非常食や防災グッズについて調べていると、ローリングストックという言葉をよく目にします。
従来の備えっぱなしとは異なる新しい防災の形なのですが、実際どうすればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ローリングストックとは何か?について調べました。
家族が安心できる食の備えとして、ローリングストックを取り入れましょう!
この記事の目次
ローリングストック=新しい非常食の備え方
まず、ローリングストックをひと言で説明しましょう。
ローリングストックとは
日頃使用している食品や消耗品を多めに買っておき、使用した分を補充しながらストックの量を一定に保つこと
このストックが災害時の備蓄となります。食材をただ備蓄しておくのではなく、循環(ローリング)させながら保管(ストック)するということで、このように呼ばれています。
(※和製英語なので外国人には通じないようです)
本来、ローリングストックには食品だけでなくトイレットペーパーなどの日用消耗品も含まれますが、ここでは食のローリングストックについて解説します。 いつも食べているものや日用品をローリングストックしておくことで、「もしも」の時も「いつも」に近い生活を送ることができます。 トイレットペーパーは被災時も必需品ですし、ラップや新聞紙など、いつも使ってい ... 続きを見る
日用品については、こちらの記事を参考にしてください。
日用品もローリングストック!防災グッズだけじゃない日常の備えリスト
なぜ今、ローリングストックが注目されているのでしょうか。
従来の防災非常食の問題点
非常食とは、災害などで食料の供給が難しくなった「もしも」のときに食べるものです。
以前ならば、長く保存できるようにと賞味期限の長さが重視される傾向にあり、味や利便性などはあまり注目されていませんでした。
ローリングストックは、従来の非常食の持つデメリットを解決する、新しい食料の備蓄方法なのです。
従来の非常食には、次のようなデメリットがありました。
demerit
- いざ使うときに、賞味期限が切れていることが多い
- 調理・開封の仕方などがよくわからず、食べるのに手間取る
- 味が思っているものと違い、口に合わない
- 量が予想と異なり、少なすぎる(あるいは多すぎる)
- 費用が高い
非常食は一度買うと安心してしまいがちです。
賞味期限が3~5年ほどのものが大多数なのですが、それだけに長く放置してしまい、知らないうちに賞味期限を過ぎてしまうことが多いのです。
非常食の備蓄のチェックをしていて賞味期限が切れていることに気づき、「いま被災していたら…」と考えてヒヤッとしたことのある方も多いのではないでしょうか?
また、購入するときには非常食の味にこだわって選ぶ人も、その非常食を実際に食べることは少ないでしょう。
賞味期限が過ぎてしまい、食べることなく捨ててしまっていませんか?
非常食を食べないままでいると、いざ食べようとしたときに思いがけない問題が起きかねません。
水でいいと思っていたらお湯が必要だった、そのまま食べられるかと思ったらお皿が必要だった、などの思い違いがある可能性もあります。
被災時には水は貴重品ですし、お湯があるかどうかは被災状況により異なります。
救援物資がきていない状況であれば、自分で非常食用にお皿を用意しておく必要もあるでしょう。
家族がいる場合、特に小さな子どもは非常食の味を好まず、せっかく備えていても食べられないというトラブルがよく生じます。
普段食べなれていないだけでなく、見た目も味も普段の食事より劣るものですので、子どもが嫌がって食事を摂らない可能性があるのです。
check!
百聞は一口にしかず!?
いつもしも編集部でアルファ米などの非常食を数日にわたって試食しました!
