被災時は水やガスは貴重であるため、調理の際にも最低限の水で短時間でできるよう工夫が必要です。
そこでいま、非常食を調理する際に貴重な水とガスを有効に使える「ポリ袋料理」が話題となっています。
少ない水と短時間の加熱で、普段の生活に近い栄養豊富な食事を用意することができるのです。
ポリ袋料理のメリットや方法、注意点についてまとめました。
この記事の目次
非常食の定番?「ポリ袋料理」とは
ポリ袋料理とは、ポリ袋(食品用のビニール袋)を使って行う調理方法で、加熱や冷凍も可能なため調理法の幅が広いのがメリットです。
食品を混ぜる、漬け込む、加熱する等をすべて袋の中で行うことができるため、時短テクとして注目されています。
さらに使い終わった後はそのまま捨てることができるので、洗い物が少なくなります。
ポリ袋料理はその手軽さから、主にアウトドア料理や時短料理として注目されてきましたが、最近では災害時の調理方法としても役立つと注目されています。
農林水産省・自治体も推奨する調理法
ポリ袋調理は一般の防犯サイトで取り上げられているだけでなく、農林水産省の非常食に関するページでも紹介されており、安全性や便利さが実証されている調理法であることがわかります。
岡山県の保健所が出す「災害時の食生活支援ガイド」の中では、災害時の調理の工夫としてポリ袋料理が推奨されています。
被災時には食中毒が増えるものですが、それを予防するために衛生的なポリ袋調理法が紹介されているのです。
ポリ袋料理が被災時に役立つと言える理由
被災時には、被災後2,3日を生き残るための非常食の備えに加え、避難生活が長引いた場合に食事の準備をするための備蓄食材や調理器具などが必要になります。
ポリ袋調理は主に後者の場合に役立ちます。
自宅で避難生活を送るうえで、限られた物資の中で食事の準備をするために、そして家族の健康を守るために役立つと言えます。
その理由を見てみましょう。
水の節約になる
ポリ袋料理は通常の調理方法に比べ、最低限の水で安全に調理ができるので、被災時向けと言えます。
被災時でも栄養補給できるよう調理するためには、多くの水が必要になります。
断水している場合には水道水を汲み置きしているかもしれませんが、汲み置きした水は衛生上の理由で調理用には適さないでしょう。
調理にはミネラルウォーターがおすすめです。
とはいえ飲料水もストックに限りがあるため、なるべく節約したいですよね。
そこでおすすめなのがポリ袋料理です。
少ない水で十分に加熱することができるので、水の節約になるのです。
またポリ袋料理ならばひとつの袋で調理できるため、洗い物が少なくなります。
通常の調理では、食材を洗う、切る、混ぜる、漬け込む、盛り付ける、という具合に複数のボールやお皿を使うことになり、その都度洗い物も増えていきます。
被災時には上記で述べたように生活用水も不足するので、洗い物が十分にできない可能性があります。
ポリ袋調理であれば袋の中で混ぜたり漬けたりという作業が可能なため、複数の調理器具を洗う必要がなくなります。
袋からそのまま食べることもできますし、そのまま捨てることができるので、毎回清潔に食事をすることができます。
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少ない調味料でも美味しく調理できる
ポリ袋料理は食材を中に入れて空気を抜いて加熱するので、真空調理のように食材に味が染み込みやすく、美味しく仕上がります。
被災時には調味料も貴重品となるため、手持ちのものは大切に使いたいですね。
さらに被災時には健康状態が悪くなり高血圧の方が増えるというデータもあるので、高齢の方や、普段から血圧が高い方が家族にいらっしゃるならば、できるだけ塩分控えめのメニューを考える必要があります。
ポリ袋料理なら少なめの調味料でも美味しく仕上がるので、被災時にも家族の健康を守るための食事の準備ができるでしょう。
