被災時に個人が受けられる支援とは?その内容と申請方法

2020年6月15日

支援の手
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どんなに防災意識が高く、日ごろから備蓄や防災対策を行っていた人も、実際に災害によって甚大な被害を受けると、冷静ではいられません。

災害によって今までの暮らしが一変し、これからどうやって生活すればよいのかわからない……。

そんな、先の見えない不安な事態に呆然としてしまうのは当然です。

しかし、災害により健康や生活の基盤が損なわれるような被害に遭ったときには、様々な公的支援制度が被災者をサポートしてくれることを忘れないで!

わが国には、一般的な生活再建のほか、教育や保育、医療・福祉、就労など様々な被災者支援の制度が準備されているのです。

ただし、こうした支援制度を受けるには、基本的に「自分から申請手続きをする」ことが必須。
ぼんやり待っているだけでは、支援を受けられません。

「いざというとき」のために整備されている公的支援制度なのですから、利用できる条件を有しているなら積極的に申請を行いましょう。

この記事では、災害時に受けられる各種支援制度申請に必須な「罹災証明書(り災証明書)」の取り方、そして支援制度の種類とその具体的な支援の内容などについて見ていきましょう。

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被災後、真っ先にすべきは被害状況の撮影と「罹災証明書」の申請

窓口での申請イメージ

この章のポイント

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※証明書取得後、どんな支援があるのかを知りたい方はこちらへジャンプ▼

いろいろな公的支援の申請手続きをするとき、ほとんどの場合で必要になる大切な書類が「罹災証明書」です。

被災後にはいろいろな手続き、申請が必要になりますが、まず最初に行うべきなのが「罹災証明書」の申請。

これは、被害を受けた主に家屋の損傷程度を自治体が判定するものなのですが、この判定をもとに公的支援のレベル(支給される金額や受けられる支援の程度・種類)が大きく左右される非常に重要なものです(詳しくは後述します)。

このとき必要になるのが、被害状況が詳細に把握できる証拠となる現状写真です。

災害後の片付けの記事でも強調しましたが、被災で家屋や家財などに被害が出た場合は、片付けや修繕を行う前に、必ず被害状況の写真を撮ります。

写真撮影が難しい場合は…

被害が大きく家の中に入れない撮影ができないなどの場合の対応は「申請するときに必要なもの」で解説しています。

被害状況の写真を撮っておくと、自治体から派遣されて現場で被害判定を行う調査員に被害状況を正確に把握してもらい、被害の種類や大きさを納得できる形でしてもらうのに役立ちます。

泥を洗い流したり、修繕を行った後では、被害の状況を過少に評価されてしまう恐れがあるため、必ず片付けなどを始める前に撮影しましょう。

規模の大きい災害では、被災後すぐに調査してもらえるとは限りません(調査前に片づけを始めなくてはならないこともあります)し、場合によっては現地に調査員に来てもらうのではなく、書類に撮影した被害写真を添えて役所に提出すれば、証明書を発行してもらえるケースもあります。

瓦が落ちたり壁にひびが入った、浸水して土砂が家の中に入ったなどの様子を、家の外側・内側から角度を変えたり目線の高さを変えるなどして何枚も撮影。

浸水した場合は、壁などに残った水の跡を、メジャーなどを当てた状態で撮影しておくとよいです。

罹災証明書とは?

災害によって被害が生じた場合、被災した市区町村などの自治体は国の基準に基づいて被害調査を行います。
被害を受けた家屋に対して、以下の区分に分けて判定します。

  • 全壊
  • 大規模半壊
  • 半壊
  • 一部損壊
  • 床上浸水
  • 床下浸水
  • 全焼
  • 半焼

この判定の結果を証明する書類が「罹災証明書」です。

これは主に住居に関する被害の公式な証明になります。

ただし、一部の自治体では被災した人の人的被害、農業用施設・設備の被害も対象に加えています。

罹災証明書は、被災時に受けられる支援金や義援金、税金の減免などといった公的支援を得るために、必要になります。

また、この被害認定は行政の支援制度に関するための認定で、民間の損害保険などの「損害査定」とは異なります。

罹災証明があれば、損害査定も同等になるわけではないことも、覚えておきましょう。

ただし被害状況の詳細な写真は、民間の損害保険の「損害査定」や、企業や組合からの「お見舞金」の申請にも非常に役立ちます。

罹災証明書と被災証明の違いとは?