実際に食べてみた率直な感想はこちら
備蓄食料こそローリングストックを
自治体からの救援物資はすぐに届くとは限らないため、被災後の栄養補給は個人の備えにかかっていると言えます。
そのため、家族全員の一週間分の食料を備蓄しておくことが推奨されています。
備蓄食料には、普段の食生活で使うものが勧められています。
レトルト食品や缶詰、乾麺など、いつも使っているもので保存が可能なものです。
しかし、備蓄食料を常に一定量確保しておくのは難しいものです。
乾パンやアルファ米のような非常食よりも賞味期限が短いため管理が難しく、比較的短期間で食べられなくなってしまいます。
かと言って、食べなれない非常食だけで長期間の被災生活を送るのは厳しいでしょう。
ただでさえストレスが溜まりやすいのに、食事でもストレスを感じてしまうと被災生活はさらに過酷なものになってしまいます。
そこで、従来の非常食のデメリットと備蓄食料の確保という問題を解決する方法が、ローリングストックなのです。
ローリングストックの方法とおすすめする理由5つ
いつもしもでは、ローリングストックのメリットを次のように考えています。
merit
- いつも使用している食品や消耗品を少し多めに買っておくだけで、もしもの時の備蓄も兼ねることができる
- 災害用として特別に準備して保管するのではなく、日頃から使用するため大きな負担をかけずに準備できる
いつもしも編集部の防災備蓄収納2級プランナーみよしさんも、講習ではローリングストックについて沢山学んだそうです。
図解!ローリングストック
いつもしものメンバーが本音で話し合った座談会も参考にしてくださいね。
いつも使っている缶詰やレトルト食品ならば、多めに買っておいても苦労することなく消費できます。
災害時のために開発された非常食に比べ、種類も圧倒的に豊富なので、家族の好みのものを揃えることもできますね。
notice
ただ、ローリングストックは一定量をストックし続けなければ意味がありません。在庫を使っても、その分を補充しなければ機能しなくなってしまいます。買い物リストを作るなどして、忘れずに買い足すようにしましょう。
では、ローリングストックをおすすめする理由を詳しく解説していきましょう。
①賞味期限が切れるのを防ぐ
ローリングストックを行なう場合、まず家族に合わせた一定量の備蓄食料をストックします。
そして、
- 賞味期限がわかるように保管する
- 賞味期限が近いものから順に消費する
- 消費した数だけ買い足して補充する
このサイクルを繰り返すのです。
こうすることで、常に備蓄食料が入れ替わるので、賞味期限をうっかり切らしてしまうことを防げます。
数ヶ月ごとに備蓄を見直して一斉に買い直す方もいますが、一度に沢山食べるのは大変ですし、賞味期限がギリギリのものはやはり味も落ちてしまいます。
短期間で備蓄食料を入れ替えることで、味が落ちる前に消費することができます。
②味に慣れている
大人も子どもも普段から食べている味ならば、被災時の食事の際に感じるショックが少なくなります。
最近の防災非常食はとても美味しく作られていますが、どうしても「イメージと違う」という場合があるでしょう。
被災時には食事以外に気晴らしが少ないため、食事にかける期待も大きくなるものです。
被災時の食事に求められるのは、日常を感じることができるものです。
非常食を「非常時だから仕方なく食べているもの」ではなく、「いつも食べているもの」や「好きな味」にすることで、家族を少しでも安心させることができるでしょう。
③非常時に慌てて買いだめする必要がない
被災時のために一週間分の食料を確保しておくべきとよく言われますが、実際は一週間分の備蓄食料を常に確保している方は少ないのではないでしょうか?
