないことを痛感しました。

もしも女性が避難所開設マニュアルの作成に参加していたら、避難所開設時に女性用の更衣室のスペースをあらかじめ作るなどの案は当然、組み込まれるはずです。

大規模災害が頻発する昨今、自治体も避難所での避難生活の質の向上への取り組みを行っているようですが、男性には気づきにくい女性やママのニーズを、平常時から行政に伝えていくことが重要なのでは、と感じました。

一度、マニュアルに書き込まれ明文化されさえすれば、当たり前のこととして女性用更衣室が設置されたり、アレルギー用ミルクが備蓄品としてリストアップされたりするようになるのです。

いつ自分が避難所生活を送るかもわからない私たちは、みんなで問題提起をして、避難所の環境改善を働きかけていくべきなのかもしれません。

また数多く集まったママの体験談からは、避難所で生活する女性やママの多くが、困っているのに我慢しすぎているようにも感じました。

「大災害が起きているのに、○○が欲しいなんてとても言えない」という気持ちは理解できます。

けれども、ほかのママや女性のためにもあえて要望を伝えることにより、避難所生活はママや女性、そしてなにより子どもにとって快適なものになります。

「迷惑ばかりかける子連れだから」と遠慮しないで、子どもを持つママが運営スタッフに加わったり、自分の要望を積極的に伝えることは、自分と子どもを守ることにつながります。

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イラスト:土界谷リサ

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odaao

女性誌・子育て誌・医療情報誌などでフリーライターとして執筆する40代ワーキングマザー。東日本大震災時の激しい揺れとその後の恐怖がいまだぬぐえず、今も地震の非常警報音に毎度飛び上がり、心臓バクバク。絶賛反抗期中の中学生の息子が震度4程度の地震では目を覚まさない図太さを、少々うらやましく感じる今日この頃。

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