被災すると、遠方から駆けつけてくれたボランティアや全国からの募金・励ましの声など、人の優しさや温かさを再確認する機会は少なくありません。
しかしその一方で、災害に乗じた犯罪者も急増し、被災に加えて犯罪によってさらに辛く悲しい思いをする人も……。
被災時に起こりやすい犯罪から大切な財産や家族を守るため、子供を持つママはどのようなことに気を付け、どのような対策を行うべきでしょうか。
ここでは、ママと子供が被災した際の防犯対策を7か条にまとめました。
この7か条は、日常生活でも犯罪に巻き込まれる可能性を極力排除する大切なポイントばかり。
子供と自身の命と安全を守るために、ママが今すぐ身に着けておきたい大切な「知恵」です。
災害が起こると、どのような犯罪が想定される?
残念なことに、過去の大災害では、多くの被災地で犯罪率が高まりました。
過去の災害で、実際に多発した犯罪がどのようなものかを見ていきましょう。
空き巣、窃盗などの火事場泥棒
過去、地震や台風、洪水などで避難が必要になった災害時には、家族が避難した留守宅を狙った空き巣や窃盗など、いわゆる火事場泥棒の被害が頻発しました。
突然起こった災害では、命を守ることが最優先ですから、貴重品などを持ち出せないまま、避難せざるを得ないケースも多く、そこを狙って空き巣を行うのです。
災害で窓が割れたり急いで避難したことなどで、戸締りが不完全な状態になりやすいという状況に加え、被災者の多くは避難しているため見つかりにくい、家から盗品を運び出しても家人が片づけをしていると思われがち、などと空き巣がしやすい条件がそろっています。
また、荷物の管理がしにくい避難所でも、窃盗の被害が多数、報告されています。
車上狙い
災害時は、車上狙いの被害も少なくありません。
車自体を盗み出すというより、窓を割ったりトランクをこじ開けるなど、荒っぽいやり方で車の中を荒らし、車内の貴重品やトランク内の災害用備蓄品を盗み出すというケースが増えます。
いつもなら安全な住宅地でも、災害時には自宅のガレージにとめた車まで車上狙いの標的になる場合があります。
ボランティアなどを装った悪質業者・詐欺
地震や台風被害などで住宅が壊れた際、ボランティアを装った悪徳業者が突然訪問してきて「すぐに修理しますよ」などと、依頼もしていないのに勝手に工事を行い、法外な料金を請求するトラブルが急増しています。
また、修理を行う契約をしても、工事費全額を受け取った後で、屋根をブルーシートで被う程度の応急処置だけを行い、「本格的な工事は後日になります」と立ち去って、その後音信不通になってしまう事例も。
うっかり騙されてしまいがちなのが「市役所(区役所・保険会社など)の依頼で、無料の緊急調査をしています」などといって、家屋の点検を行い、本当は必要ではないのに「今すぐ修理しないと雨漏りして屋根が傷んでしまう」「今、契約すればすぐに修理ができるが、後日になると、修理依頼が殺到しているので数か月後になってしまう」などと言って、契約を迫るパターンです。
ほかにも片づけボランティアを装った犯罪や、被災地周辺では寄付金・支援金を募る詐欺なども横行しています。
警察官・自衛官・消防隊員を装う犯罪
非常時には心強い助けとなる警察官や自衛官、消防隊員などを装って、犯罪を行うとんでもない事件も起こっています。
「警察官です」「消防隊員です」などと名乗ったり、それっぽい服装をしていると、うっかり安心してしまいがちですが、彼らになりすました犯罪者がいるかもしれないことを忘れずに。
暴力行為
究極の非常時ともいえる被災時には、ささいなことからトラブルが起こり、それが暴力沙汰に発展することも珍しくありません。
こうして起こったトラブルに自分や子供が巻き込まれて、突き飛ばされる、殴りかかられるといった、普段では「ありえない」暴力を受けるリスクも、災害時には高まることを忘れてはいけません。
性被害
非常に残念なことに、災害時には性被害も増加します。
その対象は、若い独身女性だけでなく、ママ世代や中高年の女性のほか、小さな子供であることも少なくないので、ママは自分とわが子を守る防犯意識が必要です。
そして女の子だけでなく、男の子をターゲットにした犯罪者もいます。
夜だけでなく日中も、子供からは片時も目を離さないことが何より大切です。
災害時は、意外な場所で犯罪が起こる! 日中の避難所も安心は禁物!