被災後、公的支援の申請には欠かせない「罹災証明書」ですが、実は国によって統一された書式が規定されているわけではありません。

また罹災を証明する対象も市区町村などの自治体によって、住居だけを対象にする場合や建造物全般や農業用施設・設備の被害までも対象にする場合、また建物だけでなく人的被害も「罹災証明書」の対象にするケースなどがあります。

さらに「罹災証明書」のほかに、災害によって被害を受けた住民であることを証明する「被災証明書」という書類を発行する自治体もあります。

これらは自治体によってバラバラのため、実際に被災してしまった場合は、自分の住む市区町村に直接問い合わせを行って、罹災証明書の被害の対象はどのようなものか、また罹災証明書以外に被災証明書なども発行されるかどうかを確認することが大切です。

この記事では、ひとまず公的支援申請に欠かせない罹災証明書(主に住居に関する被害の証明)について説明します。

発行される対象になる災害

壊れた家ではこの罹災証明書は、どのようなときに発行されるのでしょうか。

罹災証明書は、災害対策基本法に基づいて発行されます。
罹災証明書が発行される対象となる災害は、国や県が指定した災害のことを指します。

具体的には、以下の原因により、住家等に被害が発生した場合。

  • 暴風
  • 竜巻
  • 豪雨
  • 豪雪
  • 洪水
  • がけ崩れ
  • 土石流
  • 高潮
  • 地震
  • 津波
  • 噴火
  • 地滑り
  • その他の異常な自然現象
  • 大規模な火事
  • 爆発

罹災証明書は基本的に、お住いの市区町村に申請しますが、火災に起因するもの(爆発を含む)に限っては、住んでいる地区の消防署に申請する場合もあります(市区町村によっては、火災も含め罹災証明書は一括して各役所で受け付ける場合もあります)。

基本的には「住居」が損壊した場合に発行される

先ほどもご説明した通り、罹災証明書が発行されるのは、原則として生活している「住居」が損壊した場合です。

ただし自治体によっては被災した住民の「人的被害」や「農業用施設・設備」などの被害も対象にしているケースがあります。

ここでは「住家の被害」と「人的被害」の被害程度の判定区分についてみていきましょう。

住家の被害

罹災証明書の対象は、持ち家か賃貸かを問わず、人が住居している家屋建物という意味の「住家」です。

倉庫やガレージ、人が住んでいない事務所や店舗などはその対象ではありません。

住家を調査し、被害が認定されたものについて罹災証明書が発行されるのですが、被害の程度は以下の通りに区分されています。

  • 全壊
  • 大規模半壊
  • 半壊
  • 一部損壊
  • 床上浸水
  • 床下浸水
  • 全焼
  • 半焼

人的被害

  • 死者
  • 行方不明
  • 重傷
  • 軽傷

罹災証明書の申請が行える人

罹災証明の発行申請は、被災した住家の居住者、または所有者が行います。

被災者以外の人が代理人となって申請する場合は、委任状が必要。

ただし、被災者と同一世帯の人や三親等以内の親族、また法定代理人などが申請を行う場合は、委任状が不要としている自治体もありますが、その場合は戸籍謄本や住民票など被災者との関係がわかる書類が必要となります。

賃貸でも罹災証明書は取得できる!

さまざまな公的支援を受けるとき必要になる「罹災証明書」は、住家に対しての罹災証明ではありますが、その家の持ち主だけでなく、賃貸契約などを結んでそこに住んでいる人自身が申請を行うこともできます。

被災した時は、大家さんや管理会社などとも相談したうえで、自分の被災を証明できる罹災証明書を確実に申請し、発行してもらえるように手続きを行いましょう。

申請するときに必要なもの

印鑑さてここからは実際に罹災証明書を発行するまでの具体的な方法を解説します。
まずは申請に必要なものをリストにしました。

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ほかにも自治体によって、申請時に必要となるものがある場合があります。
自治体のホームページをよく確認して、申請に必要なものを準備しましょう。

「被害状況が確認できる写真」の注意点

  • 被害が甚大で、撮影・プリントアウトする機材がない
  • 自宅を撮影するのは危険
  • 自宅から離れた場所に避難している

上記のように、自宅が大きな被害を受けて撮影が難しい状況に置かれている人もいるかと思います。
被害状況の写真はあるに越したことはありませんが、自己判定方式ではない通常の罹災証明書の申請に必須ではないため、無理に撮影を行う必要はありません

大規模な災害が起きた際、自治体も柔軟に対応してくれる場合が多くあります。
写真だけではなく、身分証明書や印鑑も「ないから申請できない…。」とあきらめないで!
まずはお住まいの市区町村のホームページや役所で手続きを確認してみましょう。