「冷蔵庫には常に食材があるから何とかなるだろう」と考えている方もいるかもしれませんが、被災時に停電した場合は冷蔵庫の中の食材はすぐに消費しなければなりません。
notice
停電後の冷蔵庫は、2~3時間後にはゆっくり温度が上昇し始めます。
肉や魚はその時点で加熱して食べてしまう必要があるでしょう。
野菜などは室温でもある程度持ちますが、早めに消費することが勧められています。(※1)
備蓄を保つためには、ローリングストックがおすすめです。
最初に家族の一週間分の食料を準備し、使った分を都度買い足していくことで、非常時に慌てて買いだめに走らなくても備えができた状態を保てるのです。
point
常に備蓄食料があると、被災時だけでなくママや子どもの体調が悪くて買いものに行けないときや、物流に支障が生じて食料や日用品が手に入らないときにも重宝します。
災害だけではなく、様々な「想定外」に備えるためにもローリングストックを活用しましょう。
④量のイメージができる
普段から食べていれば、どの程度の量でお腹がいっぱいになるのかがわかります。
大人がお腹いっぱいにならない場合のために非常用のおやつも追加したり、1食分が子どもに多すぎるようであれば半分の量にしてストックの数を計算したりと、必要量を把握することで無駄なく利用できます。
⑤コストが安い
防災用の非常食は特別な目的で開発されているため、通常の食品よりも高く、家族全員の一週間分の食料を揃えるとかなりの費用がかかってしまいます。
最近は大容量でもセット価格で安く販売されている場合もありますが、セットの場合は味の種類が少なかったり好みに合わないことがよくあります。
家族それぞれの好きな商品、好きな味のものを選んでいると、やはり合計金額が高くなってしまうでしょう。
日常で使う食品ならばスーパーなどで安く手に入るので、コストも抑えることができます。
買いやすく比較的長い期間保存できる食料をストックして非常食の代替とすることで、低コストで簡単に非常時の備えができるのです。
ローリングストックする食品の例
では実際に、どのような食品をローリングストックすればいいのか、実践方法をイメージしてみましょう。
ローリングストックするもの
- 水…一人あたり1日3L必要(飲用・調理用)
- 主食…炭水化物を摂れるもの
- 主菜…主にたんぱく質を摂れるもの
- 副菜…ビタミン等の栄養を補助するもの
- おやつ…安心感を与える甘いもの
ストレスで体調を崩しがちな非常時こそ栄養バランスのとれた食事が重要になります。
ローリングストックする場合も、上記のものをバランスよく用意しておきましょう。(※2)
水の例
- ペットボトルのミネラルウォーター
ペットボトル入りのミネラルウォーターを常備しておきましょう。
500mlなら普段の生活でも持ち歩けて便利ですが、量を確保するには数が多くなってしまうので、
2Lのものと両方用意して使い分けるのがおすすめです。
ウォーターサーバーのあるお宅ならば、常に換えのボトルが数本ある状態にします。
最低でも家族全員の3日分の水があるようにしましょう。
主食の例
- レトルトパウチのお粥
- シリアル
- ロングライフパン
ローリングストックには、普段の食事でも抵抗なく取り入れられるものがおすすめです。
一方で、非常時には調理の必要がなく常温でそのまま、もしくは水やお湯を注いだり温めるだけで食べられるものが必要です。両方を兼ね備えた主食なら一石二鳥ですね。
最近では、賞味期限が比較的長いロングライフパンも色々な種類が出ています。
常温で食べられるのでそのまま朝食にしたり、子どものおやつにもなるのでストックしておくと便利ですよ。
主菜(おかず)の例
- サバ缶や焼き鳥などの缶詰
- レトルトパウチのおかず
- 自然解凍OKの冷凍惣菜
いつも食べているもので、かつ賞味期限が長めのものを選びましょう。
キャラクターもののレトルトカレーなど子どもが喜ぶものを入れておくことで、家族のストレスを少しでも軽減することができます。
副菜の例
- 即席の味噌汁、スープ
- 自然解凍OKの冷凍野菜、フルーツ
- 海苔やごまなどの乾物
ビタミンやミネラルが不足すると体の調子も悪くなり疲れやすくなります。
主食に添えたり、おかずに足すだけで簡単に栄養バランスを整えるものを用意しておきましょう。
具だくさんの味噌汁やスープならおかずの代わりにもなりますね。
おやつの例
- ドライフルーツ
- ナッツ類
- あめ、グミキャンディ
おやつの目的は、緊張を解いて安心感を得るためです。十分な食事がとれないときには補食の役割も果たします。
家族の好きなものを用意しておきましょう。
水でも調理できる意外なもの
被災時の食事には、炊く、茹でるといった調理の必要のないものが望ましいです。
そのため、パスタや中華麺などお湯が必要なものは敬遠されがちです。
ですが、実は麺類も水で調理するのが可能なのです!