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一度に数種類作れて、ガスの節約になる
ポリ袋料理ならば、複数の食材を同時に調理することができます。
メイン食材の袋と、野菜と、卵料理…といった具合に、普段であれば別々に加熱するものも、ひとつの鍋の中で調理することができるのです。
カセットコンロで調理をする場合、熱源となるガスボンベも貴重品となるので、少しずつ節約しながら使う必要があります。
ポリ袋を使って調理することで、節約しなければ、というストレスも少し軽減するでしょう。
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非常食に栄養をプラスするために◎
ポリ袋調理の際には中の空気を抜いて加熱するため、食材の栄養やうまみが中に閉じ込められます。
限られた食材の栄養を最大限に摂取したい被災時に、ぴったりの調理法と言えます。
被災時にはカレーや中華丼などのレトルト食品が活躍します。
しかし、そればかり食べていると栄養が偏ってしまうのも事実です。
そこでレトルト食品を温める際に、野菜や乾物を一緒にポリ袋に入れて加熱調理するのがおすすめです。
たまねぎやじゃがいも等の野菜が家にある場合は、レトルト食品に入れて加熱すると栄養バランスも良くなり、「いつもの食事を食べている」という感覚も持てるため、安心感を得ることもできます。
ひじきやわかめ等の海藻類の乾物は様々な食材と相性がよいですし、水にもどす工程から調理まで、すべてポリ袋を使うことができるので面倒な準備も必要ないでしょう。
被災時には栄養バランスを崩しがちなので、ポリ袋料理を取り入れて栄養管理ができると良いですね。
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基本のポリ袋料理の方法
ポリ袋料理の基本のコツを掴んでおけば、レパートリーは無限に広がります!
普段の生活での時短テク、ヘルシー調理方法としても使えますので、今から慣れておくことをおすすめします。
調理法①炊く
一番覚えておきたいのは、ごはんの炊き方です。
被災時にもお米は比較的備蓄がありますし、お米があれば満足感があり腹持ちの良い食事を作ることができます。
白米と、同程度~少し多めの水をポリ袋に入れ、30分ほど浸水させた後にそのまま30分ほど茹でるだけでOKです。
ポリ袋内に入れる水がない場合には、配給されたお茶を使って「茶飯」を炊くこともできます。
加熱調理OKのポリ袋であれば破れる心配がないので、鍋の水は最悪、川の水や雨水を使うこともできます(小さいお子さんがいる場合はミネラルウォーターを使いましょう)。
notice
- ポリ袋の破損を防ぐ為、鍋肌や鍋底にポリ袋がくっつかないようにしましょう。
- 鍋からポリ袋の口が飛び出してしまっていると、そこに火が移る可能性があり危険です。ポリ袋すべてが鍋の中に納まっているようにしましょう。
調理法②煮る
被災時には暖かいもの、汁気のあるものを欲する傾向があります。
ポリ袋に食材を入れて湯煎することで、煮物料理を作ることができます。
ホッとすることができますし、野菜を入れることで栄養豊富なメニューになるので被災時におすすめです。
メニューアイデア
親子丼
被災時には焼き鳥缶と卵をポリ袋の中で煮て、簡単な親子丼を作ることができます。
焼き鳥缶を使うことで、すでに味がついているので調味料も少なく済みます。
お子さんも好きな味で、被災時に家族みんなを元気づけるメニューとしておすすめです。
切り干し大根の煮物
煮物があるとホッとしますし、切り干し大根は被災時に不足しがちなミネラルや食物繊維を摂るためにおすすめの食材です。
気軽に作れて健康管理にも役立つので、覚えておきましょう。
調理法③蒸す
袋に食材を入れて低温で加熱することで、食材にゆっくり熱が通り、蒸したような状態になります。
メニューアイデア
蒸しパン