罹災証明書を取得する流れ

さて、実際に罹災証明書を取得する流れを見てみましょう。

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注意! 自治体が被災家屋を現地調査するのは同じでも、応急危険度判定と罹災証明書の認定は別物

災害時の現地調査には、この罹災証明書発行のための調査以外に、被災直後に行われる「応急危険度判定」の調査があります。
これは地震などが起きた時、被災した建物の危険度を調べるものです。

この2つは混同されがちですが、まったく別のもの。
罹災証明書の発行を求める場合は、役所に申請して調査を依頼しなければいけません。

応急危険度判定については、こちらの記事で詳しく説明しています。

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注意!罹災証明書の申請には期限がある

カレンダー罹災証明書の申請には、期限があります。
この申請期限を過ぎてしまうと、罹災証明書の発行を受けられず、公的支援を受けることができなくなってしまいます。

やむを得ない事情で、期限内に申請ができなかった・できそうにない場合は、救済措置が認められることもありますので、あきらめずに役所に相談してみましょう。

自治体(災害の規模)により、申請の期限にはバラつきがありますが、多くの自治体は災害時から3か月としている場合が多いようです。

しかし中には、1か月程度のところもあれば、半年以上も期限がある場合もあります。

災害時には、お住いの自治体のホームぺージや広報などで、申請期間について広報されることが多いので、意識して確認しましょう。

証明書発行に時間がかかるようなときは即日発行の「罹災届出証明書」の発行を申請

罹災証明書発行の流れの項でも説明した通り、罹災証明書の発行には1週間かそれ以上の時間がかかります。

しかし罹災証明書は、公的支援の申し込みや保険金請求にも必要な大事な書類です。

なるべく早くこうした手続きを行うためには「罹災届出証明書」の発行を申請しましょう。

少々ややこしいのですが「罹災届出証明書」は、「罹災証明書の発行を申請したことを証明する書類」です。
これは罹災証明書の申請をした日に、即日無料で発行してもらえます。

正式な罹災証明書の発行が後日になっても、この罹災届で証明書を提出することで、各種の公的支援の申し込みや保険金請求などを受け付けてもらえるケースも多いのです。

できるだけ早く、生活再建のために支援を受けたいという場合は「罹災届出証明書」も大いに活用しましょう。

被災したらどんな支援が受けられるの? 何をしてもらえるの?

ハートを差し出す人ここからは実際に、被災した時にどのような支援が受けられるかをご紹介します。

支援の中には、国が行う公的支援、民間あるいは国民の善意による民間支援などがあります。

支援制度は多岐にわたり、ここですべてをご紹介することはできませんが、主に生活面(経済面)に関する支援と子供に関する支援について、住宅面に関する支援をメインに見ていきましょう。

また、このような支援には、被災者であれば無条件に受けられるものと、被災者自身が申請することにより支援が受けられるものとがあります。

なお各支援の詳細は、災害の規模やお住いの市区町村によって異なるので、実際に支援を受けたい場合は、都道府県や市区町村へお問い合わせください。

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被災直後の支援(支援物資、人的支援など)

被災直後、国からの支援としてまずは「プッシュ型」と呼ばれる支援が始まります。

これは避難所に設置される緊急支援物資などで、簡易トイレやベッド、毛布、非常用食料などです。
また、子供に対しての学用品や教科書などの無料供与も行われます。

同時に個人や団体からの支援物資として、食料、医療、生活用品などの支援も始まります。

そして人的な支援も被災直後から、スタートします。

被災した家屋などの片付けのサポート、救護など民間の生活支援ボランティアによる支援のほか、
自治体によるカウンセリング医師の派遣などのサポートもあります。

こうした被災直後の支援は、被災者であればだれでも受けることができます。

経済・生活面への公的な資金支援

経済・生活の不安被災後の困窮した生活の状況を支援するため、国や自治体はさまざまな支援制度を整えています。

まずは、経済・生活面への公的な支援についてみていきましょう。

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なお、上記以外にも、経済・生活面の公的支援として「母子父子寡婦福祉資金貸付金」や「年金担保貸付」「労災年金担保貸付」などの制度もあります。

また、生活に現に困窮している場合は、資金の給付、還付、現物支給、現物貸与が受けられる「生活保護」や「生活困窮者自立支援制度」などを利用することもできます。

問い合わせ先:都道府県、市区町村、自立相談支援機関

子供に関する公的支援制度

子供の困りごと子供の養育や就学についての公的支援もたくさんあります。
災害によって家計が苦しくなった時も、子供によりよい教育を受けさせる手立てはたくさんあります。