災害時は、いつもなら安全なはずの場所にも危険が潜んでいます。
小さな子供や女性であるママが犯罪(とくに性被害や強盗など)に遭わないためにも、一見安全そうな場所でも、できる限りひとり(親子だけ)で行動しないよう、心がけましょう。
男の子が男子用トイレに行くような場合も、ママがトイレの外で待つのではなく、できることならパパやおじいちゃん、友人など信頼できる人に、トイレの中まで付き添いをお願いするくらいの慎重さで行動すべきです。
被災時に、特に注意したいのは以下のような場所です。
トイレ
注意していても一人になりがちなトイレ。
犯罪者が潜む場所もたくさんあります。
夜間だけでなく、日中でもトイレに立つときは、なるべく大人2人以上で行動するように心がけます。
夜の避難所
みんなが寝静まった夜間の避難所では、とくに性犯罪に注意が必要。
一緒に避難している周囲の人に気を使って、危険が迫っても声を出しにくいという女性の心情を利用して、体を触ったりわいせつな行為を行う「顔見知り」もいます。
避難所周辺の人気のない場所
避難所となっている体育館の階段の下。夜になると暗くなる場所などにはなるべく近づかないようにしましょう。
常に他人と一緒に過ごす避難所では、少しの間、ひとりになりたいと感じるときもありますが、犯罪予防のためにも人気のない場所には一人で行かないようにしましょう。
昼間の避難所
夜間はもちろんですが、片づけや復旧作業などで大人や男性が極端に少なくなる日中の避難所も、ボランティアなどに紛れて危険な人物が侵入してくることがあります。
認定避難所ではない避難所
自治体が指定した認定避難所ではない避難所には、警官・役場のスタッフの巡回が少なくなるなど、防犯への警戒が手薄になりがちです。
やむを得ず認定以外の避難所にいる場合は、常に防犯役の男性などにいてもらうなどして、犯罪被害を予防しましょう。
家屋
ダメージを受けた家屋の場合、その家族らが定期的に荷物を取りに戻っていることを察した犯罪者が待ち構えている場合があります。
自宅に戻る際も、単独行動はくれぐれも控えましょう。
倒壊した街並みには死角がいっぱい。
自宅付近を歩くときも、警戒は怠らないで。
被害のなかった家屋の場合も、自治体や自衛隊、支援者、修理業者を装って建物に入り込む犯罪者もいます。
自家用車の中
自家用車で仮眠をとっているときに、中に入り込まれる事例も少なくありません。
車の中にいるときも必ず施錠しましょう。
夏場の暑い時期も、窓を大きく開けたままで眠るのは危険です。
不審な車
災害時は、重機や自治体などの車両など、いつもは見かけない車両がたくさん街中に止まっています。
その中に不審者が紛れ込んでいることも。
何気なく横を通った瞬間、車の中に引きずり込まる危険があります。
災害時に犯罪から身を守る 防犯対策7か条
危険な場所が増え、いつも以上に犯罪被害に遭いやすい災害時に、子供を持つママが身を守るために心がけたい7つのポイントをまとめました。
被災経験のある先輩ママの体験も交えて具体的にご紹介します。
その1 最新の防犯・防災情報を素早くキャッチ
災害時の犯罪については、自治体などでも厳重に警戒しており、何か事件や不審な案件があった場合は、地域の行政や警察が配信している「防災・防犯メール」などや防災放送などで速報し、注意を呼び掛けています。
まずは日ごろから、地域の「防災・防犯メール」やアプリに登録し、被災時でも最新の情報が入手できる手段を確保しておくことが大切です。
自治体や警察が配信している「防災・防犯メール」は、不審者情報や犯罪情報、防犯啓発情報を含めた内容、所轄警察署や市内各学校からの情報なども速やかに発信しているので、詐欺などに気づきやすくなりますし、付近で不審者情報があればより慎重に行動することができます。
先輩ママの声
地震で被災する直前に、子供が小学校に入学し、学校から地域の『安心メール』に登録するよう話がありました。