警視庁の災害対策課のTwitterでは、水のみでラーメンを作った実験結果が公開されていました。
水を入れて15分待つだけで、麺もある程度柔らかくなり、スープも味がしっかり溶け出していたようです。
冷やしラーメンみたいでアリ、との感想でした。
災害時を想定して一度やってみようと思っていた『水でカップ麺作り』に挑戦!麺に味がついたカップ麺を用意し、水を注いで15分。麺は少しかためでしたが、スープもちゃんとしみ出して味もイイ感じ(驚)!試食した息子たちから「冷やしラーメンみたいでありだよ、あり!」と感想が出ました! pic.twitter.com/vOiEXtWspS
— 警視庁警備部災害対策課 (@MPD_bousai) 2017年8月22日
こんなものもローリングストックすると便利!
森永製菓のページでは、ローリングストックにホットケーキミックスを推奨しています。
水を入れるだけで作れますし、主食として、またおやつとして子供からお年寄りまで喜ばれます。
調理が必要になりますが、カセットコンロが使える状況であれば作れます。
電子レンジが使えるなら蒸しパンを作るのも良いでしょう。
ポリ袋の中にホットケーキミックスと水を入れて混ぜるだけで良いので、洗いものが少なくて済みます。(※3)
非常食といえばアルファ米や缶パンのイメージが強いですが、甘いものがあると、普段の生活を感じることができて安心しますね。
ローリングストックする食品を無駄にしない方法
ローリングストックを実践するときに気をつけたいのが、結局消費できずに無駄にしてしまうことです。
無駄なく使い切るポイントをご紹介しましょう。
保管場所を工夫しよう
普段の食生活に取りいれるためには、保管場所を工夫する必要があります。
多めに買ったことで安心して、押し入れの奥にしまっては意味がありません。
料理の際に目につくところに保管したり、賞味期限が見えるようにしておくと、忘れずに使って循環させることができます。
point
- パックのご飯や缶詰は普段から目に入る場所に置き、すぐに調理できるようにしておきましょう。
- 乾麺などは他のよく使う乾物と一緒に保管しておくことで、忘れずに使うことができます。
- 基本的にはいつも食料を保管する場所に多めに保管しておき、もし入らないようであれば第二の保管場所を作りましょう。
(その場合、買い足したときは第二の保管場所に入れ、第二の保管場所にあったものをいつもの保管場所に移します)
絶対に食材を無駄にしたくない!という方にはアプリの利用がおすすめです。
食材のバーコードを読むだけで賞味期限がセットされ、賞味期限が近づくとお知らせがくるという便利なアプリも存在します。
忙しい主婦の方にこそおすすめです。
notice
意外と忘れがちなのが、飲用水の賞味期限です。
賞味期限が見づらいものが多いので、古いものと新しいものを間違えて使ってしまうことも多いでしょう。
収納の仕方を工夫して、常に古いものを手前に、新しく買ったものを奥にするようにしましょう。
普段ミネラルウォーターを飲む習慣がない方は、数ヶ月ごとにリマインダーをセットするなどして消費するのがおすすめです。
賞味期限が切れてしまった水は、お皿を洗うときなど生活用水として使用できます。
まとめ
ローリングストックは、災害の多い日本だからこそ生まれた新しい災害への備えです。
生き延びるためというよりも、被災した後の家族の健康と安心を得るための備えと言えます。
災害を経験したことのない子どもや、いつも通りの生活を求めるお年寄りのいる家庭の場合、食の備えはとても重要です。
普段の生活を感じることのできる食事を意識して、安心できる備蓄食料を用意しておきましょう。
「いつもの日常生活で、もしもの非常事態に備える」という新しい防災に取り組んでみませんか?