地震のあとは、二次災害にも注意が必要です。
阪神淡路大震災での大規模火災や、東日本大震災での津波による痛ましい被害が印象に残っている方は多いでしょう。
二次災害や三次災害は、突如起きる地震と違い、個人の備えでもある程度の被害軽減が可能な場合もあります。
ただ、そのためにはあらかじめリスクと対策方法を知っておかなければいけません。
特に、海沿い・山沿い・木造住宅密集地域など、住んでいる地域によって可能性が高いものはチェックが必須です。
基本的な備えにプラスアルファして、しっかり対策しておきましょう。
この記事では、二次災害についての基礎知識と、家庭でできる備えを紹介していきます。
この記事の目次
地震が引き起こす二次災害とは
二次災害とは、ある災害が起こったあと、関連して起こる別の災害のことです。
地震の場合は、津波や火災などが代表的ですね。
他にも土砂崩れなど、リスクは数え切れません。
その中ではっきりと「これとこれが二次災害」と決まっているわけではなく、区分はまちまちのようです。
ここでは細かい定義は置いておいて、「地震の後、どんな危険が考えられるか」そして「どんな対策方法があるか」という観点から解説していきます。
対策を先に読む地震による一次災害~三次災害の例
まずは、地震のあとにどんな危険があるかを時系列順に把握していきましょう。
一次災害
- 地すべり
- 地割れ
- 建物の倒壊
- 液状化
一次災害は、地震そのものによって引き起こされる被害のことです。
地盤や建物に直接的にかかわるものが挙げられます。
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災害としてはカウントされませんが、建物の揺れにともなって発生する家具の転倒も命にかかわることがあります。
これは事前の対策で防げますので、大きな家具はしっかり壁に固定しておきましょう。
二次災害
- 火災
- 津波
- 余震
- 土砂災害
- 雪崩
- 放射能などの流出
- ライフライン寸断
先程も説明したように、揺れのあとに発生する自然災害や火災が主に挙げられます。
また、原子力発電所が被災したことによる放射能漏れや、ライフラインが寸断されて不便な生活を強いられることなども、二次災害のひとつと扱われることがあります。
三次災害
- 健康被害
- 経済被害
あまり聞き慣れない言葉ですが、長期にわたって発生する被害が三次災害と呼ばれることもあります。
健康被害は、被災者の避難生活が長引くことで起こるものが多いです。
エコノミー症候群をはじめ、栄養不足からくる体調不良やストレスなどが挙げられます。
経済被害としては、被災地以外も含めた自粛モードや風評被害などが代表的です。
このように、大地震のあとは様々な二次災害・三次災害のリスクが発生します。
すべて完璧に備えようと思うとしんどくなりますが、知っておくだけでもまず一歩前進です!
二次災害に備えてしておきたい対策
ここからは、災害別にママができる対策を紹介していきます。
地震から二次災害の発生までには、数十分~数日の猶予がある場合もあります。
しかし、落ち着いて正しい判断をし、安全に行動するためには、ごくわずかな時間といえるでしょう。
お子さんを抱えていればなおさらですよね。
その場での臨機応変な判断が必要になりますが、「その時にならなければわからない」と考えるのを放棄してしまうのと、ある程度の予想をしておいた上での想定外とでは、対応力が変わるのは明白です。
今のうちにどう行動するかをシミュレーションし、備えられるものは備えておく必要があります。
【火災】通電火災はもちろん、余震による火事にも注意して
地震のあとに起こる火災には、さまざまな出火原因があります。
まずは自分の家から火を出さないよう、適切な対応を知っておきましょう。
電気火災
電化製品からの火災は、地震火災の出火原因の半数以上を占めています。
阪神・淡路大震災で多発した、電気が復旧した際の通電火災が有名。
避難する際は、必ずブレーカーを落としておきましょう。
電気が復旧したら、すべてのコンセントを抜いてからブレーカーを上げ、1つ1つ確認しながら戻すようにします。
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通電火災だけではなく、地震によって家電のコードが切れたり、ストーブが倒れたりして火災が起きるケースもあります。
家具だけではなく、家電も忘れずに地震対策をしておきましょう。
冷蔵庫などの大型家電にはベルト式固定器具、テレビやレンジなどの小型家電には耐震ジェルマットの設置がおすすめです。
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感震ブレーカーを設置しておけば、どちらのパターンの火災でも効果が期待できます。
揺れを感知して自動的にブレーカーを落としてくれるので、身動きが取れなくてもすぐに電気を遮断できますし、避難の際の落とし忘れも防止できます。
簡易タイプであれば1,000円程度から入手できますし、地域によっては設置に助成金が出ることもあります。
余震による火災にも注意!