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住まいに関する支援制度

住居関連の困りごと災害によって損壊した住家を再建したり、住めなくなった家を安全に取り壊して整地したり、住む場所がなくなった場合に仮設住宅などを手当てする支援などを見ていきましょう。

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税金支払いなどの猶予、減免

税金・公共料金の困りごと被災者には、税金の支払いや医療保険料などの減免、支払い猶予などの支援制度が整備されています。主だったものをご紹介します。

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これ以外にも障害福祉サービスなどの利用者負担金の減免などが受けられるケースもあります。

こうした情報は、お住いの市区町村の広報誌やHPなどに掲示されている場合が多いので、どのような支援が受けられるのか、見逃さずにチェックしましょう。

その他の支援

ほかにも被災者が受けられる公的支援には様々なものがあります。

身近なものでは、

  • 粗大ゴミ処理手数料の免除
  • 被災による離職関連のケア(未払い賃金立て替え払い制度など)
  • 再就職の支援
  • 法的トラブルに関する情報提供
  • 中小企業・自営者への支援
  • 安全な地域づくりへの支援

など、たくさんの支援制度が整備されています。

また被災したことによる様々な心配事への相談窓口も、各種設置。

お金の心配から、精神面の不安、人権相談、行政への苦情などいろいろな相談窓口が準備されていますので、悩みごとはひとりで抱え込まず、ぜひこうした公的な相談窓口を利用しましょう。

義援金・支援金・寄付金

一万円札大きな災害が起こると、全国から支援の手が差し伸べられ「義援金」「支援金」「寄付金」などが寄せられます。
これらは実際に被災者となった人たちをどのように支援してくれるのかも押さえておきましょう。

  • 義援金
    被災者に直接、渡されるお金。ただし被災者に平等に渡すために、被災からしばらくたってからの配布となる。
  • 支援金
    被災地で活動するNPO・NGO団体や機関に対してのお金。
  • 寄付金
    被災者支援活動をする団体(自治体やNPOなど)へのお金。公共道路や湾岸の復旧支援事業などに使用されることが多い。

どれも被災者・被災地のために全国から集まったお金・支援には違いないのですが、その使われ方が違います。

被災者本人が実際にお金として受け取れるのは「義援金」となります。

東日本大震災では、義援金受付窓口の役割を担う日本赤十字社に3000億円以上の義援金が集まりましたが、実際に被災者の手元に配分された最初のお金(義援金は期間を区切って、それまでに集まった義援金を被災者に公平に分配していきます)が届くまでは、最短でも数か月かかったそうです。

ありがたいお金ではありますが、被災直後の生活資金に義援金を充てるのは、難しいでしょう。

分配される金額・時期ともに不確定なものなので、生活再建には義援金を考慮に入れず、プランを練るべきです。

まとめ 待っているだけではダメ! 被災支援は、積極的に利用しよう!

手を差し伸べる女性被災して大きな被害を受けたら、誰もが「これから自分たちはどうなってしまうんだろう」と不安に駆られるのは当たり前です。
けれども、調べてみると公的にもまた民間からも、たくさんの支援の手は差し伸べられています。

今回記事を書くにあたり、内閣府が出している「被災者支援に関する各種制度の概要」という資料を精読しましたが、ここでご紹介した以外にも細やかな支援がたくさん整備されています。

ただし被災したからと言って、支援を待っているだけではダメです。

詳しくご紹介した、公的支援申請の第一関門ともいえる罹災証明書の取得を行い、ネットで調べたり市区町村の窓口などで相談をして、自分たちの家族が利用できる支援制度がないかを調べ、積極的にこの制度を利用すべく申請を行うことが重要。

慣れない申請書類を書くのは大変でしょうし、困窮を訴えて支援を求めるのは勇気のいることでもありますが、これは日本に住む私たちの権利です。

利用できるものは上手に利用して、速やかに暮らしを再建し、戻通りの生活を取り戻しましょう。

そして復興後にまた日本のどこかで大きな災害が起こった際には、ボランティアに駆け付ける、義援金を送るなどして、新たに困った人たちを手助けすればよいのです。

子供たちの将来のためにも、あらゆる支援制度を利用して、明るい未来を切り開いていくことこそ、ママとパパの責務です。がんばって!

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女性誌・子育て誌・医療情報誌などでフリーライターとして執筆する40代ワーキングマザー。東日本大震災時の激しい揺れとその後の恐怖がいまだぬぐえず、今も地震の非常警報音に毎度飛び上がり、心臓バクバク。絶賛反抗期中の中学生の息子が震度4程度の地震では目を覚まさない図太さを、少々うらやましく感じる今日この頃。

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