備蓄にホットケーキミックスを入れておくと、炭水化物としても甘いおやつとしても使えて便利です。
ポリ袋の中で水と混ぜ、揉み、そのまま蒸す(湯煎でもOK)ことで蒸しパンを作ることができます。
加熱する際に棒状にするなら、そのままかぶりつきやすい蒸しパンになります。
お子さんも食べやすい形状にすると、服や手を汚さずに食べる助けになるでしょう。
大人も子どもも喜ぶ非常食と言えます。
調理法④揉む
ポリ袋ならば、混ぜたり揉みこむのも簡単です。
子どももお手伝いできますね。
メニューアイデア
オムレツ
ポリ袋を使うと、ふわふわで失敗なしの綺麗なオムレツが作れます。
袋の中で卵を揉み、そのまま湯煎をするだけなので、災害が起こる前から練習しておきたいですね。
和え物
ツナ缶や鯖缶などにひじきなどの乾物を揉みこんで時間を置いて、和え物にしても良いでしょう。
ポリ袋料理をするときの注意点
ポリ袋は便利な調理方法ですが、注意点を知らないまま実践するのは危険です。
調理の際の注意、ポリ袋を選ぶ際のポイントをまとめました。
ポリ袋での調理が可能な食材と、向いていない食材
ポリ袋調理の基本は低温調理です。
ポリ袋に入れることで熱が通りにくくなるのですが、空気を抜き真空状態にすることで、熱を通りやすくしているのです。
低温調理法の場合は調理温度が低いため、殺菌効果が弱く食中毒の危険が高いとされています。
食中毒予防の基本は食材の中心まで十分加熱することであり、低温調理の場合これが難しいのです。
被災時には特にウイルス性の食中毒が流行るので、食中毒予防策を徹底して行う必要があります。(※)
被災時にポリ袋調理を行う際には、かたまり肉などの中心部に火が通りにくい食材はおすすめできません。
赤身肉や白身魚は60度以上で一定期間加熱する必要があり、被災時には温度管理が難しいのでポリ袋調理以外の方法で調理するほうが良いでしょう。
食材はできるだけ小さく切り、中心部に熱が通るようにしましょう。
ポリ袋で調理する場合は新鮮な食材を使って素早く調理して、調理後はすぐに食べるようにすることで、食中毒の危険を少なくすることができます。
使うポリ袋に注意
「ポリ袋」と一口に言っても、すべてが加熱調理に使用できるわけではありません。加熱調理用のものを買うならば、以下のポイントを満たしているか確認しましょう。
- 高密度ポリエチレン製(耐熱性)
- 食品用
加熱調理用以外の非耐熱ポリ袋を使うと破損の危険性もあります。安心して調理に使えるよう、あらかじめ加熱調理用に作られたものを使いましょう。
point
ポリ袋を加熱すると有毒成分が溶け出しそう、と不安になる方もいますが、「食品用」と記載されているものであれば人体に有害な成分は使用されていませんので、ご安心ください。
さらに調理の際に鍋底に耐熱皿を敷いて、ポリ袋がくっついたり破損するのを防ぐようにしてください。
「袋のラップ」で有名なアイラップは、公式Twitterで加熱時の使用方法について「耐熱皿は必須」と注意喚起しています。
【防災士、料理家の方へ】#アイラップ で炊飯する際に、鍋底に耐熱皿を敷いていない方が多数見受けられます。
また『耐熱皿は不要』とアナウンスされる方も見受けられますが、それは #誤り です。
口コミで広まっており、すべてメーカーへクレームの形となっています。#鍋底の下は熱源です🔥 ← pic.twitter.com/ykDjCx0BAX
— アイラップ【公式】 (@i_wrap_official) September 6, 2020
まとめ
ポリ袋料理は水やガス等が限られた状況でも調理ができる、被災時におすすめの調理方法です。
実際にネット上の防災関連のページを見ていても、
「ポリ袋でごはんを炊いてみた」
「ポリ袋調理、今から練習している」
なんて声が多く、災害への意識が高まるにつれてポリ袋調理への注目度も高まっていることがわかります。
簡単なレシピでお子さんと一緒にチャレンジできるので、今からお子さんと一緒にポリ袋調理の練習を始めてみませんか?