東日本大震災では、停電中にろうそくからの出火もありました。(※1)
ろうそくの明かりは暗いですし、地震の場合は余震で倒れ、火災の原因となる可能性があります。
どちらの災害でも使いやすい、LEDランタンなどにチェンジしておきましょう。
また、カセットコンロも揺れにより異常燃焼が起こることがわかっています。(※5)
カセットコンロは代替が難しいので、使う時は消火器をスタンバイ。
近くでガス漏れなどが起きていないか確認し、燃えやすいものがない場所で、常に目を離さず使いましょう。
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火を使わない発熱剤や、発熱剤つき非常食の備えもおすすめです。
火を使っているときに地震が来たら
火災といえば「地震だ火を消せ」というキャッチコピーが頭の隅に残っている方も多いのでは?
これは関東大震災のころの古い言葉で、揺れている最中に火に向かっていくのはむしろ危険。
最近のガスコンロなら自動停止装置がついていますので、自分の身を守ることを最優先にしましょう。
その後の初期消火のために、家庭用消火器の備えをおすすめします。
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炎が目の高さまで上がってしまったらすぐに避難し、119番通報する必要があります。
ただ、震災時は救急も含めて通報が殺到するため、つながらなかったり、到着が遅れる可能性が高いです。
逃げながら大きな声で近所に知らせ、助けを求めましょう。
【津波】スピードが命。持ち出し品は最小限に
津波の危険がある地域では、一刻も早く高台へ逃げます。
「津波避難場所」や「津波避難ビル」のマークがある場所や、5階以上の丈夫な建物などが該当します。
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津波から逃げるとき、車を使うかどうかは意見が分かれます。
基本的には、道路の渋滞を避けるため徒歩がベストとされています。
とはいえ、妊婦さんや小さい子どもを抱えたママは車を使わざるを得ない場合も。
何が最適かはケースバイケースということになってしまいますが、家族構成や立地を考慮して、あらかじめ細かくシミュレーションしておくことは有効でしょう。
最初の寄せ波から逃げ切れたとしても、津波は繰り返し襲ってくるため、自己判断で戻るのは禁物です。
つい子どもの預け先が気になってしまうかもしれませんが、まずママ自身が生き残らなくては守れるものも守れません。
お迎えは警報が解除されてから行きましょう。
状況によっては防災無線が聞こえないこともあるかもしれませんので、防災アプリやラジオアプリをインストールしたり、持ち出し品に携帯ラジオを入れるなどして情報源を確保しましょう。
他に今できる備えとしては、まず自宅や職場から最短で避難できる道を調べておくこと、預け先の避難場所やお迎え方法を確認しておくことが挙げられます。
また、家庭で用意する非常持ち出し袋はできるだけ軽くなるよう、中身を厳選しておきます。
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持ち出さないもの(備蓄)やアルバムなどの大事なものは、浸水に備えて二階以上に置いておくと安心です。
【土砂災害】一刻も早く避難を。当分は雨の日に警戒
土砂災害の危険が迫っている場合も、津波と同様、一刻も早く安全な場所に避難する必要があります。
山の近くに住んでいる場合も、非常持ち出し袋はできるだけ軽くしておきましょう。
地震直後は何もなくても、雨の日や次の夏の台風など、時間差で土砂災害が発生する可能性も。
震災後しばらくは雨に関する警報の基準が引き下げられますが、不安であれば早めに避難するのが賢明です。(※2)
これは通常の台風のときも同じことです。
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最近では、余震という言葉が使われなくなってきています。
熊本地震を受け、「最初よりも小さい揺れ」という印象を避けるための気象庁の方針です。(※3)
熊本地震では震度7の前震のあと、翌々日にまた震度7の本震が発生しています。
これから気を配るべきなのは、前震・本震・余震の区別ではなく「大きな地震のあとは、さらに強い揺れにも警戒が必要」ということです。
地震後の避難はつい慌ててしまいますが、少しでも危険を感じる場所には近づかない・子どもを近づかせないようにしましょう。
古い建物やブロック塀、電柱などは特に危険。
ビルの近くも、ガラスが落下してくる可能性があるため避けたいところです。
さらに、自宅で過ごせる場合でもいくつか注意が必要です。
荒れてしまった室内を一刻も早く元の状態に戻したくなりますが、家具や食器の片付けは最低限にしておきましょう。
避難経路を確保するため、部屋のドアはできるだけ開けて過ごしましょう。
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防災グッズや備蓄を揃えて、少しでも避難生活を過ごしやすくしておきましょう。
電気がない場合の備え
まず気になるのは明かりです。
懐中電灯を備えている方は多いと思いますが、停電が長期化した場合に備え、LEDランタンもプラスで備えることをおすすめします。
被災中は何かと使う、幹電池の備蓄も忘れずに!