学校からのお知らせや、気象関係の注意報などもここから一斉送信されるのですが、被災時には食料の配給情報や不審者の情報なども送られてきて、とても役立ちました。
その2 自宅の防犯
被災直後に避難する場合は、身の安全を確保することが一番なので、できる範囲のところまで戸締りをして避難することが大切です。
その後比較的安全に自宅に戻れるようになったときは、空き巣などの被害を防ぐためにも1度自宅へ戻り、防犯の備えを行います。
ただしこの備えは、力仕事になると予想されるため、赤ちゃん連れでは難しく、また女性ひとりで行動するのも危険なので、できることならパパか、親族の男性などにお願いするとよいでしょう。
具体的には、以下のような作業になります。
- 家の戸締りをしっかり行う
- 窓が割れているような場合は、タンスや書棚などの家具でふさいだり、板を打ち付ける
- カーテンや雨戸を閉める(家の中の様子や留守であることがわからないように)
- 家の周囲に燃えやすいものを置かない(放火や近隣で火災が起こったときの延焼防止)
- はしごや脚立は倉庫に片づけて施錠
留守中はガス、水道の元栓、電気のブレーカーを落としておきますが、長期間家に戻れないような場合は、防犯対策として、電池式の暗くなると点灯するライトなどをつけておくとより安心です。
その3 顔見知り以外の人は身元確認
電気・ガス・水道、など復旧を支援してくれる業者や自衛隊、ボランティアの人などがたくさんいる中で、それらを装って犯罪行為を行う悪質な人もいます。
家に滞在する場合は、呼ばれてもすぐにドアを開けず、まずはインターフォンで話を聞いたり、チェーンをかけたドア越しに身分証の提示をしてもらうなどの注意が必要です。
少しでも不審に思った場合は、自治体や業者の会社などに直接、電話をして確認しましょう。
これは身の安全を守るだけでなく、詐欺被害予防にも効果的です。
また、自衛官の方は単独行動を原則的にしません。
怪しい場合には所属や隊長名などを聞いて答えられない時にはすぐに通報。
先輩ママの声
避難所生活で必要な、こまごまとした荷物を持ち出すために、日中母と私と子供で家に帰宅するとき、避難所スタッフの方に
『女性だけで家にいるときは、誰かが来ても、危険なので出ないほうがいい。復旧作業を行う業者などは必ず連絡してから来るし、自治体などが行う訪問の場合は、留守なら後日、必ずまた来てくれるから』
と注意を受けました。
その4 貴重品は常時身に着けておく
避難所での盗難は、よそから侵入する窃盗犯だけでなく一緒に避難している人を疑うことにもなりかねません。
その後の避難生活で気まずい思いをしないためにも、貴重品は他人の目につく・手が出せる場所に置かないことを徹底しましょう。
常に身に着けておけるウエストポーチや斜め掛けバッグなどの中に、貴重品はまとめて入れて24時間(就寝時も)、肌身離さず保管します。
避難生活中は必要のない貴金属や証書類などは、実家などに送って保管してもらうと安心です。
先輩ママの声
避難所の盗難事件が多いと聞いて、夫の会社(被災していない地域)のそばの銀行の貸金庫に貴重品を預けました。
数万円の現金と健康保険証、運転免許証、普段使うクレジットカード1枚だけを手元に置き、ほかのクレジットカードや銀行カード・通帳、貴金属などは貸金庫へ。
知人は被災した家にも避難所に置いておきたくない古書のコレクションを、駅のコインロッカーに保管したそうですが、使用期限が1日なので、毎日、料金を入れ直しに行くのが大変だったそうです。
その5 防犯ブザー・笛を携帯する
危険が身に迫ったときは、大声で助けを呼ぶのが鉄則ですが、恐怖のあまり声が出ないこともよくあります。
防犯ブザーや笛を首から下げたり身に着けるなどしておけば、もしもの時に助けを呼ぶことができます。
先輩ママの声
小学生の子供には普段ランドセルに着けている、紐をひっぱると大音量で鳴る防犯ブザーを首からペンダントのように下げさせていました。
私は、百円ショップで買った、キーホルダータイプのホイッスルを常にポケットに入れていました。