モバイルバッテリーも、充電切れのないようにしておきましょう。
スマートフォンは大事な情報源になります。
高価にはなりますが、家電にも使えるような大容量のポータブル電源を備えるという選択肢もあります。
いくつか種類がありますので、こちらの記事でチェックしてみてください。
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火災についての説明でも触れましたが、ガス漏れや事故に注意しながら正しく使いましょう。
ガスを使うのが心配な場合、コストはかかりますが発熱剤を利用するのもおすすめです。
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当サイトに寄稿いただいた東日本大震災の体験談によると、電気の復旧が約1週間後、ガスは約3か月半後だったそうです。
断水はペットボトル+防災グッズで備える
飲用・調理用の水は、大人1人あたり1日3リットル×3日分を最低限揃えましょう。
できれば1週間分備えられるのが理想的です。
それ以外にも、洗い物やお風呂に使う生活用水が必要です。
そこまでの水を用意するのはなかなか大変なので、水が不要な非常用トイレやからだふきシートなどで衛生面をサポートしましょう。
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生活必需品は多めにキープ
災害時は物流も滞ります。
食料も最低限3日分、できれば1週間分は準備しておきましょう。
トイレットペーパーやおむつも、普段から多めに買ってローリングストックすることをおすすめします。
持病のある方は常備薬、子どものお気に入りのおやつなど、ひとりひとりの「ないと困るもの」もストックしておきましょう。
【健康】衛生グッズとバランスの良い食事を備えよう
ライフラインや物資が足りない状況では、衛生面の問題も発生します。
不衛生な環境では、当然感染症の危険性が高まります。
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東日本大震災では、インフルエンザやノロウイルスが流行してしまった避難所もありました。(※3)
2020年2月現在、新型コロナウイルスが猛威をふるっていますが、こういった状況の中でも自然災害は発生しえます。
被災時、多少の不衛生はガマンしなければと思ってしまいがちですが、その後の影響を考えると衛生管理は必須です。
家族の健康を守るため、非常持ち出し袋には衛生グッズを忘れず入れておきましょう。
除菌ができるウェットティッシュやジェルなどをローリングストックしておくのもおすすめです。
地震に限らず、コロナウイルスのような感染症の流行による物資不足にも備えることができます。
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- エコノミークラス症候群
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- おむつかぶれ
- PTSDなど
災害に直接関連がなくても、被災中に病気にかかる可能性もあります。
かかりつけの病院が被災してしまった場合、仮設診療所や緊急医療救護所などを頼ることになります。
救護所が開設される場所をあらかじめ公表している自治体もあるので、調べておきましょう。
番外編:女性や子どもを狙う犯罪も増加
二次災害ではありませんが、震災に乗じた犯罪も見逃せません。
時間に余裕がある場合に限りますが、家を離れるときは、最低限の防犯をしておきましょう。
被災中は必ず複数の大人で行動し、子どもから目を離さないようにします。
防犯ブザーもあると安心です。
具体的な防犯対策については、こちらの記事にまとめています。
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それに加えて、情報面の備えも大事です。
津波や土砂災害はある程度予測がつきますが、停電で防災無線が届かなかったり、予想外の被害となる可能性もあります。
また、放射能汚染など、知識が広まっていない二次災害が起きる場合もあるかもしれません。
家族を守るには、デマに惑わされないためのリテラシーと情報網を確保し、自分たちで臨機応変に判断していく必要があります。
自分の地域のハザードマップを確認しておくのはもちろん、防災アプリを入れる、公的機関のSNSをフォローする、地域の防災メールに登録するなど、どれも今からできることです。
正しくアンテナを張り、判断力をアップしておきましょう!
イラスト:クリハラマリ