犯罪対策のほか、余震などで被災した時に自分の居場所を知らせたり助けを呼ぶのにも役立ちますから、被災時にはいつも身に着けておくといいと思います。
その6 服装や防災グッズの色にも注意
性犯罪から身を守るには、犯罪者が「女性」と認識しにくい(ターゲットになりにくい)身なりで過ごすことが大切です。
女の子はピンクやフリル、リボンなど、遠目から見てもぱっと女の子だとわかりやすい服装・髪型は控え、スカートよりもパンツスタイルに。
ママも、できるだけ地味色で露出を抑えた服装を心がけ、避難所で寝るときなどはマスクやニット帽などで顔や髪型を隠して、女性と悟られにくいようにカモフラージュ。
おしゃれは、生活が元通りになってからの楽しみにとっておいて、まずは身の安全をはかりましょう。
その7 極力子供と2人きり・単独での行動を避ける
災害後は、いつでもどこにいるときも、極力子供と2人きりやひとりでの行動にならないように注意します。
夜間はもちろんのこと、避難時は昼間でも常に「誰かと一緒に行動」が基本です。
避難所で子供同士が遊ぶ時も、子供たちだけにしてはダメ。
ママ数人で子供から決して目を離さず、近いところで見守ります。
日中、子供がトイレに行くときは、ひとりでトイレに行ける小学生の場合もママが付き添い、個室の前で付き添いを。
男の子が男子トイレに行くときも、パパや親戚、よく知ってるご近所の男性などに見守りをお願いするのがベストです。
ママが男の子のトイレに付き添う時は、トイレの外からときどき男の子に声をかけるなどして「親が付き添っている」ことをアピールします。
避難所にはたくさん人がいて、不審者が紛れ込むのは簡単です。
子供には「食べ物があるよ」「ママがあっちで呼んでるよ」という言葉に騙されないようよく話しておくと同時に、ママ自身が子供から片時も目を離さないように心がけて。
とはいえ避難中は、ママも炊き出しを手伝ったり、掃除をするなど、子供のそばを離れざるを得ない場合があります。
ママ友など、信頼できる人と交代で見られるよう協力しましょう。
先輩ママの声
同じ避難所にママ友が数人いたので、回り持ちで子供を見守る係と、他の作業を行う係と分担していました。
ママ全員が子供から離れてなにかしなくてはならないときは、ご近所の元気で口うるさい(!?)おばあちゃんに、見守りを頼みました。
避難所の外はガレキなども残っていて、ケガや事故の心配もあったので、おばあちゃんも子供のそばにくっついて油断なく目を配ってくれて、ありがたかったです。
まとめ たとえ相手が「顔見知り」でも、真夜中でも躊躇せず大声で助けを呼んで
詐欺や窃盗などの犯罪以上に、災害時にママが気を付けたいのが性犯罪です。
心に大きな傷を残す性犯罪の被害者に、自分やわが子がなることがないよう、くれぐれも気を付けて。
性被害は、よそからの侵入者からだけでなく、顔見知りからも受けるケースが多いのが特徴です。
被災現場でも同様で、顔見知りで温厚そうだった男性が、いきなり豹変するケースもあるのです。
つい「知ってる人だから」とか「みんなが寝ているところで、騒ぎを起こしたら気まずい」などと、躊躇してしまいがちですが、おかしな行動をとる人がいたら、迷わず「助けて」「やめて」と大声を出して助けを求め、その場から逃げましょう。
どうしても声が出なければ、ホイッスルを強く吹いてもOK。
人目を気にして、小声で説得しようとしたり、無言で抵抗すると、その場は事なきを得ても、後日また襲われたり、別の女性が被害に遭う可能性もあるのです。
万が一、被害に遭ってしまったら、家族や避難所のスタッフ、警察などにすぐに相談しましょう。
まずは、犯罪に遭わない防犯対策をできる限り行って、災害同様「変だな」「怖いな」と感じたら、すぐに大声を出して助けを求め、その場から逃げることが大切です。
災害によって傷ついた心や体、財産が、卑劣な犯罪によってこれ以上、傷つけられることがないよう、ママは万全な防犯対策と、勇気をもった行動で自分とわが子を守りましょう。